貧血(貧血症)は、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が正常範囲を下回る状態であり、体内への酸素供給が不足することによって様々な症状が現れます。この状態は、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があり、その結果として体全体の機能に影響を及ぼします。貧血は、軽度のものから重度のものまであり、その症状も個々の状態によって異なりますが、いくつかの共通する兆候があります。この記事では、貧血の症状、原因、診断方法、治療法について詳しく解説します。
貧血の主な症状
貧血の症状は、体内の酸素供給が不足することに起因するため、体全体にさまざまな影響を及ぼします。以下は、貧血に関連する代表的な症状です。

1. 疲労感
貧血による最も一般的な症状は、極度の疲労感や倦怠感です。酸素が十分に供給されないため、体のエネルギーが不足し、通常の活動を行うのが困難になることがあります。特に、軽い運動や日常的な動作でも疲れを感じることがあります。
2. 息切れ
貧血が進行すると、体内の酸素供給が不足し、軽い運動をしているときでも息切れを感じることがあります。これにより、階段を上る、歩く、あるいはちょっとした身体的な活動でさえも息が上がることがあります。
3. めまい
貧血が進行すると、血液中の酸素供給が不十分になるため、めまいやふらつきが現れることがあります。これにより、立ち上がるときや急に動くときにバランスを崩しやすくなります。
4. 顔色の悪さ
貧血になると、顔色が青白くなったり、血色が悪く見えることがあります。これは、血液の中の赤血球が減少するため、体の表面近くに酸素が十分に供給されないからです。
5. 動悸
貧血が重度になると、心臓が血液を送り出すために通常よりも多くの力を必要とするため、動悸(胸がドキドキする感じ)が生じることがあります。特に安静時に感じることがあります。
6. 頭痛
酸素供給が不足すると、脳も影響を受け、頭痛が起こることがあります。特に、長時間にわたる疲労やストレスを感じているときに、頭痛が悪化することがあります。
7. 爪や髪の異常
貧血の症状には、爪が脆くなったり、髪の毛が薄くなることも含まれます。酸素が足りないことで、皮膚や髪の毛、爪への栄養供給が不十分になるためです。
8. 冷え性
貧血の人は、手足の冷えを感じることがよくあります。体内の酸素が十分に供給されないため、末端部(手足)への血液循環が悪くなり、冷えを感じやすくなります。
9. 食欲不振
貧血により、食欲が減退することがあります。特に鉄分が不足している場合、体がその栄養を求めることによって食欲の変化が現れることがあります。
10. 集中力の低下
貧血の影響で脳への酸素供給が不足すると、集中力や記憶力の低下が生じることがあります。これは特に、学業や仕事において注意力を要する場面で顕著に現れます。
貧血の原因
貧血にはいくつかの原因があります。貧血の発症は、以下のような要因によって引き起こされることがあります。
1. 鉄欠乏性貧血
最も一般的な貧血の原因で、体内の鉄分が不足することによって起こります。鉄は赤血球を作るために必要不可欠な成分であるため、鉄分が不足すると赤血球の生成が低下し、貧血が生じます。鉄分が不足する原因には、食事からの摂取不足や消化吸収不良、大量の月経などがあります。
2. ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12は赤血球を作るために必要な栄養素です。ビタミンB12が不足すると、赤血球の正常な生成が妨げられ、貧血が起こります。ビタミンB12欠乏症は、食事での摂取不足や消化不良、吸収障害によって引き起こされることがあります。
3. 葉酸欠乏症
葉酸(ビタミンB9)は、細胞分裂に重要な役割を果たしており、特に赤血球の生成に関与しています。葉酸が不足すると、赤血球の生成に支障をきたし、貧血を引き起こします。妊娠中や摂取不足によって葉酸欠乏症が発症することがあります。
4. 慢性疾患による貧血
糖尿病、腎疾患、癌などの慢性疾患がある場合、貧血が引き起こされることがあります。慢性疾患により、体が必要とする栄養素の吸収や赤血球の生成に影響を及ぼし、貧血を引き起こします。
5. 遺伝的要因
一部の貧血は遺伝的な要因によって引き起こされます。例えば、鎌状赤血球症や地中海性貧血(サラセミア)は、遺伝子異常によって赤血球の形や機能が異常になり、貧血を引き起こします。
6. 出血
外的な出血(外傷や手術など)や内的な出血(胃潰瘍や消化管の疾患など)によって、急激に血液が失われると貧血が発症することがあります。特に、長期間にわたって微量の出血が続く場合、慢性的な貧血を引き起こすことがあります。
貧血の診断方法
貧血の診断は、主に血液検査を通じて行われます。最も一般的な検査は以下の通りです。
1. 血液検査
貧血の診断には、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、MCV(平均赤血球容積)などを測定する血液検査が行われます。これにより、貧血の程度や種類を把握することができます。
2. 鉄分検査
鉄欠乏性貧血が疑われる場合、血液中の鉄分の量やフェリチン(鉄貯蔵タンパク質)の量を調べる検査が行われます。
3. ビタミンB12、葉酸検査
ビタミンB12や葉酸の不足が原因となっている貧血が疑われる場合、これらのビタミンの血中濃度を測定することがあります。
4. 骨髄検査
重度の貧血の場合、骨髄からの赤血球の生成状態を確認するために骨髄検査が行われることがあります。これにより、赤血球が適切に生成されているかを評価できます。
貧血の治療方法
貧血の治療方法は、原因によって異なります。以下にいくつかの一般的な治療方法を紹介します。
1. 鉄剤の摂取
鉄欠乏性貧血の場合、鉄剤が処方されることが一般的です。鉄分を補充することで、赤血球の生成が促進され、貧血の改善が期待できます。
2. ビタミンB12や葉酸の補充
ビタミンB12や葉酸が不足している場合、これらの栄養素を補充することで貧血が改善されます。食事からの摂取やサプリメント、注射などが行われます。
3. 慢性疾患の治療
慢性疾患による貧血の場合、疾患そのものの治療が必要です。疾患が改善されることで、貧血も改善されることがあります。
4. 輸血
貧血が非常に重度である場合や急激に貧血が進行した場合、輸血が必要となることがあります。輸血によって一時的に血液の不足を補い、酸素供給を改善します。
5. 手術
出血が原因で貧血が生じている場合、その出血を止めるために手術が行われることがあります。胃潰瘍や腸疾患が原因であれば、手術によって出血源を取り除くことが求められます。
結論
貧血は、体内の酸素供給が不足することでさまざまな症状を引き起こす疾患です。その原因は多岐にわたりますが、適切な診断と治療により、改善することが可能です。貧血の症状に気づいた場合は、早期に医師に相談し、適切な対処を行うことが重要です。