鼻腔内視鏡手術(鼻内視鏡)は、鼻の内部や副鼻腔に関する問題を診断・治療するための重要な医療技術です。特に副鼻腔炎(慢性副鼻腔炎など)やその他の鼻腔疾患に対して使用されます。この記事では、鼻腔内視鏡手術の概要、適応症、手術の流れ、メリット・デメリット、そして術後のケアについて詳細に説明します。
鼻腔内視鏡手術とは
鼻腔内視鏡手術とは、内視鏡を使用して鼻腔や副鼻腔の内部を視覚的に確認しながら行う手術です。内視鏡とは、細長い管の先端にカメラがついている医療器具で、これを鼻から挿入して内部の画像をモニターに映し出します。この方法により、従来の開放手術に比べて侵襲が少なく、患者への負担が軽減されるため、近年では多くの耳鼻咽喉科で利用されています。

鼻腔内視鏡手術の適応症
鼻腔内視鏡手術は、以下のような症状や疾患に対して行われます。
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慢性副鼻腔炎
慢性的な副鼻腔の炎症は、薬物療法で効果が見られない場合、内視鏡手術が推奨されることがあります。手術によって副鼻腔の排水を改善し、炎症を抑えることができます。 -
鼻茸(鼻ポリープ)
鼻茸は副鼻腔内にできる良性の腫瘍で、これが原因で鼻づまりや嗅覚の低下が起こります。内視鏡を使用してこれらのポリープを除去することが可能です。 -
鼻中隔弯曲(鼻中隔の偏位)
鼻中隔が曲がっている場合、それが原因で鼻づまりや呼吸困難を引き起こすことがあります。内視鏡を使って正確に手術を行い、鼻中隔を修正することができます。 -
副鼻腔内の腫瘍や異物
副鼻腔に腫瘍や異物が存在する場合、それを内視鏡で取り除くことができます。 -
アレルギー性鼻炎の治療
一部の患者には、アレルギーによる鼻づまりがひどくなると、内視鏡手術が適応されることがあります。
手術の流れ
鼻腔内視鏡手術は、以下の手順で行われます。
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麻酔
手術は局所麻酔または全身麻酔のいずれかで行われます。局所麻酔の場合、鼻腔内と周囲の部位に麻酔薬を注入し、痛みを感じることなく手術が進められます。 -
内視鏡の挿入
手術が始まると、内視鏡が鼻腔から挿入されます。内視鏡の先端に取り付けられたカメラによって、内部がモニターに映し出され、医師はリアルタイムで映像を確認しながら手術を行います。 -
疾患の治療
例えば、ポリープを除去したり、炎症を取り除いたり、鼻中隔を修正したりする手術が行われます。内視鏡は非常に細いため、最小限の切開で手術が可能です。 -
手術後の確認
手術が完了した後、内視鏡を使って再度確認を行い、必要に応じて追加の処置を行います。
手術のメリットとデメリット
メリット
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低侵襲
内視鏡手術は、外科的に大きな切開を必要とせず、鼻腔内に小さな切開を加えるだけで済みます。これにより、手術後の回復が早く、痛みも少ないです。 -
短期間の回復
従来の開放手術に比べて、患者は通常、数日以内に退院できることが多く、日常生活への復帰も早いです。 -
精密な視覚化
内視鏡を使用することで、医師は患部を直接確認しながら手術を行えるため、精度が高くなります。 -
出血の減少
内視鏡手術では、傷口が小さく出血が少なくなるため、手術中のリスクが低減します。
デメリット
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手術の技術的な難易度
内視鏡を使用するため、手術を行う医師には高度な技術が求められます。経験が少ない医師による手術では、失敗のリスクが高まる可能性があります。 -
限られた適応
一部の複雑な症例では、内視鏡手術が適さない場合もあり、その場合には従来の手術方法が選ばれることがあります。 -
合併症のリスク
いくつかの稀なケースでは、手術後に感染や出血、視力障害などの合併症が起こることがあります。これらのリスクは、手術前に医師と十分に話し合うことが重要です。
術後のケア
鼻腔内視鏡手術後の回復は比較的早いですが、いくつかの注意点があります。
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休養と過度な運動の避ける
手術後は十分な休養が必要です。特に激しい運動や重い物を持ち上げることは避けるべきです。 -
鼻腔内のケア
鼻腔内に出血が残る場合があるため、医師の指示に従って鼻腔を清潔に保つことが重要です。また、必要に応じて、鼻腔内の湿度を保つための薬を処方されることがあります。 -
定期的なフォローアップ
手術後は定期的に医師の診察を受け、手術後の経過を確認してもらうことが推奨されます。特に炎症や再発の兆候がないか、慎重にチェックすることが重要です。
結論
鼻腔内視鏡手術は、非常に効果的で安全な方法として、多くの鼻腔疾患に対して使用されています。慢性副鼻腔炎や鼻茸、鼻中隔弯曲など、さまざまな症例に対応できるこの手術は、患者の負担を最小限に抑えつつ、迅速な回復を促進するため、現代の耳鼻咽喉科において重要な役割を果たしています。しかし、手術には一定のリスクも伴うため、事前に医師との十分な相談と術後の適切なケアが求められます。