逆流性食道炎(GERD、胃食道逆流症)は、胃の内容物が食道に逆流することによって引き起こされる病状です。この病気は、胃酸が食道の内壁を刺激し、さまざまな不快な症状を引き起こすことがあります。逆流性食道炎は世界中で非常に一般的な疾患であり、長期にわたる症状が続くこともあります。逆流性食道炎の症状、原因、診断方法、治療法について詳しく見ていきましょう。
1. 逆流性食道炎の症状
逆流性食道炎の最も典型的な症状は、胸焼け(胸部の灼熱感)です。食べ物や液体が胃から食道に逆流すると、胃酸が食道を刺激し、胸部に焼けるような感覚を引き起こします。この症状は、特に食後や寝る前に悪化しやすいです。その他の症状には以下が含まれます:

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呑酸(酸逆流): 胃酸が口の中に逆流し、酸っぱい味を感じることがあります。
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のどの不快感や痛み: 喉が痛む、声がかすれるなどの症状が現れることもあります。
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嚥下障害(飲み込みにくさ): 食物や液体を飲み込む際に困難を感じることがあります。
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咳や喘鳴: 逆流した胃酸が気道に影響を与えることで、咳や喘鳴(呼吸音がひゅーひゅーする)を引き起こすこともあります。
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夜間の咳や息切れ: 横になることで症状が悪化し、夜間に咳や呼吸困難を感じることがあります。
2. 逆流性食道炎の原因
逆流性食道炎の主な原因は、食道と胃の間にある下部食道括約筋(LES)の機能不全です。この筋肉は通常、胃から食道への逆流を防ぐ役割を果たします。しかし、何らかの理由でこの筋肉が緩むと、胃酸が食道に逆流し、炎症を引き起こします。
逆流性食道炎を引き起こす要因としては、以下のものがあります:
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肥満: 腹部に過剰な脂肪があると、胃に圧力がかかり、逆流を引き起こしやすくなります。
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食生活: 辛い食べ物、脂っこい食べ物、カフェイン、アルコール、チョコレートなどは逆流を悪化させることがあります。
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喫煙: 喫煙は下部食道括約筋を緩め、逆流を引き起こす原因となります。
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妊娠: 妊娠中はホルモンの変化により、食道括約筋の働きが弱まることがあります。
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薬物の使用: 一部の薬(例えば、鎮痛薬や血圧を下げる薬)は、逆流を引き起こす可能性があります。
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食道の異常: 食道が狭くなる病気や、食道裂孔ヘルニアなども逆流を引き起こす原因です。
3. 逆流性食道炎の診断方法
逆流性食道炎を診断するためには、医師が患者の症状や生活習慣を詳しく聴取し、いくつかの検査を行うことが一般的です。主な診断方法としては次のものがあります:
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内視鏡検査: 食道内を直接観察することで、炎症や潰瘍、食道の損傷の有無を確認できます。
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食道 pH モニタリング: 食道内の酸度を測定することで、逆流が実際に起きているかを確認します。
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X線検査: バリウムを飲んで食道や胃を撮影し、逆流の原因となる異常を調べることができます。
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動態検査(食道圧検査): 食道の運動能力を測定し、逆流の原因となる筋肉の機能を調べることができます。
4. 逆流性食道炎の治療方法
逆流性食道炎の治療は、生活習慣の改善と薬物治療、そして重症の場合には外科的治療を組み合わせて行います。治療方法には次のものがあります:
生活習慣の改善
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食事の変更: 食事の量を減らし、脂っこい食べ物や辛い食べ物、アルコール、カフェインを控えることが推奨されます。また、食事後すぐに横にならないようにすることも大切です。
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体重管理: 肥満が原因となる場合、体重を減らすことが重要です。
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喫煙の中止: 喫煙をやめることは、逆流性食道炎の症状を改善するために非常に重要です。
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寝る姿勢の工夫: 寝る際に頭を高くして寝ることで、胃酸の逆流を防ぐことができます。
薬物治療
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制酸薬: 胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプインヒビターやH2受容体拮抗薬)を使用することがあります。これにより胃酸が食道に逆流するのを防ぎ、炎症を治癒させます。
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制酸剤: 胃酸を中和する薬剤も症状を軽減するために使われます。
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消化管運動改善薬: 食道の動きを正常化し、逆流を抑える薬です。
外科的治療
重症の逆流性食道炎や薬物療法が効かない場合には、外科的手術を考慮することがあります。最も一般的な手術は、ニッセン式胃食道接合部形成術で、胃と食道の接合部を強化することで逆流を防ぎます。
5. 逆流性食道炎の予防
逆流性食道炎の予防には、いくつかの生活習慣の改善が有効です。特に、食事の管理、体重の減少、禁煙、アルコールの摂取制限などが予防に役立ちます。また、逆流症状がある場合は、早期に医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。
6. まとめ
逆流性食道炎は、食道に胃酸が逆流することで引き起こされる病気で、胸焼けや呑酸などの症状を引き起こします。生活習慣の改善や薬物治療を行うことで症状を軽減できますが、重症の場合は手術が必要になることもあります。症状が続く場合は、早期に医師に相談することが重要です。