親知らず(智歯)が生えているかどうかを知るための完全ガイド:症状、診断、注意点、対応策
親知らず、または智歯(ちし)は、第三大臼歯と呼ばれる歯で、通常は10代後半から20代前半にかけて生え始める。現代人の顎の大きさが進化によって変化していることから、親知らずがうまく生えないケースが多く報告されており、さまざまな問題を引き起こすことがある。そのため、自分の親知らずが生えているのか、どのような状態なのかを早期に知ることは、将来的な口腔トラブルの予防において非常に重要である。本記事では、親知らずの有無を確認する方法、典型的な症状、専門的な診断方法、抜歯の必要性の有無、放置した場合のリスク、さらにはセルフチェックの限界と正確な医療機関での確認方法について、包括的かつ科学的に解説する。
親知らずの基礎知識
親知らずは通常、上下左右にそれぞれ1本ずつ、合計4本が存在することが多いが、すべての人に必ず存在するわけではない。中には親知らずが元々形成されない人もおり、また1本だけ、あるいは2本だけ生えるケースもある。さらに、生えていても歯茎の下に完全に埋まったままであったり、横向きや斜めに生えていたりする「埋伏智歯(まいふくちし)」と呼ばれる状態も多い。
親知らずが生えているサイン
1. 歯茎の腫れと痛み
親知らずが生えてくる際、特にスペースが十分にない場合には歯茎が腫れて痛みを伴うことがある。これを「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」と呼び、炎症によって赤く腫れたり、膿がたまったりすることもある。
2. 奥歯の後ろ側に硬い突起を感じる
舌や指で触った際に、奥歯のさらに後方に新しい歯のような感触がある場合、それが親知らずである可能性がある。ただし、完全に生えきっていない場合には突起の感覚は非常にわずかである。
3. 顎や耳のあたりの違和感
親知らずの生え方によっては、隣接する歯や神経に圧迫を与えることがあり、顎関節や耳の周辺に痛みや違和感が広がることがある。特に、下顎の親知らずが神経に近い場合は要注意である。
4. 食事中の違和感
歯の噛み合わせに変化が生じたり、食べ物が親知らずの周辺に詰まりやすくなったりすることで、食事中に違和感を覚えることがある。
親知らずが「存在するかどうか」を確認する確実な方法
歯科用X線検査(パノラマレントゲン)
もっとも信頼性が高く、医学的に正確な方法が、歯科医院でのパノラマX線撮影である。この検査によって、顎の中に親知らずが存在しているかどうか、どのような方向に生えているか、神経との位置関係などを明確に確認することができる。
CTスキャン(歯科用CBCT)
場合によっては、より詳細な画像が必要とされるため、歯科用CTを撮影することがある。特に親知らずが埋伏しており、神経に近接しているケースでは、抜歯の可否を判断するために非常に重要な情報を提供してくれる。
自宅でできる簡易チェック方法
表1に、セルフチェック可能な症状と、その可能性を示す目安をまとめた。
| 症状や兆候 | 親知らずの可能性 | コメント |
|---|---|---|
| 奥歯のさらに後ろに硬いものが触れる | 高い | 触覚での確認は有効、ただし完全ではない |
| 歯茎の奥が腫れて痛む | 非常に高い | 智歯周囲炎の可能性がある |
| 噛み合わせに違和感 | 中程度 | 歯列に影響を及ぼすことで違和感が出ることも |
| 耳の下や顎が痛む | 中〜高 | 神経圧迫による放散痛の可能性 |
| 親に「親知らずがあるか」と聞かれたことがある | 中程度 | 遺伝的傾向もある |
親知らずを放置すると起こりうる問題
虫歯の原因となる
親知らずが部分的にしか生えていない場合、清掃が困難になり、食べカスが溜まりやすくなる。結果として親知らずだけでなく、手前の第二大臼歯まで虫歯になることがある。
歯列の乱れを引き起こす
特に下顎の親知らずは、歯列全体を前方に押す力を生み出し、歯並びの崩れを引き起こすことがある。矯正治療後に歯並びが再度乱れた場合、親知らずの影響が考慮されることが多い。
智歯周囲炎の反復
炎症が一度起きると、再発する傾向が強くなる。腫れや痛みが周期的に繰り返されるようになると、生活の質に影響を与える。
抜歯が推奨されるケースとされないケース
| 状況 | 抜歯の必要性 | 解説 |
|---|---|---|
| 完全に真っ直ぐ生えており、隣の歯と適切に噛み合っている | 不要 | トラブルがなければそのままで問題ない |
| 横向きや斜めに生えている | 必要 | 隣接歯への圧迫、炎症のリスクが高いため |
| 歯茎の中に完全に埋まっているが痛みがある | 必要 | 将来的な炎症・嚢胞化のリスクがある |
| 歯茎の中に埋まっているが症状が一切ない | 場合による | 継続的な経過観察が必要。必要に応じてCTによる精査を推奨 |
| 全く親知らずが存在しない | 不要 | パノラマレントゲンで確認可能 |
親知らずの有無と状態を知ることの重要性
親知らずは、痛みが出てから歯科を受診するのでは遅い場合がある。特に症状が出ていない段階での検査・確認が、自分の歯を長く健康に保つ鍵となる。20歳前後の段階で一度、歯科医院でのパノラマレントゲンを撮ることで、自身の親知らずの有無とリスクを早期に知ることができる。特に、以下のような人には確認を推奨したい。
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矯正治療を検討している人
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奥歯に違和感がある
