帝王切開(いわゆる「分娩切開」または「帝王切開手術」)は、赤ちゃんが母体から自然に生まれない場合に医師が行う外科的な手術です。通常、経膣分娩が難しい場合やリスクが高い場合に選択されます。この記事では、帝王切開の概要、その理由、手術の方法、リスク、回復過程、そしてその後の生活への影響について詳しく説明します。
帝王切開の歴史
帝王切開の歴史は非常に古く、古代から行われていたとされています。古代エジプトやローマ時代には、出産時に母親が命を落とすことが多かったため、命を救うために行われたとされています。しかし、当時は麻酔や消毒技術がなかったため、非常に危険な手術であり、母親が生き残ることは稀でした。

近代に入ると、麻酔技術の向上と手術の技術が進歩し、帝王切開が安全なものとなりました。20世紀中頃以降、帝王切開は非常に一般的な分娩方法となり、多くの命を救っています。
帝王切開が必要な理由
帝王切開が選ばれる主な理由は、母体または赤ちゃんにとって経膣分娩が危険な場合です。以下はそのいくつかの例です。
1. 母体に問題がある場合
- 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症):高血圧やタンパク尿などの症状が現れ、経膣分娩が母体の健康を危険にさらす可能性がある場合、帝王切開が選ばれることがあります。
- 糖尿病:妊娠糖尿病や既往の糖尿病がある場合、赤ちゃんが大きくなりすぎることがあり(過剰な胎児発育)、経膣分娩では難産になる可能性が高いです。
- 出血や感染症:母体に出血や感染症がある場合、帝王切開が必要になることがあります。
2. 赤ちゃんに問題がある場合
- 胎児の異常:赤ちゃんが逆子(臀位)や横位である場合、または胎児の発育が遅れている場合など、経膣分娩が難しい場合があります。
- 胎盤の異常:前置胎盤や胎盤早期剥離など、胎盤に異常がある場合、赤ちゃんの酸素供給が不足し、帝王切開が必要となることがあります。
- 臍帯の問題:臍帯が巻きついている場合や臍帯脱出が発生した場合、赤ちゃんの安全のために帝王切開が選ばれます。
3. 既往歴や過去の手術
- 過去の帝王切開歴:過去に帝王切開を経験したことがある女性では、再度帝王切開を選択することが多いです。これは、子宮に傷がついているため、経膣分娩にリスクが伴うためです。
- 骨盤の狭さ:骨盤が狭い、または赤ちゃんが大きすぎる場合、自然分娩では赤ちゃんが通れないことがあります。
帝王切開の手術方法
帝王切開は外科的な手術であり、麻酔を使用して行います。以下は、手術の一般的な流れです。
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麻酔の種類
帝王切開の際には、全身麻酔か局所麻酔(硬膜外麻酔や脊髄麻酔)が使用されます。局所麻酔が選ばれることが多いですが、母体や赤ちゃんの状態によっては全身麻酔が必要な場合もあります。 -
手術の準備
麻酔が効いた後、手術が始まります。腹部を消毒し、手術部位に切開を加えます。一般的には、下腹部の横に水平に切開が入れられますが、状況によっては縦に切開されることもあります。 -
赤ちゃんの取り出し
子宮の壁を切開した後、赤ちゃんを取り出します。この際、赤ちゃんが十分に酸素を供給されていることを確認するため、すぐに医師や看護師が赤ちゃんの状態をチェックします。 -
手術後の処置
赤ちゃんが取り出された後、臍帯を切り、母親の腹部を閉じていきます。切開部を縫合して手術は終了します。
帝王切開のリスクと合併症
帝王切開は多くの命を救う手術ですが、当然ながらリスクも伴います。主なリスクには以下のようなものがあります。
1. 母体のリスク
- 出血:手術中に大量の出血が発生することがあります。出血がひどい場合、輸血が必要になることもあります。
- 感染症:手術部位や子宮内で感染が起こる可能性があります。抗生物質で治療されますが、重症化することもあります。
- 血栓:手術後、特に長時間寝たきりになることがあるため、血栓が形成されるリスクがあります。これが肺に移動すると深刻な状況を招くこともあります。
2. 赤ちゃんのリスク
- 呼吸障害:帝王切開で生まれた赤ちゃんは、経膣分娩で生まれた赤ちゃんに比べて、呼吸器系に問題が出ることがあります。これは、羊水を肺に吸い込む機会が少ないためです。
- 外科的損傷:稀に、手術中に赤ちゃんに傷がつくことがあります。
帝王切開後の回復と生活
帝王切開後、母親の回復には時間がかかります。通常、入院期間は経膣分娩よりも長くなり、約4〜7日程度の入院が必要です。手術後の傷口のケアや痛みの管理が重要です。
1. 回復期間
- 痛み管理:帝王切開後、腹部や子宮の痛みが続くことがあります。医師は鎮痛剤を処方し、痛みを和らげます。
- 身体的回復:手術後、体力を回復させるために、徐々に歩行を始め、軽い運動を行うことが推奨されます。
2. 心理的な影響
帝王切開は、計画的に行われる場合と緊急で行われる場合があり、後者の場合、母親は精神的に大きなショックを受けることがあります。手術を受けることに対する不安や恐れが強くなることもあります。
3. 次回の出産に与える影響
帝王切開を経験した女性は、次回の出産でも帝王切開を選択する場合が多いですが、経膣分娩(VBAC)を試みることも可能です。ただし、前回の帝王切開の種類や母