医学と健康

副甲状腺機能亢進症の理解

副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう、Hyperparathyroidism)は、副甲状腺が異常に活発に働き、過剰な副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌する状態を指します。副甲状腺は、甲状腺の近くにある4つの小さな内分泌腺で、主に血中カルシウム濃度の調節を担当しています。この疾患は、血液中のカルシウムレベルの異常を引き起こし、骨、腎臓、神経系にさまざまな影響を及ぼします。副甲状腺機能亢進症は、原発性、続発性、そして三次性の3つに分類され、それぞれ異なる原因と治療法があります。

原発性副甲状腺機能亢進症

原発性副甲状腺機能亢進症は、最も一般的なタイプであり、副甲状腺そのものの病気が原因で発症します。この疾患は、副甲状腺が過剰にホルモンを分泌することによって引き起こされ、血液中のカルシウム濃度を異常に高くします。原発性副甲状腺機能亢進症の約85%は、良性腫瘍(副甲状腺腺腫)によって引き起こされます。残りの15%は、副甲状腺の過形成や稀に悪性腫瘍に関連しています。

症状

原発性副甲状腺機能亢進症の症状は、過剰なカルシウムの影響により多岐にわたります。具体的には、以下のような症状が現れます:

  • 骨の問題: 高カルシウム血症は骨からカルシウムを引き出し、骨を弱くし、骨折のリスクを高めます(骨粗鬆症)。

  • 腎臓の問題: 高カルシウム血症は腎臓に負担をかけ、腎結石を引き起こすことがあります。また、長期的には腎不全を引き起こすこともあります。

  • 消化器系の症状: 食欲不振、嘔吐、便秘などが見られることがあります。

  • 神経系の症状: 神経系にも影響があり、頭痛、疲労感、抑うつ、注意力の低下、記憶障害などが見られることがあります。

  • 筋肉の問題: 筋力の低下や筋肉の痛みを感じることがあります。

診断

診断は、血液検査によって行われます。特に、血中カルシウム濃度とPTH濃度の測定が重要です。PTHが高く、カルシウムも高い場合、原発性副甲状腺機能亢進症が疑われます。さらに、骨密度測定や腎機能検査が行われることがあります。

治療

原発性副甲状腺機能亢進症の治療の基本は、手術による腺腫の摘出です。副甲状腺腺腫が原因の場合、その腺腫を切除することで症状が改善されることがほとんどです。手術ができない場合や、手術が困難な場合には、薬物治療が行われることがあります。ビスフォスフォネート(骨の再吸収を抑制する薬)やカルシウムの調整を行う薬が使用されることがあります。

続発性副甲状腺機能亢進症

続発性副甲状腺機能亢進症は、原発的な副甲状腺疾患ではなく、他の病気に起因するものです。この状態は、腎不全が最も一般的な原因です。腎不全によってカルシウムの代謝が乱れ、副甲状腺が異常に活発になります。腎不全が進行することで、カルシウムとリンのバランスが崩れ、副甲状腺が過剰にホルモンを分泌し、血液中のカルシウム濃度を調整しようとします。

症状

続発性副甲状腺機能亢進症の症状は、主に腎不全やその結果として起こるカルシウムとリンの不均衡に関連しています。腎機能が低下することで、体内のカルシウムが正常に調整できなくなり、骨の痛みや骨密度の低下、腎臓病の進行が見られます。

診断

続発性副甲状腺機能亢進症の診断も血液検査が基本です。PTHが高く、カルシウムが正常または低い場合にこの状態が示唆されます。また、腎機能の検査やリンの濃度も重要な診断指標です。

治療

続発性副甲状腺機能亢進症の治療には、原因となっている疾患の管理が最優先です。腎不全が原因である場合、透析治療が行われることがあります。さらに、カルシウムの摂取制限やリンの低減、ビタミンDの補充などが行われ、PTHのレベルを正常化することが目指されます。

三次性副甲状腺機能亢進症

三次性副甲状腺機能亢進症は、続発性副甲状腺機能亢進症が長期にわたって続くことによって発生します。続発性副甲状腺機能亢進症の治療によってPTHの分泌は改善されるはずですが、長期にわたって過剰なホルモン分泌が続いた結果、副甲状腺が異常に拡大し、自己制御が効かなくなることがあります。

症状と診断

三次性副甲状腺機能亢進症は、PTHが極端に高くなることで診断されます。症状としては、原発性の副甲状腺機能亢進症と類似の症状が見られますが、より深刻な症状が出ることがあります。

治療

三次性副甲状腺機能亢進症の治療には、副甲状腺の一部またはすべてを摘出する手術が推奨されることが一般的です。これにより、過剰なPTHの分泌を抑えることができます。

まとめ

副甲状腺機能亢進症は、血中カルシウム濃度を異常に高くする疾患であり、その原因によって治療法が異なります。原発性副甲状腺機能亢進症は腺腫によって引き起こされ、手術によって治療が行われます。続発性副甲状腺機能亢進症は腎不全などが原因となり、原因疾患の治療が中心です。三次性副甲状腺機能亢進症は、長期間にわたる続発性副甲状腺機能亢進症によって引き起こされ、副甲状腺摘出手術が行われます。いずれのタイプでも、早期の診断と適切な治療が重要です。

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