手の腱炎(てのけんえん)は、手首や指を動かす腱に炎症が生じる病状であり、特に繰り返しの動作や過度の負荷が原因となることが多いです。この疾患は、一般的に腱に過剰なストレスがかかることで発症し、痛みや不快感を引き起こします。手の腱炎は、作業や趣味、スポーツなどの動作に関与するため、日常生活に支障をきたすことがあります。
1. 手の腱炎の原因
手の腱炎は、繰り返し同じ動作を行うことが主な原因とされています。たとえば、長時間のパソコン作業、スマートフォンの使用、細かい手作業を繰り返すことが負担となり、腱が炎症を引き起こすことがあります。その他、重いものを持ち上げる動作や急な動きが原因で腱が傷つくこともあります。
2. 手の腱炎の症状
手の腱炎にはいくつかの特徴的な症状があります。これらの症状は、腱が炎症を起こしている場所やその程度によって異なりますが、一般的に以下のような症状が見られます。
(1) 痛み
手の腱炎で最も一般的な症状は痛みです。炎症を起こした腱の部分に鈍い痛みや鋭い痛みを感じることがあります。この痛みは、特に手を使う動作や指を曲げる際に強くなります。最初は軽い痛みから始まり、徐々に悪化していくことがあります。
(2) 腫れ
腱炎が進行すると、腱の周りが腫れてくることがあります。腫れは、炎症によって血液やリンパ液が集まり、手のひらや指、手首の周囲にむくみを引き起こします。腫れは、見た目にもわかることがあり、手を使うことが難しくなる場合があります。
(3) 動かしにくさ
炎症が腱やその周囲の組織に広がると、手を動かすのが困難になることがあります。特に指を曲げる・伸ばす動作や、手首を回す動作が痛みを伴うため、手を自由に使うことができなくなります。
(4) こわばり
腱炎が進行すると、関節のこわばりを感じることがあります。これにより、手を動かす際に関節が固まったように感じ、柔軟性が失われることがあります。特に朝起きたときに手がこわばっていると感じる場合があります。
(5) 音や違和感
腱炎が進行すると、腱を動かす際に「カクッ」「ゴリッ」といった音が聞こえることがあります。これは腱が炎症で腫れ上がり、周囲の組織と摩擦を生じるためです。また、指や手首を動かすときに違和感を覚えることもあります。
3. 手の腱炎の診断方法
手の腱炎を診断するためには、医師による身体検査と症状の確認が行われます。特に、腱の動きや手の使用に関連した痛みの場所を確認することが重要です。また、炎症が進んでいる場合には、X線やMRIなどの画像検査を行うこともあります。これらの検査により、腱の損傷の程度や他の異常が確認されることがあります。
4. 手の腱炎の治療方法
手の腱炎の治療には、いくつかの方法があります。症状の進行具合や患者の状態に応じて、適切な治療が行われます。
(1) 安静
まず最初に行うべき治療は、腱に負担をかけないようにすることです。手を休ませることによって、炎症が収まるのを待つことが大切です。過度な手の使用を避けることが、回復を早めます。
(2) 冷却と温熱療法
腱炎の初期段階では、冷たいものを患部に当てて炎症を抑えることが有効です。冷却療法により、血流を抑制し、腫れや痛みを軽減できます。逆に、慢性化した場合には温熱療法が効果的です。温かいタオルやホットパッドを使用することで、血行を促進し、こわばりを和らげることができます。
(3) 薬物療法
痛みや炎症を軽減するために、鎮痛薬や抗炎症薬が処方されることがあります。非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)が一般的に使用され、痛みの緩和や炎症の軽減を助けます。場合によっては、局所的にステロイド注射を行うこともあります。
(4) 理学療法
腱炎が慢性化している場合や回復が遅れている場合、理学療法が行われることがあります。リハビリテーションによって、腱の柔軟性や強度を回復させ、手の使い方を改善することができます。特に、手首や指の関節を動かす運動を行うことが重要です。
(5) 手術
最終的に、保存的治療で改善が見られない場合や腱の断裂が疑われる場合には、手術が検討されることがあります。手術では、損傷した腱を修復するために切開を行い、腱を再接続します。
5. 手の腱炎の予防方法
手の腱炎を予防するためには、手や手首に過度の負荷をかけないように注意することが重要です。作業中やスポーツの際に適切な休憩を取ること、手首をサポートする器具を使用すること、また、手のストレッチや筋力強化を行うことが予防につながります。
(1) 姿勢の改善
パソコン作業やスマートフォンの使用時に、手首や指が無理な角度にならないように注意しましょう。正しい姿勢を保つことが、手首や腱に過度な負担をかけるのを防ぎます。
(2) ストレッチと強化
手や手首のストレッチや強化運動を行うことで、腱の柔軟性を保ち、過度の負担を防ぐことができます。特に、手首や指を使う仕事をしている場合は、定期的なストレッチが重要です。
6. まとめ
手の腱炎は、繰り返しの動作や過剰な負荷によって引き起こされる病気であり、痛みや腫れ、動かしにくさを伴います。早期に適切な治療を行うことで、回復が早まり、症状を軽減することができます。また、予防策を講じることによって、再発を防ぐことが可能です。手の腱炎に悩まされている場合は、無理をせず、早めに医師に相談することが重要です。

