血小板減少症(けっしょうばんげんしょうしょう)は、血液中の血小板(けっしょうばん)の数が異常に少なくなる状態を指します。血小板は、血液が固まるために重要な役割を果たし、外傷や傷害を受けた際に止血作用を発揮します。血小板が不足すると、出血が止まりにくくなるだけでなく、内出血や異常な出血を引き起こすことがあります。この疾患は、症状の重さや原因によって異なる種類に分類されます。以下では、血小板減少症の原因、症状、診断方法、治療法について包括的に説明します。
血小板減少症の原因
血小板減少症はさまざまな原因によって引き起こされます。主な原因には次のようなものがあります。
1. 血小板の生成不良
骨髄での血小板の生成が減少することによって引き起こされます。これは、以下のような疾患や状態が原因となることがあります。
-
骨髄疾患:白血病や骨髄異形成症候群(MDS)、多発性骨髄腫など、骨髄での血小板生成を妨げる疾患。
-
ビタミンB12や葉酸の欠乏:これらの栄養素が不足すると、血小板の生成に影響を及ぼすことがあります。
-
化学療法や放射線治療:がん治療として行われる化学療法や放射線治療は、骨髄にダメージを与え、血小板の生成を抑制することがあります。
2. 血小板の破壊
血小板が過剰に破壊されることも、血小板減少症の原因となります。自己免疫疾患や感染症、薬剤の副作用などが原因です。
-
免疫性血小板減少症(ITP):自己免疫疾患の一種で、体の免疫系が誤って血小板を攻撃し、破壊します。
-
血栓性血小板減少紫斑病(TTP):血小板が異常に集まり、血栓を形成することによって血小板が消費される疾患です。
-
DIC(播種性血管内凝固):全身の血管内で血液が異常に凝固し、血小板が急激に消費される状態です。
3. 血小板の分布異常
一部の血小板は脾臓に貯蔵されているため、脾臓が異常に大きくなると血小板が脾臓に蓄積され、血液中の血小板数が減少することがあります。これは、**脾腫(すいしゅ)**が原因となる場合です。
血小板減少症の症状
血小板減少症の症状は、血小板数がどれくらい減少したか、またその原因によって異なります。主な症状には次のようなものがあります。
1. 異常出血
血小板は止血に重要な役割を果たしているため、数が減少すると出血が止まりにくくなります。代表的な出血症状は以下の通りです。
-
紫斑(しはん)や点状出血:皮膚に赤や紫の斑点が現れます。特に手足に見られます。
-
鼻血や歯茎からの出血:出血が頻繁に起こり、止まりにくい場合があります。
-
月経過多:女性の場合、月経が非常に重くなることがあります。
-
内出血:特に内臓や関節内での出血が起こりやすくなります。
2. 疲労感や倦怠感
血小板減少症の症状として、貧血が進行することにより、全身の酸素供給が不十分となり、疲労感や倦怠感が強く感じられることがあります。
3. 血栓症
血小板減少症の中でも、血小板が破壊されることによって血栓が形成される疾患(TTPなど)では、血栓が血管を塞ぎ、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
血小板減少症の診断
血小板減少症を診断するためには、医師が患者の症状や病歴を確認し、必要な検査を行います。主な診断方法は以下の通りです。
1. 血液検査
最も基本的な診断方法は血液検査です。血液検査では血小板数を確認し、数が基準値以下であるかどうかを判断します。正常な血小板数はおおよそ15万~40万/μLですが、これを下回ると血小板減少症と診断されます。
2. 骨髄検査
骨髄検査は、血小板の生成が問題であるかどうかを調べるために行います。骨髄から採取した細胞を顕微鏡で観察し、血小板の生成状況を確認します。
3. 免疫学的検査
免疫性血小板減少症(ITP)の診断には、血液中の抗血小板抗体を調べるための検査が行われることがあります。
4. 血管内凝固検査
DICやTTPの疑いがある場合には、凝固因子や血小板の消費状態を調べるための検査が必要となります。
血小板減少症の治療方法
血小板減少症の治療方法は、その原因や症状の重さによって異なります。主な治療法には以下のものがあります。
1. 薬物療法
薬物療法は、血小板数を増加させるために使用されることがあります。
-
免疫抑制薬:ITPの場合、免疫抑制薬(ステロイドや免疫グロブリンなど)が使われることがあります。
-
血小板生成促進薬:血小板の生成を促す薬物(例:エルトロンボパグ)も使用されることがあります。
2. 血小板輸血
重度の血小板減少症や出血が多い場合には、血小板輸血が行われることがあります。これにより、急速に血小板数を回復させ、出血を防ぐことができます。
3. 脾臓摘出術(脾臓除去手術)
免疫性血小板減少症(ITP)では、脾臓が血小板を破壊する役割を果たしていることがあるため、脾臓を摘出する手術が行われることがあります。
4. プラズマ交換
TTPやDICの患者には、血液の中の有害物質を取り除くためのプラズマ交換が行われることがあります。
まとめ
血小板減少症は、血小板の数が異常に少なくなることによって、出血が止まりにくくなる危険な状態です。原因は多岐にわたり、免疫系の異常や骨髄の疾患、薬剤の影響などが関与しています。早期に発見し、適切な治療を行うことが重要であり、症状に応じた治療法が選択されます。血小板減少症の管理には医師の適切な判断と支援が不可欠です。
