定義と特徴
「調査研究(Survey Research)」とは、特定の問題や現象に関する情報を広範囲に収集し、それを分析するための研究方法の一つです。この方法は、調査対象となる集団や社会の特徴や傾向を明らかにするために、質問紙やインタビューなどを通じてデータを収集するものです。調査研究は、主に質的・量的データを得ることを目的としており、その後の分析を通じて理論の検証や新たな知見の発見を目指します。
調査研究は、様々な分野で用いられており、社会学、心理学、教育学、マーケティングリサーチ、健康科学、政治学などにおいて非常に重要な役割を果たしています。これにより、学術的な理解を深めるだけでなく、政策の立案や実務的な意思決定にも寄与しています。
調査研究の方法論
調査研究は、主に以下の3つの方法に分類されます。
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横断的調査(クロスセクショナル調査)
横断的調査は、ある時点での集団の状態を把握することを目的とした調査です。一般的に、この方法では、特定の問題に関するデータを同時に収集し、その時点での傾向や特徴を明らかにします。横断的調査は、比較的短期間でデータを収集できるため、時間的な制約がある場合に有効です。 -
縦断的調査(ロングチューディナル調査)
縦断的調査は、特定の集団を長期間にわたって追跡調査し、時間的な変化を観察するものです。この方法は、個々の変数が時間の経過とともにどのように変動するかを理解するために使用されます。縦断的調査は、因果関係を探るために非常に有効ですが、その分データ収集には時間とリソースがかかります。 -
実験的調査
実験的調査では、特定の変数を操作し、その影響を観察します。この方法では、研究者が意図的に実験条件を操作することで因果関係を明らかにしようとします。実験的調査は他の調査方法よりも因果関係を明確に示すことができるため、非常に強力な研究手法です。
調査研究の手順
調査研究を実施するための基本的な手順は以下の通りです。
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研究目的の設定
最初に、調査の目的を明確に定義します。例えば、「企業の顧客満足度を測定する」「特定の薬剤の副作用を調査する」など、調査の目的によって収集するデータが異なります。 -
調査対象の選定
調査対象となる集団を決定します。例えば、特定の地域の住民、特定の年齢層の人々、あるいは特定の企業の従業員など、調査目的に合った対象を選びます。 -
データ収集方法の決定
データ収集には、質問紙調査、インタビュー調査、観察調査など様々な方法があります。どの方法が最も適切かは、調査目的やリソースに応じて選定します。 -
データ収集の実施
実際にデータ収集を行います。質問紙調査の場合、対象者にアンケートを配布し、回答を得ます。インタビュー調査では、対象者と対話を通じて情報を集めます。 -
データの分析
収集したデータを分析します。定量的データの場合、統計的手法を使用して傾向を把握します。質的データの場合は、テーマやパターンを抽出し、内容を深く分析します。 -
結果の報告
分析結果を基に調査報告書を作成し、調査結果を公表します。報告書は、調査目的、方法、結果、結論を含み、読者が調査結果を理解しやすいように整理されます。
調査研究の利点と限界
調査研究には、いくつかの利点と限界があります。
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利点
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広範なデータ収集: 多くの対象者からデータを収集できるため、一般化可能な結果を得ることができる。
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柔軟性: 様々なテーマや問題について調査できるため、非常に多様な研究が可能である。
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実施の簡便さ: 他の研究方法に比べて、調査は比較的簡単に行える場合が多い。
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限界
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バイアスの影響: 回答者のバイアスや調査者のバイアスが結果に影響を与えることがある。
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因果関係の特定の難しさ: 調査研究は、因果関係を証明するのには限界があり、相関関係を示すにとどまる場合が多い。
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コストと時間: 大規模な調査の場合、データ収集に時間とコストがかかることがある。
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まとめ
調査研究は、社会科学を中心に広く利用されている強力な研究手法です。対象集団の特徴を明らかにし、問題の理解を深めるために非常に有効です。しかし、その実施には十分な計画とリソースが求められるため、効果的に活用するためには慎重な設計と実行が不可欠です。
