観光名所

ターフの見どころ完全ガイド

サウジアラビア王国の西部に位置する都市、**ターイフ(الطائف、ターイフ)**は、「バラの都」として知られ、その涼しい気候、美しい自然、歴史的建造物、そして宗教的・文化的な重要性により、年間を通じて国内外から多くの観光客を魅了している。本稿では、ターイフの主要な観光名所を科学的・歴史的・文化的観点から詳細に考察し、地理的特徴、経済的意義、そして現代における役割について包括的に論じる。


地理と気候:避暑地としての地位

ターイフは紅海沿岸に広がるヒジャーズ山脈の高地(標高1,800メートル以上)に位置している。この標高のため、夏季の平均気温は摂氏20〜30度と比較的穏やかであり、他の内陸都市が極端な暑さに晒される中、ターイフはサウジアラビアにおける「夏の首都」としての役割を果たしている。さらに、この気候は農業にとって理想的であり、特にバラ栽培が盛んである。


ターイフの象徴:シャムスィーヤ・ローズ(ターイフローズ)

ターイフの名を国際的に有名にしているのが「ターイフローズ」と呼ばれるバラである。学名Rosa damascena trigintipetalaとされるこの品種は、特有の芳香を持ち、4月から5月にかけて開花する。ターイフにはバラ農園が数十ヵ所存在し、バラ水やバラ油の抽出工場も稼働している。これらの抽出物は、高級香水や化粧品の原料として使用され、ヨーロッパやアジア市場への輸出も行われている。

バラ製品の種類 用途 市場価値(参考)
バラ水 飲料、化粧品、料理 5〜10米ドル/500ml
バラ油 香水、アロマセラピー 約2,000米ドル/kg
乾燥バラ花弁 装飾、入浴剤、漢方 20〜50米ドル/kg

このバラに関連する年中行事として「ターイフ・ローズ・フェスティバル」が毎年春に開催され、観光客や専門家が一堂に会する。


宗教的および歴史的遺産

ターイフは、イスラーム以前からの重要な交易都市として栄えてきた。預言者ムハンマドがメッカからの布教活動の一環として訪れたことでも知られ、その際に受けた歓迎と迫害が『ハディース』やイスラーム史の文献に記録されている。

シャラフ・アット=ターイフ・モスク(مسجد عبد الله بن عباس)

ターイフの中心部にあるこのモスクは、預言者ムハンマドのいとこであるアブドッラー・イブン・アッバースの墓所に建てられており、巡礼者にとって重要な訪問地である。建築は伝統的なアラビア様式で、幾何学模様と装飾的アーチが特徴である。

アル=カスル・アル=ムーター(القصور)

ターイフ周辺には19世紀から20世紀初頭に建てられた貴族の邸宅が点在している。中でも有名なのがシャーバーン王宮であり、現在では博物館として一般公開されている。王族の避暑地として使われた歴史を持ち、当時の家具や調度品がそのまま保存されている。


自然景観とエコツーリズムの可能性

ターイフの自然環境はサウジアラビアにおいて特異な存在である。オアシスや渓谷、山岳地帯に囲まれ、多様な生物相が観察される。以下はその代表的な自然観光地である。

アッ=シャファ高原(الشفا)

標高2,400メートルのこの高原は、絶景スポットとして観光客に人気がある。気温がさらに低く、ハイキング、パラグライダー、ロッククライミングなどのアクティビティが行われる。アカシアの木々や野生のカモシカ、レバノン杉のような針葉樹も見られる。

アル=ハダ山道(الهدا)

メッカからターイフへ向かう山岳道路であり、急勾配のカーブと絶壁に沿って走るドライブルートは冒険者や風景写真家にとって魅力的である。また、道路沿いにはケーブルカーも整備されており、山頂からは広大な谷と市街地のパノラマが望める。


観光とインフラ開発の現状

サウジアラビア政府は「ビジョン2030」に基づき、観光産業の多様化を目指してターイフへの投資を拡大している。これには新空港(ターイフ国際空港)の建設、高速道路網の整備、スマート観光案内所の設置などが含まれる。

観光客数の推移(推定):

年度 観光客数(国内外合計)
2015年 約80万人
2018年 約110万人
2022年 約150万人
2024年 約200万人(予測)

また、政府主導の文化観光促進プログラムにより、地元住民によるガイドツアー、伝統工芸体験、料理ワークショップなどが開催されており、観光と地域経済の結びつきが強化されている。


食文化と地元の名物料理

ターイフの食文化はヒジャーズ地方の影響を受け、香辛料とハーブをふんだんに使った豊かな味わいが特徴である。特に以下の料理が訪問者に人気である。

  • マンダィ(Mandi):香り高いバスマティライスにラムやチキンをのせて蒸し焼きにした料理。

  • サリーク(Saleeq):ミルクとバターで煮込んだ米に、肉やソースをかけて食べる温かい料理。

  • ハニーブレッドとバラ茶:ターイフローズから作られたバラ水を用いた紅茶は、朝食や午後のひとときに人気。


教育・科学的拠点としての側面

ターイフ大学は地域の高等教育の中心であり、農学、観光学、薬学などの分野に力を入れている。特にバラの栽培研究においては、国際的な学術論文も発表されており、ターイフ特有の気候と農法が注目されている。


結論:伝統と未来が交差するターイフの魅力

ターイフはその自然、歴史、文化、宗教的意義において、サウジアラビアでも特に多面的な魅力を持つ都市である。避暑地としての地位に加え、観光・農業・教育など多様な産業を育む土壌があり、今後の持続可能な開発にも大きな期待が寄せられている。今後のターイフは、「伝統の継承」と「革新の融合」を象徴する存在として、世界の注目を集め続けるだろう。


参考文献

  1. Al-Rashidi, A. et al. (2021). Climate Adaptation and High-altitude Agriculture in Taif Region, Journal of Arabian Environmental Studies.

  2. Saudi Vision 2030 Official Reports. Ministry of Tourism.

  3. Taif University Research Journal, Vol. 18, 2023.

  4. Arab News & Saudi Gazette, Tourism Development Reports, 2022–2024.


このように、ターイフは単なる観光地ではなく、歴史、気候、農業、宗教、教育のすべてが融合する壮大な都市として、サウジアラビアの未来を照らす重要な拠点である。

Back to top button