深部静脈血栓症(DVT: Deep Vein Thrombosis)は、足の深部静脈に血栓ができる疾患で、血流を妨げ、場合によっては生命を脅かすこともあります。主に下肢、特にふくらはぎや大腿部の静脈に血栓が形成されることが多いですが、適切に管理しないと血栓が肺に移動して肺塞栓症を引き起こす危険があります。以下では、深部静脈血栓症の症状、原因、診断方法、治療法、予防策について詳しく解説します。
深部静脈血栓症(DVT)の概要
深部静脈血栓症とは、血液が正常に流れないことにより、血液が静脈内で凝固し、血栓が形成される疾患です。これが下肢の深部静脈に起こると、血栓が血流を阻害し、さまざまな症状を引き起こします。特に、血栓が肺に移動することで生命を脅かす肺塞栓症を引き起こす可能性があり、DVTは無視できない重要な疾患です。
症状
DVTの症状は個人によって異なりますが、最も一般的な症状には以下のものがあります:
- 脚の腫れ: 血栓が血流を遮断することで、足に腫れが生じます。
- 痛みや圧痛: 血栓ができている部位に痛みや圧痛を感じることがあります。
- 赤みや暖かさ: 血栓ができた部分の皮膚が赤くなったり、熱を帯びることがあります。
- 足のむくみ: 血液が逆流することにより、足全体にむくみが見られることがあります。
- 足の重さや疲れやすさ: 血液の流れが悪くなることで、足が重く感じたり、歩くことが困難になることがあります。
ただし、DVTが進行しても無症状のままである場合もあります。そのため、血栓の発生を早期に発見することが重要です。
原因とリスク因子
DVTの発症にはさまざまな要因が関与しており、主に以下の3つの因子によって引き起こされます:
- 血液の凝固: 血液が凝固しやすくなる状態(例:遺伝的要因や、ホルモン治療、妊娠など)は血栓を形成しやすくします。
- 血流の遅延: 長時間の安静(例えば、長時間の飛行機移動や入院)や、下肢を動かさない状態が続くと、血流が遅くなり、血栓ができやすくなります。
- 血管の損傷: 手術や外傷、静脈の炎症などによって血管が傷つくと、その部分で血栓が形成されやすくなります。
さらに、以下のリスク因子がDVTの発症に関与します:
- 加齢: 高齢者は血管が弱くなり、血栓ができやすくなります。
- 肥満: 体重が重いと血液の流れが悪くなり、DVTのリスクが高まります。
- 喫煙: 喫煙は血管を収縮させ、血液の流れを悪化させます。
- 家族歴: DVTの家族歴がある場合、遺伝的な要因で血栓ができやすくなります。
- ホルモン療法や経口避妊薬の使用: 特に女性に多いリスク因子です。
- 妊娠: 妊娠中はホルモンの影響で血栓ができやすくなることがあります。
診断方法
DVTの診断には、臨床的な評価といくつかの検査が用いられます。
- 身体検査: 患者の症状やリスク因子を確認します。医師は腫れや圧痛の確認を行います。
- ダイモル・スコア: DVTのリスクを評価するためのスコアで、患者の症状や過去の病歴などを基にスコアリングを行います。
- 超音波検査(エコー): 静脈に血栓が存在するかどうかを確認するために、最も一般的に使用される検査です。
- Dダイマー検査: 血液中のDダイマーという物質を測定します。Dダイマーは血栓が溶解される際に放出されるため、血栓の存在を示唆する指標となります。
- CTスキャンやMRI: 必要に応じて、より詳細な画像検査が行われることもあります。
治療法
DVTの治療は、血栓の拡大を防ぎ、肺塞栓症のリスクを減少させることを目的としています。主な治療方法には以下のものがあります:
- 抗凝固療法: 血液をサラサラにする薬を使って、血栓の形成を防ぎます。代表的な薬剤にはヘパリンやワルファリン、最近では新しい抗凝固薬(NOACs)も使用されます。
- 圧迫ストッキング: 足の腫れを軽減し、血液の循環を改善するために、圧迫ストッキングを着用することが推奨されます。
- 血栓摘出術: 重症の場合や抗凝固療法が効かない場合、血栓を直接除去する手術が行われることがあります。
- カトーテル治療: 血栓を溶解するための薬物を直接血栓に注入する方法です。
予防策
DVTは予防することが可能です。特に長時間の座位や安静を強いられる場合に予防が重要です。以下の方法でDVTを予防することができます:
- 適度な運動: 長時間座っている場合でも、定期的に足を動かすことで血液の流れを改善できます。
- 圧迫ストッキングの使用: 特に手術後や長時間の移動中に使用すると効果的です。
- 十分な水分補給: 脱水症状を避けることで、血液が濃縮するのを防ぎます。
- 薬物療法: リスクが高い患者には、予防的に抗凝固薬を投与することがあります。
結論
深部静脈血栓症(DVT)は、放置すると重大な合併症を引き起こす可能性がありますが、早期に発見し、適切な治療を行うことで予防や管理が可能です。リスク因子を理解し、日常生活での予防策を取り入れることで、この疾患を未然に防ぐことができます。特に、長時間の移動や入院などで安静を強いられる際には、積極的な予防が求められます。

