顔面神経麻痺(通称:ベル麻痺)は、顔面神経(第7脳神経)が障害され、顔の片側に突然の麻痺が現れる病気です。これは「顔面神経麻痺」とも呼ばれ、特にその症状が急速に現れるため、患者にとっては非常に驚くべき経験となります。病名の「ベル麻痺」は、19世紀の神経学者チャールズ・ベルにちなんで名付けられました。この疾患は一般的に一時的であり、多くの場合、適切な治療を受けることで回復が期待できますが、症状の重さや発症後の対応によって回復の速度や程度が異なることもあります。
症状と特徴
顔面神経麻痺の主な症状は、顔の片側に突然現れる麻痺です。具体的には、以下のような症状が現れることが一般的です:

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顔の片側の筋肉が動かせない
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目を閉じることができない、または困難
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口角が下がり、笑ったり話したりすることが難しくなる
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味覚の変化(舌の前方の2/3部分で味が感じにくくなる)
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音に対する感受性の変化(音の大きさが異常に感じることがある)
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耳の後ろや顔の片側に痛みを感じることがある
これらの症状は急速に現れ、通常は数時間から数日以内に最も強くなります。症状の程度には個人差があり、軽度のものから重度のものまで様々です。
原因
顔面神経麻痺の原因は完全には解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています:
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ウイルス感染:最も一般的な原因とされるのは、風疹ウイルスや帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス)などのウイルス感染です。特に帯状疱疹ウイルスは顔面神経を攻撃し、神経に炎症を引き起こすことがあります。
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免疫系の異常:免疫系が異常に反応し、顔面神経を誤って攻撃することがあると考えられています。これにより、神経が炎症を起こし、機能が低下することがあります。
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外傷や圧迫:顔面神経が物理的に圧迫されることも原因の一つです。例えば、手術や事故による外傷が神経に影響を与えることがあります。
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その他の要因:糖尿病や高血圧などの慢性的な病気が関与している場合もあります。
診断
顔面神経麻痺の診断は、主に患者の症状を基に行われます。医師は患者の顔の動きや感覚を評価し、顔面神経の機能をテストします。また、場合によっては、以下の検査が行われることがあります:
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MRI(磁気共鳴画像):顔面神経に異常があるかを確認するために使用されることがあります。
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血液検査:ウイルス感染やその他の原因を確認するために行われることがあります。
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神経学的評価:顔面神経の働きを評価するため、顔の筋肉を動かすテストが行われます。
治療法
顔面神経麻痺は多くの場合、自然に回復しますが、早期の治療が回復を早め、症状を軽減するのに役立ちます。治療法としては、以下のものが一般的です:
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ステロイド薬:顔面神経の炎症を抑えるために、ステロイド薬(プレドニゾロンなど)が処方されることがあります。これにより、回復が早まることがあります。
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抗ウイルス薬:ウイルス感染が原因とされる場合、抗ウイルス薬(アシクロビルなど)が処方されることがあります。
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リハビリテーション:顔面の筋肉の機能を回復させるために、顔の筋肉を鍛えるリハビリテーション(顔面筋トレーニング)が行われることがあります。
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鎮痛薬:顔面や耳の痛みを和らげるために、鎮痛薬が使用されることがあります。
回復と予後
顔面神経麻痺の回復には、一般的に数週間から数ヶ月かかることが多いです。多くの患者は、適切な治療を受けることで完全に回復しますが、約10~15%の患者は何らかの後遺症が残ることがあります。後遺症としては、顔の筋肉が完全に回復しない場合や、顔面の筋肉が不均等に動く場合があります。
また、再発することは稀ですが、特に免疫力が低下している場合や、ウイルス感染が原因の場合には、再発のリスクが高くなることもあります。
予防
顔面神経麻痺を完全に予防する方法は確立されていませんが、以下のような予防策が推奨されることがあります:
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風疹や帯状疱疹の予防接種:ウイルス感染が原因となることが多いため、風疹や帯状疱疹の予防接種を受けることが有効です。
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免疫力の維持:ストレスを減らし、規則正しい生活や栄養バランスの取れた食事を心がけ、免疫力を維持することが重要です。
結論
顔面神経麻痺は、一時的な顔の麻痺を引き起こす疾患であり、早期の診断と治療が重要です。ほとんどの患者は適切な治療を受けることで回復しますが、再発や後遺症を避けるために、ウイルス感染の予防や健康管理に注意を払うことが大切です。