高いヘモグロビン値は、体内で酸素を運ぶ役割を果たす赤血球内の重要な成分であるヘモグロビンが通常より多く存在する状態を指します。この現象は、「高ヘモグロビン血症」や「多血症」とも呼ばれ、体内で酸素の供給が過剰になったり、逆に酸素供給が低下したりする場合に見られることがあります。この記事では、高いヘモグロビン値の原因、症状、診断方法、治療法について、幅広く解説します。
1. 高ヘモグロビン値の原因
高ヘモグロビン値は様々な原因によって引き起こされます。大きく分けて以下の二つのタイプに分類されます。

1.1 原発性の原因
原発性の原因は、血液の生成が異常に活発になることによってヘモグロビン値が高くなるケースです。これには以下の疾患が含まれます。
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真性多血症(Polycythemia Vera): これは骨髄での赤血球生成が異常に活発になり、ヘモグロビンの量が増加する病気です。一般的に、エリスロポエチンというホルモンの分泌異常や、遺伝的な変異が関与しています。
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遺伝性多血症: 一部の遺伝性疾患では、体が過剰に赤血球を作ることがあります。この場合、遺伝的要因が原因となります。
1.2 二次的な原因
二次的な原因は、他の疾患や外的な要因によって高ヘモグロビンが引き起こされるケースです。これには以下のようなものが考えられます。
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慢性呼吸器疾患: 肺の病気や呼吸不全がある場合、体は酸素不足を補おうとし、赤血球の産生が増えます。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺気腫がその例です。
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高地での生活: 高地では酸素濃度が低いため、体は酸素不足を補うためにヘモグロビンの量を増やします。登山家などが高山病になる原因としても知られています。
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心臓病: 一部の心臓病、特に心不全や先天性の心疾患は、体内で酸素が十分に供給されないため、赤血球の生産が増加します。
1.3 生活習慣や環境因子
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喫煙: 喫煙は酸素の供給を減少させ、体はそれを補うためにヘモグロビン値を上昇させることがあります。
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脱水症状: 脱水状態では血液の濃度が高くなり、相対的にヘモグロビン濃度が増加することがあります。この場合、実際に赤血球の数が増えているわけではなく、血液の水分が不足しているために濃度が高く見えるだけです。
2. 高ヘモグロビン値の症状
高ヘモグロビン血症の症状は、ヘモグロビンが異常に高くなることによって引き起こされる血液の粘度の増加と関係しています。血液が粘り気を持つため、以下のような症状が現れることがあります。
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頭痛: 血液の粘度が高くなることにより、脳への血流が悪くなることがあります。その結果、頭痛を感じることがあります。
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めまい: 血液の流れが悪くなることで、めまいを感じることがあります。
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視覚障害: 血流が不足すると、目の前に点が見える、視界がぼやけるといった視覚障害が起こることがあります。
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疲労感: 酸素の供給が不十分になると、体はエネルギーを効率的に使えなくなり、疲労感を感じやすくなります。
3. 高ヘモグロビン値の診断方法
高ヘモグロビン値が疑われる場合、以下の診断方法が用いられます。
3.1 血液検査
最も基本的な診断方法は血液検査です。具体的には、ヘモグロビン濃度や赤血球数、ヘマトクリット値を測定します。ヘモグロビンの値が基準値よりも高い場合、さらに詳細な検査が行われることがあります。
3.2 骨髄検査
真性多血症が疑われる場合、骨髄検査を行うことがあります。この検査では、骨髄がどれくらい赤血球を作っているかを調べることができます。
3.3 遺伝子検査
遺伝性多血症や真性多血症に関連する遺伝子異常を調べるため、遺伝子検査が行われることもあります。
3.4 画像診断
慢性呼吸器疾患や心疾患が原因である場合、胸部X線やCTスキャンなどの画像診断を行って、肺や心臓の状態を評価することがあります。
4. 高ヘモグロビン値の治療法
高ヘモグロビン値の治療方法は、原因となる疾患に依存します。主な治療方法には以下のようなものがあります。
4.1 献血
高ヘモグロビン血症の患者には、定期的な献血が推奨されることがあります。献血によって血液量を調整し、血液の粘度を下げることができます。
4.2 薬物療法
真性多血症の治療には、エリスロポエチン抑制薬や化学療法薬を使用することがあります。また、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)やアスピリンが処方されることもあります。
4.3 酸素療法
慢性呼吸器疾患や心疾患が原因の場合、酸素療法が行われることがあります。酸素を補充することで、体が酸素不足を補い、赤血球の過剰生産を抑えることができます。
4.4 生活習慣の改善
喫煙や脱水症状が原因である場合、禁煙や水分補給の徹底が重要です。適切な水分摂取を行うことで、血液の粘度を下げることができます。
5. まとめ
高ヘモグロビン値は、体内の酸素供給の状態や他の疾患に関連して発生することが多いです。症状が軽度であれば、適切な治療を受けることで改善が期待できますが、治療が遅れると深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。早期に診断を受け、原因に応じた治療を行うことが大切です。