遺伝性コレステロール異常症(遺伝性高コレステロール血症)は、遺伝子の異常に起因するコレステロールに関する疾患です。この病気は、体内でコレステロールの調整が適切に行われなくなることにより、血液中のコレステロール値が異常に高くなるのが特徴です。特に、遺伝的な要因により、コレステロールの分解や除去に関わる遺伝子に異常があると、病状が引き起こされます。
1. 遺伝性高コレステロール血症とは
遺伝性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia, FH)は、遺伝子に異常があることが原因で発症する疾患であり、主にLDL(低密度リポタンパク質)と呼ばれる「悪玉コレステロール」の値が異常に高くなることが特徴です。FHは、常染色体優性遺伝という形で親から子へ遺伝します。つまり、片方の親がこの疾患を持っていれば、子どもも疾患を引き継ぐ可能性があります。

2. 遺伝性高コレステロール血症の種類
遺伝性高コレステロール血症には、主に以下のようなタイプがあります。
2.1. ホモ接合型遺伝性高コレステロール血症
ホモ接合型遺伝性高コレステロール血症は、両親からそれぞれ異常な遺伝子を受け継いだ場合に発症します。このタイプは非常に稀であり、症状が非常に重篤です。血液中のLDLコレステロール値は、通常よりも非常に高く、心血管疾患を早期に引き起こす可能性が高いです。治療が早期に始まらなければ、生命にかかわるリスクも増加します。
2.2. ヘテロ接合型遺伝性高コレステロール血症
ヘテロ接合型遺伝性高コレステロール血症は、両親のうち片方が異常な遺伝子を持っている場合に発症します。この場合、病気の症状はホモ接合型よりも軽度であり、コレステロール値も比較的高くなるものの、治療を受ければ長期間健康を維持することが可能です。このタイプのFHは比較的多く見られます。
3. 遺伝性高コレステロール血症の症状
遺伝性高コレステロール血症の主な症状には以下のようなものがあります。
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高コレステロール値:血液検査において、LDLコレステロールの値が非常に高くなることが特徴的です。
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動脈硬化:長期的にコレステロールが蓄積されることにより、血管が狭くなり、心血管疾患を引き起こすリスクが高まります。
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アテローム性プラークの形成:動脈の壁にコレステロールが沈着し、プラークを形成します。このプラークが血流を妨げることになります。
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皮膚の異常:コレステロールが皮膚に沈着することで、特に手足の腱に黄色いしこり(黄色腱腫)が現れることがあります。
4. 遺伝性高コレステロール血症の診断
遺伝性高コレステロール血症の診断は、主に血液検査によって行われます。LDLコレステロール値が異常に高い場合、遺伝的な要因が関与している可能性があると考えられます。さらに、遺伝子検査を行うことによって、FHの原因となる遺伝子異常を確認することができます。
5. 遺伝性高コレステロール血症の治療法
遺伝性高コレステロール血症の治療は、主に以下の方法で行われます。
5.1. 薬物治療
FHの治療には、コレステロールの低下を目的とした薬物が使用されます。最も一般的なのはスタチンという薬で、これによって肝臓でのコレステロールの合成を抑制します。また、スタチンだけでは十分に効果が得られない場合には、他の薬物(エゼチミブやPCSK9阻害薬)を併用することがあります。
5.2. 食事療法
食事の管理も重要な治療方法です。コレステロール値を下げるためには、飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取を避け、食物繊維が豊富な食品(野菜や果物など)を積極的に摂取することが推奨されます。
5.3. 定期的な健康チェック
定期的に血液検査を行い、コレステロール値の管理を行うことが重要です。特に心血管疾患のリスクが高くなるため、早期に異常を発見し、治療を開始することが重要です。
6. 遺伝性高コレステロール血症の予防
遺伝性高コレステロール血症は遺伝的な要因による疾患であるため、完全に予防することは難しいですが、早期に発見し、治療を開始することで、症状の進行を防ぐことができます。家族歴にこの疾患がある場合は、早期の検査を受けることが推奨されます。
7. まとめ
遺伝性高コレステロール血症は、遺伝子に起因する疾患であり、特に心血管疾患を引き起こすリスクが高い病気です。ホモ接合型とヘテロ接合型の2つのタイプがあり、それぞれの症状や治療方法は異なりますが、早期の診断と治療が鍵となります。生活習慣の改善や薬物治療によって、コレステロール値を管理することが可能です。家族にこの病歴がある場合には、早期に検査を受け、予防的な対応を行うことが重要です。