一般外科

外痔核の治療法

外痔核(外部に現れる痔)に対する治療法は多岐にわたります。症状の程度や進行状況、患者の生活スタイルや全体的な健康状態に応じて、適切な治療法が選択されます。この記事では、外痔核の原因、症状、診断法、保存的治療から外科的治療まで、科学的根拠に基づいた最新の包括的な治療法を解説します。


外痔核の概要

外痔核は肛門の外側に発生する血管性の腫れで、血栓を伴うこともあります。一般的に、長時間の座位、排便時のいきみ、慢性的な便秘、妊娠・出産、肥満、運動不足などが主な原因とされています。皮膚のすぐ下にできるため、痛みやかゆみ、出血などの症状が明確に現れやすいのが特徴です。


外痔核の主な症状

  • 肛門周囲の腫れまたはしこり

  • 座るときや排便時の激しい痛み

  • 肛門部のかゆみや不快感

  • 下着に付着する出血

  • 肛門部の異物感

特に血栓性外痔核では、突然の激しい痛みと青紫色の腫れが特徴的です。


外痔核の診断方法

診断は主に視診と触診によって行われます。医師は以下のような方法を用いて診断します。

  • 視診:肛門外周の腫れや色の変化を確認。

  • 触診:腫瘤の硬さや圧痛の有無を確認。

  • 肛門鏡検査:内痔核との鑑別のために行われることもある。


保存的治療(初期・軽度症状)

1. 食事と生活習慣の改善

項目 推奨される習慣
食事 食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、全粒穀物)を摂取する
水分摂取 毎日1.5〜2リットルの水分摂取
排便習慣 便意を我慢しない。長時間のいきみを避ける
座位の時間 長時間座らない。1時間ごとに立ち上がる
運動 ウォーキングなどの軽い運動を日常に取り入れる

2. 局所治療(外用薬)

  • ステロイド軟膏(炎症と痛みを軽減)

  • 局所麻酔薬入り軟膏(痛みの即時緩和)

  • ヘパリン類似物質クリーム(血栓の吸収促進)

これらは市販薬または医師の処方で入手可能であり、症状が軽い場合には特に有効です。

3. 座浴療法(温水浸漬療法)

40℃程度のぬるま湯に肛門部を10〜15分浸すことで、血流が改善され、痛みやかゆみが軽減します。1日2〜3回の実施が推奨されます。


内服薬による治療

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みや腫れの軽減に使用。

  • フラボノイド系薬剤(静脈強化薬):血管の柔軟性を高め、血行を改善する作用があります。

  • 緩下剤・便軟化剤:排便時の負担を減らし、痔核の悪化を防止します。


侵襲的治療(中〜重度、または改善しない場合)

保存的治療で効果が見られない場合や再発を繰り返す場合には、以下のような手術的処置が考慮されます。

1. 血栓除去術(血栓性外痔核に対する処置)

急性の血栓性外痔核で痛みが非常に強い場合、局所麻酔下で血栓を外科的に除去することで、即時に痛みが改善されます。

2. 外痔核切除術

再発性や大きな外痔核に対しては、外痔核そのものを切除します。全身麻酔または局所麻酔で行われ、術後は出血や排便時の痛みが一時的に見られることがありますが、長期的には高い治療効果が期待されます。

3. レーザー治療

レーザーによる焼灼により、痔核の縮小と除去を図る方法。出血が少なく、回復が早いのが特徴です。ただし、医療施設によっては導入されていない場合もあります。


日常生活での予防と管理

外痔核は一度治癒しても、再発の可能性があるため、以下のような予防策を日常生活に組み込むことが重要です。

予防策 内容
定期的な運動 血流改善と便秘予防に効果的
バランスのとれた食事 食物繊維と水分の摂取を習慣化
正しい排便姿勢 足を少し高くしてしゃがむような姿勢をとる
肛門の清潔保持 肛門部を常に清潔に保ち、刺激の強い石鹸を避ける
ストレス管理 便秘や血流障害を悪化させる要因の一つ

最新の研究と今後の展望

近年、バイオフラボノイドを中心とした植物由来成分の有効性が注目されています。これらは炎症抑制、血管保護、静脈弾性向上などの効果を持つことが知られています。また、再発防止のためのマイクロバイオーム(腸内環境)研究も進んでおり、腸内細菌叢のバランスが肛門疾患に影響する可能性が示唆されています。

さらに、AIによる画像診断支援や、ナノテクノロジーを応用した局所治療薬の開発も進行しており、外痔核の診療はより精密かつ患者負担の少ない方向へと進化しています。


結論

外痔核は不快感や痛みを伴い、生活の質を著しく低下させる疾患ですが、適切な診断と治療を受けることで、効果的に症状を緩和し、再発を防ぐことが可能です。食事や生活習慣の改善といった予防的アプローチは、治療の一環として非常に重要であり、軽度の段階から積極的に取り組むべきです。進行した場合でも、現代医療は保存療法から外科的治療まで幅広い選択肢を提供しており、個々の症例に最適化された治療が可能です。信頼できる専門医と連携し、早期の対処を心がけることが、外痔核克服への鍵となります。


参考文献

  1. 日本大腸肛門病学会編『肛門疾患診療ガイドライン』第2版、2020年

  2. Abramowitz L et al., “The management of hemorrhoids: guidelines,” Gastroenterol Clin Biol, 2001

  3. Lohsiriwat V., “Treatment of hemorrhoids: A coloproctologist’s view,” World J Gastroenterol, 2015

  4. American Society of Colon and Rectal Surgeons (ASCRS) Practice Parameters

  5. 日本消化器病学会『肛門疾患の最新治療』、医学書院、2021年

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