EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)は、ネットワーク上のルーター間で動的な経路選択を行うためのプロトコルです。このプロトコルは、Ciscoによって開発され、IGRP(Interior Gateway Routing Protocol)の拡張版として機能します。EIGRPは、迅速で効率的なルーティングを提供し、主に大規模な企業ネットワークで利用されます。この記事では、EIGRPのトラブルシューティング方法と、関連するコマンドについて説明します。
EIGRPのトラブルシューティングの基本
EIGRPのトラブルシューティングを行うためには、まずネットワーク全体の構成と動作を理解することが重要です。EIGRPは、ルーティングテーブルの交換、Helloパケットの送信、DUL(デスティネーションアップデートロギング)などを行う際に、複数の状態やコマンドを通じて診断を行うことができます。
1. ネットワーク構成の確認
EIGRPのトラブルシューティングを行う最初のステップは、ネットワークの基本的な構成を確認することです。ルーターがEIGRPを正しく構成しているか、必要なインターフェースでEIGRPが有効になっているかをチェックします。以下のコマンドを使って確認できます。
bashshow running-config
このコマンドは、現在の実行中の設定を表示します。EIGRPが正しく構成されているか、特にルーティングプロトコルとして「router eigrp」が表示されているか確認しましょう。
bashshow ip protocols
このコマンドは、EIGRPの詳細な設定情報を表示します。EIGRPがアクティブであるインターフェースや、ネイバー関係が正常かどうかも確認できます。
2. EIGRPのネイバー関係の確認
EIGRPは、隣接するルーターとの「ネイバー関係」を確立する必要があります。ネイバー関係が正常でないと、経路情報の交換が行われず、ルーティングが正常に動作しません。ネイバー関係が正しく確立されているかどうかを確認するには、次のコマンドを使用します。
bashshow ip eigrp neighbors
このコマンドにより、現在EIGRPネイバーとして認識されているルーターのリストが表示されます。もしネイバーリストに表示されない場合は、以下の点を確認します。
- EIGRPが有効になっているインターフェースで通信が可能か。
- ネイバー同士のIPアドレス設定が一致しているか。
- 双方向の通信ができるか(ACLやファイアウォールによるブロックがないか)。
3. EIGRPのデバッグ
EIGRPの動作や問題の詳細な情報を取得するためには、デバッグコマンドを使用します。これにより、EIGRPがどのように動作しているのか、エラーメッセージやトラブルの発生地点を特定することができます。
bashdebug eigrp packets debug eigrp events
これらのコマンドを使用することで、EIGRPが送信するパケットやイベントをリアルタイムで確認できます。ただし、デバッグはネットワーク上で大量のログを生成することがあるため、適切なタイミングで使用することが重要です。
4. EIGRPの経路選択の確認
EIGRPは、メトリックを基に最適な経路を選択します。選択された経路が正しいかどうかを確認するためには、次のコマンドを使用します。
bashshow ip route eigrp
このコマンドでは、EIGRPが選択した経路のリストが表示されます。特に、経路のメトリック値(帯域幅、遅延など)を確認することが重要です。もし予期しない経路が選ばれている場合、メトリックの設定が誤っている可能性があります。
5. EIGRPのタイマー設定の確認
EIGRPでは、HelloタイマーやHoldタイマーが設定されています。これらのタイマー設定が不適切な場合、ネイバー関係が切断されることがあります。タイマー設定を確認するためには、次のコマンドを使用します。
bashshow ip eigrp interfaces
このコマンドでは、EIGRPインターフェースごとのタイマー情報が表示されます。タイマーが適切に設定されているか、また、隣接するルーターと一致しているかを確認しましょう。
EIGRPのトラブルシューティングに使用する主なコマンド
EIGRPのトラブルシューティングに役立つコマンドをいくつか紹介します。これらのコマンドは、EIGRPの状態や動作を詳しく確認するために頻繁に使用されます。
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show ip eigrp neighbors
ネイバー関係の確認に使用します。隣接するルーターの状態やIPアドレス、保持しているタイマーの値などを確認できます。 -
show ip eigrp topology
EIGRPのトポロジーテーブルを表示します。これにより、EIGRPが知っているすべての経路を確認でき、最適な経路が選択されているかを確認できます。 -
show ip eigrp traffic
EIGRPのトラフィック統計情報を表示します。送信および受信されたパケットの数を確認できます。 -
show ip route eigrp
EIGRPが選択したルーティングテーブルのエントリを表示します。選択された経路が予期した通りかを確認します。 -
debug eigrp packets
EIGRPパケットの送受信をデバッグします。EIGRPのパケットがどのように送信されているかを詳細に確認できます。 -
debug eigrp events
EIGRPのイベントをデバッグします。これにより、EIGRPの状態変化やエラーメッセージをリアルタイムで確認できます。
トラブルシューティングの実践的な手順
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ネイバー関係の確認
show ip eigrp neighborsコマンドで隣接ルーターのリストを確認し、ネイバー関係が正しく確立されているかを確認します。 -
ルーティングテーブルの確認
show ip route eigrpコマンドを使用して、EIGRP経由で学習した経路がルーティングテーブルに存在するかを確認します。 -
メトリックとタイマーの確認
show ip eigrp topologyでメトリック値を確認し、異常があればメトリック設定を見直します。また、show ip eigrp interfacesでタイマー設定を確認します。 -
デバッグの実行
問題が解決しない場合、debug eigrp packetsやdebug eigrp eventsコマンドを使用して、EIGRPの動作を詳しく調査します。
結論
EIGRPのトラブルシューティングは、基本的な設定確認から始まり、詳細なデバッグまで様々なステップを踏む必要があります。EIGRPは非常に強力で柔軟なプロトコルですが、正しく構成されていないと問題を引き起こすことがあります。上記のコマンドと手順を活用し、問題の原因を迅速に特定し、解決することができます。
