糖尿病と血糖値:高血糖が「異常」と見なされる基準
糖尿病やその他の代謝障害において、血糖値は健康を保つ上で重要な指標となります。血糖値の上昇は、体内でエネルギー源となるグルコース(糖)が過剰になることを意味し、これが長期間続くと様々な健康問題を引き起こします。今回は、血糖値が「高い」とされる基準と、それが意味するものについて詳しく解説します。

1. 血糖値とは
血糖値とは、血液中に含まれるグルコースの濃度を指します。体はエネルギー源として糖分を利用しており、食事から摂取した糖分は消化後、血液に吸収され、全身の細胞に供給されます。インスリンというホルモンが、血液中の過剰な糖分を細胞に取り込ませ、血糖値を安定させる役割を果たします。しかし、インスリンの分泌が不足したり、細胞がインスリンに対して反応しにくくなったりすると、血糖値が異常に高くなり、糖尿病を引き起こす原因となります。
2. 血糖値の正常範囲
血糖値が高いかどうかを判断するためには、まず「正常な血糖値」の範囲を知ることが重要です。通常、血糖値は次の基準で評価されます:
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空腹時血糖(FPG):朝食前など、食事を摂る前の血糖値
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正常値:70~99 mg/dL(3.9~5.5 mmol/L)
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空腹時血糖が100~125 mg/dL(5.6~6.9 mmol/L)の場合は「空腹時血糖異常」とされ、前糖尿病状態と見なされます。
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126 mg/dL(7.0 mmol/L)以上の場合は、糖尿病と診断される可能性があります。
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食後血糖(OGTT:経口ブドウ糖負荷試験):食後2時間の血糖値
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正常値:140 mg/dL(7.8 mmol/L)未満
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140~199 mg/dL(7.8~11.0 mmol/L)の場合、食後高血糖または前糖尿病とされます。
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200 mg/dL(11.1 mmol/L)以上の場合、糖尿病の可能性があります。
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ヘモグロビンA1c(HbA1c):過去2~3ヶ月の平均的な血糖値を反映する指標
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正常値:4.0~5.6%
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5.7~6.4%は前糖尿病、6.5%以上は糖尿病と診断される場合があります。
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これらの基準に基づき、血糖値が異常に高い場合には早期に治療を開始することが推奨されます。
3. 高血糖が引き起こすリスク
高血糖が続くと、体に多くの悪影響を及ぼします。以下に主なリスクを挙げます。
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動脈硬化:血糖が高い状態が続くと、血管内壁に糖分が付着し、血管が硬くなります。これが動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中のリスクを高めます。
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視力障害:高血糖は眼の網膜に血液供給障害を起こし、糖尿病性網膜症を引き起こします。これが進行すると失明につながることもあります。
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腎機能障害:糖尿病が進行すると、腎臓の細胞にダメージを与え、糖尿病性腎症を引き起こすことがあります。最終的には腎不全に至ることもあります。
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神経障害:糖尿病は神経を傷つけ、足や手のしびれ、痛み、感覚障害などを引き起こします。
4. 血糖値を管理する方法
血糖値が高くなる前に、適切な管理を行うことが重要です。高血糖の予防や改善には、以下の方法が有効です。
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食事管理:バランスの取れた食事を摂取することが大切です。特に、低GI食品(血糖値の上昇が緩やかな食品)を選ぶと効果的です。また、食事の摂取時間や量を調整し、規則正しい食生活を心がけましょう。
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運動:運動は血糖値を下げる効果があります。週に150分以上の中等度の運動が推奨されています。
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体重管理:適正体重を維持することで、インスリンの働きが改善され、血糖値の管理がしやすくなります。
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薬物療法:血糖値が高い場合には、医師の指導のもとで薬物療法を行うことがあります。例えば、インスリンや経口血糖降下薬を使用します。
5. 糖尿病の早期発見と予防
高血糖の状態は、しばしば自覚症状が現れにくいため、定期的に血糖値をチェックすることが重要です。特に、糖尿病のリスクが高いとされる以下の人々は、定期的な検査を受けるべきです。
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高血圧の人
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高脂血症(高コレステロール)の人
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肥満の人
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30歳以上の人(特に40歳を過ぎるとリスクが高まります)
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親族に糖尿病がある人
早期に発見されることで、治療が効果的になり、糖尿病の進行を防ぐことが可能です。
6. 結論
血糖値の管理は、糖尿病予防のために非常に重要です。高血糖が続くことによるリスクは多岐にわたり、早期に管理することで健康を守ることができます。規則正しい食生活、適切な運動、体重管理を心がけ、定期的な血糖値の測定を行いましょう。また、血糖値が高いと感じた場合には、医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。