定義と特徴:
「定性的・分析的アプローチ」としても知られる「記述的分析法(デスクリプティブ・アナリティカル・アプローチ)」は、主に社会科学、教育学、心理学、マーケティング、経済学などの分野で用いられる研究方法です。このアプローチは、事象や現象、問題に関して詳細に記述し、分析することを目的としています。その特性として、現象の説明だけではなく、それに対する原因や影響、パターンを探る点が挙げられます。
記述的分析法は二つの主要な部分に分けられます:記述的(事実の記録)と分析的(その事実に基づいた解釈や理解)。記述的要素では、調査対象の現状や特徴、状態を明確に記録し、分析的要素では、それらのデータをもとに因果関係を解明したり、理論的な背景を提供したりします。
記述的アプローチ:
記述的なアプローチでは、研究者は既存の現象や状況をそのまま詳細に記録します。記述には観察結果、インタビュー、アンケート調査などさまざまな手段が利用され、得られた情報は時間的な変遷を反映したり、特定の事象がどのように進行していくかを示したりします。例えば、企業の業績や社会的な問題に関する研究では、まず事実を正確に収集し、その後、結果に至る過程を探ります。
記述的アプローチは、現状の把握やその特徴を明確にするために非常に有効です。具体的には、問題の全体像を理解するために、統計データや調査結果を集め、分析する際に重要な基礎情報を提供します。
分析的アプローチ:
分析的アプローチでは、記述的に集めたデータに基づいて、問題の原因や影響を探り、関係性を明確にします。例えば、ある社会問題に関する調査で得られたデータから、その問題の根本的な原因を特定し、今後の展開を予測します。分析的アプローチは、単に事実を述べるだけでなく、その背後にある論理や因果関係を探るために重要です。
これにより、データの深層にあるパターンを見つけたり、今後の行動や戦略を導き出したりすることができます。例えば、教育分野における生徒の学力向上に関する研究では、単に学力テストの結果を記録するだけでなく、その結果を引き起こした要因(家庭環境、教師の指導方法、学校の施設など)を分析することが求められます。
適用例:
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社会調査: 社会学の研究では、貧困層の生活状況や健康状態について記述し、それに基づいてその原因や社会的な影響を分析することが行われます。この場合、貧困層における教育水準、収入、雇用状況などを記録し、それらが健康や社会的な福利にどのように影響を与えているかを分析します。
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マーケティングリサーチ: 企業の市場調査では、消費者の購買行動を記述し、それをもとに消費者の嗜好や購買決定に影響を与える要因を分析します。例えば、新製品の発売に関して消費者の反応を調査し、その反応が購買意欲にどう影響しているのかを解析します。
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教育分野: 教育改革に関する研究では、学生の学習成績を記述し、それをもとにどのような教育手法が効果的かを分析します。この場合、さまざまな教育法や学習環境が学生の成果にどのような影響を与えているかを理解することが求められます。
方法論とデータ収集:
記述的分析法では、質的・量的なデータ収集方法が一般的に使用されます。質的なデータ収集法にはインタビューや観察、ケーススタディが含まれ、量的なデータ収集法にはアンケートや統計データの収集が含まれます。これらの方法を組み合わせることで、より豊かなデータの収集と分析が可能になります。
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質的データ収集法: インタビューや観察は、対象者の行動や意識の深層に迫るための重要な手段です。これにより、言葉では表現しきれない感情や意図、価値観を理解することができます。
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量的データ収集法: アンケートや統計データは、広範なサンプルからデータを集め、特定の現象についての全体的な傾向を把握するために使用されます。これにより、現象の規模や頻度を定量的に分析することができます。
結論:
記述的分析法は、現象の詳細な理解を深めるために重要な手法です。単なる事実の列挙にとどまらず、その事実の背景にある原因や影響を明確にすることで、問題解決のための有用な情報を提供します。社会問題、教育問題、マーケティング戦略など、さまざまな分野で活用されており、実務的な意義が非常に高い方法論です。このアプローチを通じて、研究者は問題を深く掘り下げ、より実践的な知見を得ることができます。
