EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)は、Cisco製のルーティングプロトコルで、内部ネットワークにおける動的ルーティングの効率的な管理を目的として設計されています。EIGRPは、RIP(Routing Information Protocol)やOSPF(Open Shortest Path First)といった他のプロトコルと比べて、より優れたパフォーマンスとスケーラビリティを提供します。その中心的な要素の一つが、ルート選択のために使用されるメトリックの計算方法です。本記事では、EIGRPにおけるメトリックの詳細な計算方法について説明します。
EIGRPのメトリックとは?
EIGRPでは、ネットワーク内で最適なルートを決定するために「メトリック」と呼ばれる数値を使用します。このメトリックは、最適なルートを選定するために複数の要素を考慮し、各ルートの優先度を決定します。EIGRPのメトリックは、次の4つの要素から構成されます。

- 帯域幅(Bandwidth)
- 遅延(Delay)
- 信頼性(Reliability)
- 負荷(Load)
これらの要素は、ネットワーク内の経路のパフォーマンスを示す指標として機能します。EIGRPはこれらの要素を総合的に評価し、最も優れた経路を選択します。
メトリックの計算方法
EIGRPのメトリックは、次の数式に基づいて計算されます。
メトリック=(帯域幅107+遅延)×256
この計算式において、帯域幅と遅延は次のように扱われます。
- 帯域幅は、ネットワークリンクの最大転送速度を示します。帯域幅が高いほど、その経路は速いと見なされます。
- 遅延は、データがネットワークを通過するのにかかる時間を示します。遅延が低いほど、データ転送が高速であると見なされます。
帯域幅と遅延
帯域幅と遅延は、EIGRPにおけるメトリック計算の最も重要な要素です。
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帯域幅: EIGRPは、経路上で最も低い帯域幅を使用してメトリックを計算します。例えば、1Gbpsのリンクと100Mbpsのリンクがあれば、メトリック計算において100Mbpsの帯域幅が使用されます。このように、最小帯域幅を考慮することで、ネットワーク全体のスループットを最適化します。
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遅延: EIGRPは、各ルーターに設定された遅延値を使用してメトリックを計算します。遅延は通常、マイクロ秒単位で指定されます。ネットワークにおいて遅延が大きいほど、データの伝送が遅くなるため、メトリックが大きくなります。
信頼性と負荷
信頼性と負荷は、帯域幅と遅延ほど頻繁には使用されませんが、特定の条件下では重要な役割を果たします。
- 信頼性: この要素は、リンクがどれだけ安定しているかを示します。リンクの信頼性が高いほど、その経路は好まれます。
- 負荷: この要素は、リンクの現在のトラフィック負荷を示します。負荷が低ければ低いほど、その経路は好まれます。
メトリックの調整
EIGRPでは、デフォルトのメトリック計算式を変更することができます。特に、帯域幅や遅延の値を調整することで、特定の経路を優先するようにルーティングをカスタマイズできます。これには、ip bandwidth
やdelay
コマンドを使用して、各インターフェースのパラメーターを設定します。また、メトリックの調整を通じて、ネットワーク管理者は経路選択の挙動をより細かく制御することができます。
メトリックの実例
具体的な例として、以下の条件を考えた場合のEIGRPのメトリック計算を示します。
- 帯域幅: 100 Mbps
- 遅延: 1000 マイクロ秒
この場合、メトリックの計算は次のようになります。
- 帯域幅の計算: 100×106107=100
- 遅延の計算: 1000
- メトリック計算: (100+1000)×256=112,896
このようにして得られたメトリック値が、EIGRPによってルート選択に使用されます。
結論
EIGRPにおけるメトリックは、ネットワークの性能を最適化するために非常に重要です。帯域幅と遅延を基にしたメトリック計算は、ルーティングの選択肢を決定し、ネットワークの効率性を最大化します。信頼性や負荷などの他の要素も、特定の状況でメトリックの調整に寄与するため、ネットワーク管理者はこれらを適切に理解し、最適な設定を行うことが求められます。EIGRPのメトリック計算を十分に理解することで、より優れたネットワークパフォーマンスを実現することができるでしょう。