胃に感染する「胃の細菌(ヘリコバクター・ピロリ)」は、胃潰瘍や胃炎、さらには胃がんといった深刻な病気の原因となることがあります。感染の初期段階では、症状が現れにくいため、自覚症状がないまま感染が進行することが多いです。そのため、ヘリコバクター・ピロリ感染症を早期に発見し、適切に対処することが重要です。本記事では、ヘリコバクター・ピロリに感染した場合の症状、診断方法、予防法などについて詳しく解説します。
ヘリコバクター・ピロリとは?
ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)は、胃の粘膜に生息する細菌で、主に口から感染します。感染者の多くは、自覚症状を示さないことが特徴ですが、一部の人々では胃炎や胃潰瘍を引き起こし、さらに深刻な場合には胃がんに進行することもあります。この細菌は、胃の酸性環境に耐え、胃の内壁に感染する能力を持っています。
ヘリコバクター・ピロリ感染症の症状
ヘリコバクター・ピロリに感染した場合、以下のような症状が現れることがあります。ただし、感染していても症状がないことも多いため、注意深く観察する必要があります。
1. 胃の痛み
感染が進行すると、胃の内壁に炎症が生じ、胃痛が現れることがあります。特に食後に痛みが強くなることがあります。
2. 膨満感や胃の不快感
食後に満腹感が長く続く、または胃が膨らんだ感じがすることがあります。これは、胃が正常に機能していないためです。
3. 吐き気や嘔吐
胃の粘膜に炎症が起きると、吐き気や実際に嘔吐を伴うことがあります。胃の不快感が強くなると、この症状も現れることがあります。
4. 食欲不振
食事を取る気が起きない、または食事の後に気持ち悪くなることがあります。これも胃の状態が悪化しているサインです。
5. 胃酸過多
ヘリコバクター・ピロリに感染すると、胃酸の分泌が過剰になることがあります。これにより胸焼けや酸っぱい胃内容物が逆流する症状(逆流性食道炎)が発生することもあります。
6. 黒色便や血便
胃潰瘍が進行すると、胃の内壁が傷つき出血することがあります。この場合、便が黒くなることがあり、これは消化された血液が便に含まれているためです。
ヘリコバクター・ピロリ感染症の診断方法
ヘリコバクター・ピロリの感染を確認するためには、いくつかの検査方法があります。診断が遅れると、胃の状態が悪化し、重大な病気に進行する可能性があるため、早期の検査が重要です。
1. 呼気テスト(尿素呼気テスト)
呼気テストは、ヘリコバクター・ピロリが胃の中で分解する尿素を利用して感染を検出する方法です。感染している場合、特定の化学物質を呼気中で検出することができます。
2. 血液検査
血液検査を行うことで、ヘリコバクター・ピロリに対する抗体があるかどうかを調べることができます。抗体が検出された場合、過去または現在の感染を示唆しますが、現在の感染状況を正確に知るためには他の検査も必要です。
3. 便検査
便検査によって、ヘリコバクター・ピロリの存在を直接確認することができます。便中に含まれるヘリコバクター・ピロリのDNAを検出する方法です。
4. 胃カメラ(内視鏡検査)
胃カメラを使った内視鏡検査では、胃の内部を直接確認でき、必要に応じて組織検査を行うことができます。これにより、胃の炎症の状態や潰瘍の有無を確認することができます。
ヘリコバクター・ピロリ感染症の治療法
ヘリコバクター・ピロリに感染した場合、適切な治療が必要です。治療は主に薬物療法によって行われます。
1. 抗生物質
ヘリコバクター・ピロリを除去するためには、抗生物質を使った治療が行われます。通常、複数の抗生物質を組み合わせて使用し、細菌を完全に排除することが目標です。
2. 胃酸抑制薬
胃酸の分泌を抑える薬剤(プロトンポンプインヒビターなど)を使用することで、胃の粘膜を保護し、細菌による炎症を軽減します。
3. 治療後の再検査
治療後は、再度検査を行い、ヘリコバクター・ピロリが完全に排除されているかを確認することが推奨されます。
ヘリコバクター・ピロリ感染症の予防法
ヘリコバクター・ピロリ感染症を予防するためには、基本的な衛生管理が大切です。
1. 手洗いを徹底する
食事前やトイレ後には、必ず手を洗うことが重要です。特に感染源となる可能性のある食べ物や水を触った後には、手洗いを徹底しましょう。
2. 清潔な食生活を心がける
生水や不衛生な状態で調理された食材を避けることで、感染のリスクを減らすことができます。
3. 飲食物の加熱処理をしっかり行う
食品を十分に加熱し、細菌が死滅するようにします。
4. 衛生的な調理器具の使用
食品を扱う際には清潔な調理器具を使用し、食材に細菌が付着しないようにすることが重要です。
まとめ
ヘリコバクター・ピロリ感染症は、早期に発見し治療することが重要です。感染の初期には症状がない場合が多いため、定期的な検査が大切です。もし胃の不調を感じた場合は、早めに医師の診察を受け、適切な検査を行うことをお勧めします。感染が確認された場合は、指示に従って治療を行い、再発を防ぐためにも予防を徹底しましょう。
