企業における従業員のエンゲージメント(参加感)は、企業の成功にとって非常に重要な要素となっています。しかし、このテーマには多くの誤解や神話が存在しています。この記事では、従業員エンゲージメントに関する6つの主要な誤解について、事実を基に正しい認識を深めていきます。
1. 従業員エンゲージメントは給料だけで決まる
よく「給料が高ければ従業員は満足し、エンゲージメントも高まる」と考えられがちです。しかし、実際には給料だけが従業員のエンゲージメントに影響を与えるわけではありません。もちろん、適切な報酬が従業員のモチベーションに影響を与えることは否定できませんが、エンゲージメントはその人の仕事へのやりがいや目的、企業文化、リーダーシップの質、キャリア成長の機会など、他にも多くの要因が影響します。単に金銭的な報酬だけでは、長期的なエンゲージメントを高めることは難しいのです。
2. エンゲージメント調査を一度行えば十分
多くの企業は年に一度、従業員エンゲージメント調査を実施し、その結果に基づいて改善策を考えます。しかし、これが一度きりで十分だと思うのは大きな誤解です。エンゲージメントは動的なものであり、従業員の気持ちは時間とともに変化します。そのため、定期的に調査を行い、常に状況を把握し、適切な対応をすることが重要です。調査結果を反映させた改善策を実行した後も、その後の状況を見守ることが不可欠です。
3. 高いエンゲージメントは全ての従業員に求められる
エンゲージメントが高いことは良いことのように思えますが、全ての従業員に同じレベルのエンゲージメントを求めるのは適切ではありません。従業員には多様な役割があり、各々に必要なエンゲージメントのレベルは異なります。例えば、ある従業員は職務に非常に情熱を持ち、組織に積極的に貢献しているかもしれませんが、他の従業員はその役割に対して一定のエンゲージメントを持っていれば十分です。そのため、全員に同じエンゲージメントを強制するのではなく、各従業員が自分に合ったレベルでエンゲージメントを発揮できるようサポートすることが求められます。
4. リーダーシップが変わらなければ、エンゲージメントも変わらない
従業員エンゲージメントはリーダーシップによって大きく影響されることは確かですが、リーダーシップが変わらない限りエンゲージメントも変わらないというのは誤りです。リーダーシップが改善されることでエンゲージメントが向上する場合もありますが、組織の文化や働き方の改善、コミュニケーションの質向上、従業員への評価やフィードバックの方法など、他にも多くの要因がエンゲージメントを変える可能性があります。リーダーシップはその中の一つの要素に過ぎません。
5. 高いエンゲージメントは必ずしも生産性の向上を意味する
エンゲージメントと生産性は確かに関連していますが、高いエンゲージメントが必ずしも生産性の向上を意味するわけではありません。エンゲージメントが高い従業員が必ずしも効率的に働くとは限らず、エンゲージメントの方向性や具体的な行動が生産性に結びつくかどうかが重要です。例えば、仕事に熱心すぎて過度なストレスを抱え込むことが逆に生産性を低下させる場合もあります。したがって、エンゲージメントの高さだけで生産性を判断するのは早計です。
6. エンゲージメントを高めるには褒めるだけで良い
エンゲージメントを高めるために「褒める」ことは効果的ですが、それだけでは不十分です。褒めることは従業員にポジティブなフィードバックを与える良い手段ですが、エンゲージメントを高めるためには、その人の成長をサポートし、チャレンジを与え、明確なビジョンや目標を共有し、自己実現の機会を提供することが必要です。また、従業員に対するフィードバックや評価は具体的であるべきで、ただの「良い仕事だったね」といった表面的なものではなく、何が良かったのかを具体的に示すことが重要です。
従業員エンゲージメントには多くの誤解があり、それに基づく対策が実際には効果を上げないことがあります。企業が真のエンゲージメントを高めるためには、従業員の多様なニーズに対応し、継続的に改善していくことが求められます。これらの誤解を解消し、より現実的で効果的なエンゲージメント施策を実行することが、企業の持続可能な成長につながるのです。