KVM(Kernel-based Virtual Machine)は、Linuxカーネル上で動作する仮想化ソリューションであり、仮想マシンを管理するための強力なツールです。仮想マシンを使用する場合、ストレージの管理は非常に重要であり、効率的なメディア管理が求められます。ここでは、KVM環境での仮想ストレージの管理方法について、完全かつ包括的に説明します。
1. KVMの基本的なストレージ管理
KVMは、仮想マシンごとに仮想ディスクを提供するため、仮想ディスクの作成、管理、マウントが必要です。KVMでは、仮想ディスクは通常、仮想マシンの仮想ハードディスクとして扱われます。これらのディスクは、以下の形式で提供されます。
- QCOW2(QEMU Copy On Write): 高度な機能を提供し、スナップショットや圧縮をサポートします。
- RAW: 最も単純で高速な形式で、特にパフォーマンスが要求される環境で利用されます。
- VMDK: VMwareのディスク形式で、他の仮想化環境との互換性が必要な場合に使用されます。
仮想ディスクの管理は、qemu-img
ツールを使って行います。このツールを使うことで、ディスクの作成、変換、クローン、スナップショット作成が可能です。
2. 仮想ストレージの作成
仮想マシンのストレージを作成するには、qemu-img
コマンドを使用します。例えば、QCOW2形式で20GBの仮想ディスクを作成する場合、以下のコマンドを実行します。
bashqemu-img create -f qcow2 /var/lib/libvirt/images/vm1_disk.qcow2 20G
このコマンドにより、vm1_disk.qcow2
という名前の20GBの仮想ディスクが作成されます。
3. 仮想ストレージの割り当て
作成した仮想ディスクを仮想マシンに割り当てるためには、仮想マシンの設定ファイルを編集します。KVMでは、仮想マシンの設定は通常XML形式で管理されています。virsh
コマンドを使用して仮想マシンの設定ファイルを編集し、仮想ディスクを割り当てます。
bashvirsh edit vm1
仮想マシンの設定ファイルが開いたら、
タグを追加して、作成した仮想ディスクを指定します。
xml<disk type='file' device='disk'>
<driver name='qemu' type='qcow2'/>
<source file='/var/lib/libvirt/images/vm1_disk.qcow2'/>
<target dev='vda' bus='virtio'/>
<address type='pci' domain='0x0000' bus='0x00' slot='0x04' function='0x0'/>
disk>
これにより、仮想マシンが再起動されると、新しい仮想ディスクが/dev/vda
として認識され、使用できるようになります。
4. ストレージの拡張
仮想ディスクの容量を後から拡張することもできます。たとえば、vm1_disk.qcow2
のサイズを40GBに変更するには、次の手順を実行します。
-
仮想マシンをシャットダウンします。
bashvirsh shutdown vm1
-
qemu-img
を使ってディスクサイズを変更します。bashqemu-img resize /var/lib/libvirt/images/vm1_disk.qcow2 +20G
-
仮想マシンを再起動し、ゲストOS側でパーティションの拡張を行います。
bashvirsh start vm1
-
ゲストOS側で新しいディスクサイズを認識し、必要に応じてファイルシステムを拡張します。
5. スナップショットの作成と管理
KVMでは、仮想ディスクのスナップショットを作成することができます。スナップショットを使用すると、特定の状態に戻すことができ、バックアップやテスト環境での利用に便利です。qemu-img
を使ってスナップショットを作成します。
bashqemu-img snapshot -c snapshot_name /var/lib/libvirt/images/vm1_disk.qcow2
スナップショットを管理するには、virsh snapshot
コマンドを使用します。例えば、仮想マシンvm1
のスナップショットを一覧表示するには、次のコマンドを使用します。
bashvirsh snapshot-list vm1
スナップショットを復元するには、次のコマンドを使用します。
bashvirsh snapshot-revert vm1 snapshot_name
6. 複数のストレージを使用した管理
KVMでは、複数の仮想ストレージを利用して仮想マシンのストレージを管理することもできます。たとえば、異なる物理ストレージデバイスを利用して、仮想マシンのデータを分散させることができます。これにより、I/Oパフォーマンスを向上させることが可能です。
仮想マシンに複数のディスクを割り当てるには、前述のXML設定ファイルに複数の
タグを追加します。
xml<disk type='file' device='disk'>
<driver name='qemu' type='qcow2'/>
<source file='/var/lib/libvirt/images/vm1_disk1.qcow2'/>
<target dev='vda' bus='virtio'/>
disk>
<disk type='file' device='disk'>
<driver name='qemu' type='qcow2'/>
<source file='/var/lib/libvirt/images/vm1_disk2.qcow2'/>
<target dev='vdb' bus='virtio'/>
disk>
これにより、仮想マシンvm1
に2つの仮想ディスク(vda
とvdb
)が割り当てられます。
7. ストレージプールの管理
KVMでは、ストレージプールを管理することもできます。ストレージプールは、仮想マシンのディスクイメージを格納するためのディレクトリやボリュームグループの集合体です。virsh
コマンドを使用してストレージプールを作成し、管理できます。
ストレージプールを作成するには、次のコマンドを使用します。
bashvirsh pool-create --name mypool --target /var/lib/libvirt/storage
ストレージプールを確認するには、次のコマンドを使用します。
bashvirsh pool-list --all
結論
KVMにおけるストレージの管理は、仮想マシンのパフォーマンスと可用性に大きな影響を与えます。適切なストレージ形式の選択、ディスクの拡張、スナップショットの作成、および複数のストレージデバイスの活用により、KVM環境でのストレージ管理は柔軟かつ効率的に行うことができます。管理者は、これらのツールと機能を駆使して、仮想化環境の最適化を図ることが求められます。