Router on Stick(ルーター・オン・スティック)とは、1つの物理的なルーターインターフェースを利用して、複数の仮想的なネットワーク(VLAN)間でルーティングを実現する技術です。この方法では、物理的なインターフェース1つを使って、仮想的に複数のVLANを管理します。具体的には、ルーターがVLAN間でパケットをルーティングし、異なるネットワークセグメント間での通信を可能にします。通常、この技術は、複数のネットワークを1台のルーターで管理したい場合に使用されます。
1. Router on Stick の仕組み
Router on Stickでは、通常、以下のようなセットアップが行われます:
- 物理インターフェース:1つの物理インターフェース(例えば、Gigabit Ethernetポート)を使い、そのインターフェース上に複数の仮想インターフェース(VLANインターフェース)を作成します。
- サブインターフェース:物理インターフェースはサブインターフェースに分割され、それぞれが異なるVLANを担当します。サブインターフェースは、インターフェースに対してIPアドレスを設定し、VLANごとのルーティングを可能にします。
この構成により、複数のVLAN間の通信を1台のルーターで処理することができ、物理的なインターフェース数を節約できます。
2. Router on Stick の利点
Router on Stickの最大の利点は、物理的なインターフェース数を減らし、1台のルーターで複数のVLANを効率的に管理できる点です。具体的な利点は以下の通りです:
- コスト削減:物理的なルーターインターフェースの数が減るため、機器の購入や管理のコストを削減できます。
- シンプルな構成:1台のルーターで複数のVLANを管理できるため、ネットワーク全体の構成がシンプルになり、運用管理が容易になります。
- 効率的なリソース利用:ネットワーク内のリソースを効率的に利用することができ、VLANごとの分離とルーティングを一元化できます。
3. Router on Stick の設定方法
Router on Stickを実装するには、以下の設定手順を踏むことが一般的です:
ステップ 1: VLAN の作成
最初に、VLANを作成します。例えば、VLAN 10とVLAN 20を作成する場合、スイッチ側で次のように設定します:
arduinoSwitch# configure terminal
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name Sales
Switch(config-vlan)# vlan 20
Switch(config-vlan)# name Marketing
このようにして、VLAN 10とVLAN 20が作成されます。
ステップ 2: スイッチのポート設定
次に、スイッチのポートをVLANに割り当てます。例えば、ポート1をVLAN 10、ポート2をVLAN 20に設定する場合、次のように設定します:
arduinoSwitch(config)# interface range fa0/1 - 2
Switch(config-if-range)# switchport mode access
Switch(config-if-range)# switchport access vlan 10
Switch(config-if-range)# exit
ポート1はVLAN 10に、ポート2はVLAN 20に割り当てられます。
ステップ 3: ルーターのサブインターフェース作成
次に、ルーター側でサブインターフェースを作成します。ルーターのインターフェースにVLANごとのIPアドレスを設定し、ルーティングを有効にします。例えば、GigabitEthernet0/0インターフェースにVLAN 10とVLAN 20を設定する場合、以下のように設定します:
arduinoRouter# configure terminal
Router(config)# interface gigabitEthernet 0/0.10
Router(config-if)# encapsulation dot1Q 10
Router(config-if)# ip address 192.168.10.1 255.255.255.0
Router(config-if)# exit
Router(config)# interface gigabitEthernet 0/0.20
Router(config-if)# encapsulation dot1Q 20
Router(config-if)# ip address 192.168.20.1 255.255.255.0
Router(config-if)# exit
これで、ルーターはVLAN 10とVLAN 20を担当する2つのサブインターフェースを持ち、それぞれ異なるIPアドレスを設定しました。
ステップ 4: ルーティングの有効化
VLAN間での通信を実現するために、ルーターにはルーティング機能を有効にする必要があります。特に、IPルーティングを有効にする設定は以下の通りです:
arduinoRouter(config)# ip routing
これにより、VLAN 10とVLAN 20の間でパケットをルーティングできるようになります。
4. Router on Stick の使用例
例えば、VLAN 10(Sales)とVLAN 20(Marketing)が異なるネットワークセグメントに存在し、互いに通信できるようにしたい場合、Router on Stickの設定を使用することができます。この場合、Sales部門のPCが192.168.10.0/24のIPアドレス範囲に、Marketing部門のPCが192.168.20.0/24のIPアドレス範囲に配置されているとします。各部門内のデバイス同士は同じVLAN内で通信できますが、異なるVLAN間の通信にはルーターを介する必要があります。
Router on Stickの設定により、Sales部門のPC(IPアドレス:192.168.10.10)とMarketing部門のPC(IPアドレス:192.168.20.10)が、ルーターを介して通信できるようになります。このようにして、物理的なインターフェースを1つだけ使用しながら、複数のVLAN間で効率的に通信が可能となります。
5. 注意点
Router on Stickを使用する際にはいくつかの注意点があります:
- パフォーマンスの問題:1つの物理インターフェースを使い回すため、トラフィック量が増加するとパフォーマンスに影響を与える可能性があります。特に、大規模なネットワークでは注意が必要です。
- 帯域幅の制限:物理インターフェースの帯域幅がボトルネックとなる可能性があり、帯域幅の要件に応じて適切なインターフェースの選択が求められます。
- 設定ミスのリスク:VLANの設定やサブインターフェースの設定ミスにより、通信ができない場合があります。設定後にはしっかりと動作確認を行うことが重要です。
結論
Router on Stickは、1つの物理インターフェースで複数のVLAN間の通信を可能にする効率的な技術です。特に、中小規模のネットワークでは非常に有用ですが、規模が大きくなるとパフォーマンスの問題に直面する可能性もあるため、使用する際には十分な計画が必要です。
