リサーチ

記述的研究法の進め方

研究における「記述的アプローチ」(または「記述的研究法」)は、特定の現象、出来事、事実、または状況をありのままに観察し、詳細に記録し、分析する方法です。これは、現象の本質を明らかにすることを目的としており、実験や介入を行うことなく、既存の状態を把握することに重点を置きます。記述的研究法は多くの分野で利用され、特に社会科学や教育学、心理学、経済学などでよく見られます。

本記事では、記述的アプローチを用いた研究の進め方について、基本的なステップを説明します。

1. 研究課題の設定

記述的研究の最初のステップは、研究する課題を明確に定めることです。この段階で重要なのは、研究したい現象や状況を具体的に設定することです。例えば、「教育現場での教師と生徒のコミュニケーションパターンを観察する」や「ある都市における交通渋滞の原因を分析する」など、現象を明確に定義し、研究の焦点を絞ります。

2. 先行研究の調査

次に、過去に行われた関連研究や文献を調査します。これにより、研究課題に関する既存の知見を確認し、どのような観点で研究が進められているのかを理解できます。また、先行研究をもとに、研究の方法論や調査技術を選択する参考にもなります。この調査は、研究の枠組みを構築するための基礎となり、重要な理論的背景を提供します。

3. 研究方法の選定

記述的研究では、観察、インタビュー、アンケート調査、文献分析など、さまざまな方法を用いてデータを収集します。具体的な方法は研究課題に応じて選択されます。

  • 観察法: 現場に足を運び、対象となる現象を実際に観察し、記録します。観察者はできるだけ客観的に事実を捉えることが求められます。

  • インタビュー法: 研究対象者と直接対話し、経験や意見を聞き出します。インタビューは自由形式で行うことが多く、深い理解を得るのに有効です。

  • アンケート調査: 多くの人から情報を収集するために用いられる方法です。設問を用意して対象者に配布し、回答を収集します。

4. データ収集

研究方法を決定した後、次は実際にデータを収集します。この段階では、収集するデータが研究課題に関連するものであることを確認することが大切です。記述的研究においては、観察やインタビューなどで得られた質的データだけでなく、アンケート調査による定量的データも重要な役割を果たします。

5. データの整理と分析

データ収集が終わった後は、それらを整理し、分析する段階です。記述的研究では、データの傾向や特徴を明確にすることが求められます。例えば、観察した結果をカテゴリ別に分類したり、アンケートの回答を集計して統計的に分析したりします。この分析を通じて、現象に関する深い理解が得られるとともに、具体的な特徴や傾向が浮き彫りになります。

6. 結果の記述

データを分析した後は、得られた結果を詳細に記述します。記述的研究では、結果をありのままに、そして客観的に報告することが重視されます。例えば、ある地域で観察した交通渋滞の原因について、「渋滞は主に通勤時間帯に発生し、その主な要因は信号のタイミングと交通量の増加に関連している」といった具体的な内容として報告されます。記述的な言葉で簡潔に表現することが重要です。

7. 結論の導出

結果をもとに、研究課題に対する結論を導きます。記述的研究は仮説検証を行わないため、結果として得られたデータから直接的な結論を引き出します。例えば、「この地域では、交通渋滞の改善には信号システムの最適化が必要である」といった結論に至ります。結論は、研究で得られた知見をもとに、現象の本質を明確に示すことが求められます。

8. 研究結果の活用

記述的研究の最後のステップは、得られた結果をどのように活用するかを考えることです。研究結果は、現象の理解を深め、政策立案や実務に役立つ形で応用されることがあります。たとえば、教育現場での教師と生徒のコミュニケーションパターンの研究結果が、教育方法の改善に繋がることがあります。

結論

記述的研究法は、現象を客観的に観察し、事実をありのままに記録する方法です。このアプローチを適切に使用することで、研究者は問題の本質を明らかにし、新たな知見を得ることができます。データ収集から分析、結果の記述に至るまで、各ステップを慎重に進めることで、精度の高い研究を実施することができます。

Back to top button