多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、女性に多く見られるホルモンの不均衡によって引き起こされる状態で、月経不順、不妊、体重増加、肌の問題(例えばニキビや過剰な体毛)などの症状を引き起こすことがあります。特に結婚している女性にとって、PCOSの治療は非常に重要です。治療方法には薬物療法、生活習慣の改善、さらには手術的治療までさまざまなアプローチがあります。
1. 薬物療法
(1) ホルモン治療
PCOSに伴う月経不順や排卵障害に対して最も一般的に用いられる治療法はホルモン治療です。ピルやホルモン注射などが処方されることがあります。これにより、月経周期を安定させ、排卵を促進することができます。また、ピルは過剰な体毛の抑制や肌の改善にも効果があります。

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経口避妊薬(ピル):ホルモンを調整することで、月経不順を改善し、過剰な体毛の成長やニキビの発生を抑制します。月経周期を安定させることもできます。
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プロゲステロン療法:排卵を誘発するために使われることがあり、これによって月経が正常に戻ることが期待されます。
(2) 排卵誘発剤
妊娠を希望する女性には、排卵を誘発するための薬物が処方されることがあります。これにより、排卵が促進され、妊娠しやすくなることがあります。代表的な薬には「クロミフェン」や「ゴナドトロピン」があります。
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クロミフェン:PCOSによる排卵障害を持つ女性に対して、排卵を促進するために使用される薬です。
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ゴナドトロピン:クロミフェンに反応しない場合、排卵を促進するために用いられる注射薬です。
(3) インスリン感受性薬
PCOSの女性にはインスリン抵抗性が高いことがよくあります。インスリン抵抗性を改善する薬剤(例えば「メトホルミン」)は、PCOSの症状の軽減に役立つことがあります。メトホルミンは、インスリンの働きを改善し、体重減少や排卵の正常化をサポートします。
2. 生活習慣の改善
(1) ダイエットと運動
体重管理はPCOSの治療において非常に重要です。過剰な体脂肪はホルモンのバランスに悪影響を与えるため、減量が推奨されます。特に低炭水化物ダイエットや、インスリン感受性を改善する食事が効果的です。運動はインスリン感受性を改善し、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。
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有酸素運動:ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動は、体重減少に加えてインスリン感受性を改善します。
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筋力トレーニング:筋力トレーニングは、筋肉量を増やし、代謝を向上させる効果があります。
(2) ストレス管理
PCOSに伴うホルモンバランスの乱れは、ストレスによって悪化することがあります。ストレスを減らすためには、リラクゼーション法や瞑想、ヨガなどの実践が有効です。心身の健康を保つことが、PCOSの症状改善に繋がります。
3. 不妊治療
妊娠を希望する場合、PCOSに伴う不妊治療が必要なことがあります。治療方法には、薬物療法や人工授精(AIH)、体外受精(IVF)などが含まれます。特に、排卵誘発剤を使った治療が最初に行われることが多いですが、それでも妊娠が難しい場合には体外受精などの高度な不妊治療が考慮されます。
(1) 排卵誘発剤
クロミフェンやゴナドトロピンを使用して排卵を促進し、妊娠を目指す治療です。
(2) 人工授精(AIH)
排卵誘発に加えて、精子を直接子宮に注入する方法です。
(3) 体外受精(IVF)
他の治療法がうまくいかない場合、体外で卵子と精子を受精させ、胚を子宮に戻す方法です。これは非常に効果的な方法ですが、コストや心理的負担が高いこともあります。
4. 手術療法
薬物療法や生活習慣の改善で効果が見られない場合、手術療法が考慮されることがあります。最も一般的な手術は「卵巣の穿刺手術(オボラプラスティ)」です。この手術では、卵巣内の多嚢胞を破壊することで、排卵が正常に戻ることが期待されます。
5. 心理的サポート
PCOSの症状は、外見や生理的な問題だけでなく、心理的な影響を与えることがあります。女性が感じるストレスや不安、自己肯定感の低下に対して、心理的なサポートやカウンセリングを受けることも治療の一環として重要です。
まとめ
PCOSは、女性のホルモンバランスに影響を与える複雑な疾患であり、治療には薬物療法、生活習慣の改善、不妊治療、さらには手術療法まで多岐にわたるアプローチがあります。結婚している女性にとっては、妊娠を望む場合も多いため、排卵誘発や不妊治療が特に重要となります。治療方法は一人ひとりの症状や希望に合わせて異なるため、専門医の指導を受けることが非常に重要です。