ペルシャ猫(一般的に日本では「シェルジー猫」とも呼ばれる)は、その優雅な容姿と穏やかな性格により、世界中で高く評価されている猫種の一つである。特に希少性や血統、毛色の特殊性、飼育環境の厳選によって価格が跳ね上がるケースも多く、「高級猫種」としての地位を築いてきた。本稿では、最も高価なシェルジー猫の種類について、詳細かつ包括的に解説する。
シェルジー猫の基本的特徴
ペルシャ猫は、長毛種であり、つぶれた鼻と大きなまん丸の目、そして豊かで柔らかな被毛を特徴とする。原産はイラン(旧ペルシャ)とされており、ヨーロッパの貴族の間で広まった。現代のペルシャ猫は、ショーキャットとしてのブリーディングが進化し、見た目の美しさがさらに強調されている。

高価なシェルジー猫種の決定要因
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血統証明とショーキャットの系譜
キャットショーでの優勝歴や、チャンピオンキャットの子孫である場合、その価値は飛躍的に上昇する。国際キャット連盟(CFA、TICAなど)で認定された血統証明書が価格に大きな影響を与える。 -
希少な毛色やパターン
一般的なホワイトやブルーに加え、チンチラ、ゴールデン、カメオ、ヒマラヤン(サイアミーズとの交配で誕生したカラー)など、特異なカラーリングは非常に高価となる。 -
健康状態と遺伝子検査の結果
遺伝疾患のない個体や、ポリシスティック腎疾患(PKD)の陰性証明がある猫は評価が高い。 -
飼育環境とブリーダーの信頼性
ブリーダーが猫の健康や性格形成にどれほど注力しているかも価格に直結する。
代表的な高価なシェルジー猫種と価格帯(表)
種類 | 特徴 | 平均価格(日本円) |
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チンチラ・シルバー | 白銀の被毛とグリーンアイ、美しい輪郭線のアイライン | 40万~100万円 |
チンチラ・ゴールデン | ゴールドの被毛に黒い先端、非常に希少 | 50万~120万円 |
ヒマラヤン・ポイント | 青い目とサイアミーズ由来のポイントカラー | 30万~80万円 |
ピュアホワイト(オッドアイ) | 両目の色が異なる、白毛との組み合わせが希少 | 70万~150万円 |
ドールフェイス・チンチラ | 古典的な顔立ちのチンチラ、ショーフェイスに比べて呼吸器疾患が少ない | 35万~90万円 |
エキゾチック・ロングヘア | シェルジーに似るがより丸みを帯びたフォルム | 30万~75万円 |
最も高価とされる事例:ピュアホワイトのオッドアイ・チンチラ
特に注目すべきは、「ピュアホワイトのチンチラ・オッドアイ」である。このタイプは、白銀の被毛に片目がブルー、もう片方がアンバーまたはグリーンという非常に美しいコントラストを持つ。ペット市場にほとんど流通しておらず、ブリーダー間で予約が長期間に渡って埋まることがある。価格は100万円を超え、場合によっては200万円に達する例もある。
シェルジー猫の高価格を支える背景
1. 美容管理の重要性
シェルジー猫は日々のブラッシングと入浴、目やにのケアが欠かせない。こうした手間を惜しまないオーナーにとって、健康と美しさを保てる猫は極めて価値が高い。ペットとしての美しさのみならず、繁殖用やショー出場用として育成する場合、その管理の手間と労力が価格に上乗せされる。
2. 遺伝的安定性と健康維持
近親交配による遺伝疾患のリスクを排除するため、信頼性の高いブリーディングプログラムが重要とされる。日本国内では、PKD(多発性嚢胞腎)のDNA検査を通過した個体にのみ価値が集中している。特に欧米からの輸入個体は健康チェック体制が整っており、希少性と安全性から価格が跳ね上がる。
国内外における取引実態と輸入例
現在、日本国内では高品質なペルシャ猫を扱うブリーダーは限定的であり、欧米(特にアメリカやイギリス)からの輸入個体が多い。アメリカのCFA認定キャッテリーから輸入される個体は、渡航費・検疫・登録費などを含めると、猫1匹あたり150万~250万円の価格となることも珍しくない。特に英国の「Emerald Empire」や米国の「Fancy Feast Persians」といったキャッテリーは、世界的に評価が高く、予約待ちは最長で2年にも及ぶ。
日本での人気傾向と今後の展望
日本ではSNSやYouTubeの影響もあり、チンチラ系のシェルジー猫の人気が急上昇している。特にフォロワー数数十万人を誇るペルシャ猫のインフルエンサーたちが登場したことで、「見た目の美しさ」が重視され、一般の飼い主層にも「一生に一度は飼いたい猫」としての地位を確立しつつある。
また、今後は遺伝子編集技術や人工受精による血統管理の発展により、さらなる高価格帯の猫種が登場する可能性も示唆されている。
注意点:高価格=幸福ではない
高価であるからといって、必ずしもその猫が「よりよいペット」になるとは限らない。猫の性格や健康状態、家庭との相性が最も重要であることを忘れてはならない。シェルジー猫は静かでおとなしく、抱っこ好きな一方で、孤独に強い個体も多い。迎え入れる前に、十分な情報収集と環境整備が求められる。
まとめ
シェルジー猫(ペルシャ猫)は、その美しさと希少性により非常に高価な個体が存在する。中でも、チンチラ種やヒマラヤン、オッドアイなどの特殊なカラーを持つ猫は、100万円を超える価格で取引されることもある。ブリーダーの信頼性、血統、健康状態など多様な要因が絡み合って価格が決定されており、単なる見た目だけでは価値を判断できない。高価格な猫種を迎え入れる際は、価格以上に「猫との生活の質」を重視し、愛情と責任をもって接することが求められる。
参考文献:
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Cat Fanciers’ Association (CFA). “Breed Profiles: Persian.”
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International Cat Association (TICA). “Persian Breed Standards.”
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日本猫愛好会公式ウェブサイト
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『ザ・キャット大全』山根明弘著(講談社)
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「ペルシャ猫のすべて」猫専門誌『Nyans』2022年特集号
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