口腔内の真菌感染症(カンジダ症)について:赤ちゃんにおける発症と対策
赤ちゃんの口腔内には、細菌や真菌(カビ)が自然に存在しています。しかし、何らかの理由でこれらの微生物のバランスが崩れると、口腔内で真菌が異常に繁殖することがあります。このような状態を「口腔内の真菌感染症」または「カンジダ症」と呼びます。特に赤ちゃんにとっては、免疫系が未熟なため、カンジダ症を発症しやすい傾向にあります。ここでは、赤ちゃんの口腔内真菌感染症の原因、症状、治療法について詳しく説明します。
1. 口腔内の真菌感染症とは
口腔内真菌感染症は、通常「口腔カンジダ症」として知られ、カンジダ属という真菌が引き起こします。このカビは、健常な人間の体内にも常在しており、通常は無害です。しかし、免疫力が低下したり、環境的要因が影響したりすると、異常に増殖して症状を引き起こします。赤ちゃんの場合、免疫システムが未発達であるため、この感染症にかかりやすいのです。
2. 赤ちゃんにおける原因
赤ちゃんが口腔カンジダ症を発症する原因はさまざまですが、主な要因として以下のようなものがあります。
(1) 母乳や哺乳瓶による感染
赤ちゃんが母乳を授かっている場合、母親の乳首や授乳器具にカンジダ菌が付着していると、赤ちゃんに感染する可能性があります。また、哺乳瓶やおしゃぶりも、適切に消毒されていない場合、カンジダ菌が繁殖する場所となり得ます。
(2) 抗生物質の使用
赤ちゃんが抗生物質を服用すると、体内の善玉菌(腸内フローラ)が減少し、その隙間を狙ってカンジダ菌が繁殖することがあります。抗生物質は、細菌の感染症の治療に効果的ですが、カンジダ菌にも影響を与えるため注意が必要です。
(3) 免疫系の未熟さ
新生児や生後数ヶ月の赤ちゃんは免疫システムが未発達であり、カンジダ症を発症しやすい状態です。免疫系が十分に機能しないうちに、カンジダ菌が異常に増殖することがあります。
(4) 糖分の多い食事
乳児が大量の母乳や人工乳(ミルク)を摂取することで、口腔内の糖分濃度が高くなり、カンジダ菌が繁殖しやすくなります。特に、哺乳瓶の乳首をなめることによって、菌が口内に広がることがあります。
3. 口腔内の真菌感染症の症状
赤ちゃんの口腔内カンジダ症の症状は以下の通りです。
(1) 白い斑点や膜
最も一般的な症状は、赤ちゃんの口の中に現れる白い斑点や膜です。この斑点はチーズのような見た目をしており、口の内側や舌、頬の内側に現れることがあります。斑点を拭き取ろうとすると、下に赤く炎症を伴う部分が見えることがあります。
(2) 口内の痛みや不快感
赤ちゃんは言葉で自分の痛みを伝えることができませんが、カンジダ症が進行すると、口内の不快感や痛みが増し、食事を嫌がるようになることがあります。授乳時に不快感を示す場合もあります。
(3) 授乳や飲み物を嫌がる
口腔内の痛みや不快感から、赤ちゃんが授乳や飲み物を嫌がることがあります。これが続く場合、体重の減少や成長の遅れが見られることもあります。
(4) 発熱
感染症が進行すると、赤ちゃんが軽い発熱を示すことがあります。この症状は、体が感染症に反応しているサインです。
4. 口腔内真菌感染症の治療法
カンジダ症が確認された場合、適切な治療を行うことが重要です。治療は通常、医師の指導のもとで行うべきですが、主に以下の方法が取られます。
(1) 抗真菌薬の使用
口腔内カンジダ症が発症した場合、抗真菌薬が処方されることが多いです。これらの薬は、口腔内に直接塗布するものや、内服薬の形で提供されます。多くの場合、数日から1週間以内に症状が改善されます。
(2) 授乳器具や哺乳瓶の消毒
母乳や人工乳を使っている場合、授乳器具や哺乳瓶をしっかりと消毒することが重要です。哺乳瓶やおしゃぶりは定期的に洗浄し、カンジダ菌が繁殖しないように注意を払いましょう。
(3) 母親の治療
もし母親がカンジダ症にかかっている場合、授乳中に赤ちゃんに感染が広がることがあります。そのため、母親も適切な治療を受けることが推奨されます。母親が乳首にカンジダ症を発症している場合、痛みを軽減するための対策が必要です。
(4) 食事管理
糖分の摂取を減らすことも、カンジダ菌の繁殖を抑えるために有効です。赤ちゃんの食事が乳のみの場合でも、授乳後は口内をきれいにすることが推奨されます。
5. 予防方法
赤ちゃんの口腔内カンジダ症を予防するためには、日常的なケアが重要です。以下の方法を実践することで、感染のリスクを減らすことができます。
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母乳や人工乳を与える前後に、手を洗う。
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哺乳瓶やおしゃぶりを清潔に保ち、消毒を徹底する。
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赤ちゃんの口内をやさしく拭くことで、余分な糖分やミルクの残りカスを取り除く。
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免疫力を高めるために、赤ちゃんの健康状態を保ち、適切な授乳を行う。
6. まとめ
赤ちゃんの口腔内真菌感染症は、免疫力が未熟な時期に発症しやすい疾患です。早期に発見し、適切な治療を行うことが大切です。赤ちゃんが不快感を示したり、授乳を嫌がる場合は、カンジダ症の可能性を考え、早めに医師に相談しましょう。また、日常的な予防策を講じることで、感染症のリスクを減らすことができます。赤ちゃんの健康を守るために、注意深く観察し、適切な対策をとることが重要です。
