肝臓と胆嚢の病気

肝臓酵素の異常と影響

肝臓の酵素が高くなることは、体内で重要な健康問題を引き起こす可能性があります。肝臓は体内で食べ物の消化や代謝、解毒、さらにはビタミンやミネラルの貯蔵、血液の凝固因子の合成など多くの重要な役割を担っています。そのため、肝臓の機能に異常が起きると、全身に悪影響を及ぼすことになります。肝臓の酵素の一つである「ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)」や「AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)」が基準値を超えて高くなると、肝臓に問題が発生している可能性が高いです。ここでは、肝臓の酵素が高くなることの影響とその原因、さらにはその対策について詳しく説明します。

1. 肝臓酵素が高いときに現れる症状

肝臓の酵素が高くなると、しばしば自覚症状が現れることがあります。これらの症状は、肝臓の障害が進行している兆候である可能性が高いです。主な症状には以下のようなものがあります。

  • 黄疸(おうだん):皮膚や目の白目が黄色くなる状態。これは肝臓がビリルビンを処理できなくなり、血液中にビリルビンが蓄積するためです。

  • 倦怠感(けんたいかん):常に疲れを感じ、十分な休養を取っても回復しない場合があります。肝臓が適切に働かないとエネルギーの供給が不十分になるためです。

  • 腹部の膨満感や痛み:肝臓が腫れることにより、右上腹部に違和感や痛みを感じることがあります。

  • 尿の色が濃くなる:尿が茶色や濃い黄色になることがあります。これは肝臓の機能不全によってビリルビンが尿に排出されるためです。

  • 便の色が白っぽくなる:正常な便は茶色ですが、肝臓に問題があると、胆汁が正常に分泌されないため、便が白っぽくなることがあります。

2. 肝臓酵素が高くなる原因

肝臓の酵素が高くなる原因はさまざまであり、いくつかの要因が考えられます。これらは肝臓自体に直接的な影響を与えることもあれば、他の臓器の問題が肝臓に波及することもあります。

2.1 アルコール摂取

アルコールは肝臓にとって非常に負担が大きい物質であり、過度の摂取は肝臓の炎症や損傷を引き起こすことがあります。アルコール性肝炎や脂肪肝を引き起こし、肝臓酵素が上昇する原因となることがあります。

2.2 薬剤の使用

いくつかの薬剤、特に長期間使用するものや高用量で使用するものは、肝臓に負担をかけ、肝機能障害を引き起こすことがあります。例えば、解熱鎮痛剤や抗生物質、抗がん剤などが影響を及ぼすことがあります。

2.3 肝炎ウイルス感染

肝炎ウイルス(A型、B型、C型など)は、肝臓に直接的な炎症を引き起こします。これにより肝臓の酵素が上昇することがあり、進行すると肝硬変や肝臓がんのリスクも高まります。

2.4 脂肪肝

肥満や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が原因となり、肝臓に脂肪が蓄積する脂肪肝が進行すると、肝臓の酵素が上昇します。これは、肝臓が脂肪の処理能力を超えて脂肪を蓄積することが原因です。

2.5 自己免疫疾患

自己免疫疾患によって免疫系が自分の肝臓を攻撃することがあり、その結果、肝臓酵素が上昇します。自己免疫性肝炎はその一例です。

2.6 遺伝的要因

遺伝的に肝臓の代謝機能が低下している場合、肝臓酵素が高くなることがあります。遺伝性の肝疾患としては、ウィルソン病(銅の蓄積病)やヘモクロマトーシス(鉄の過剰蓄積)などが挙げられます。

3. 肝臓酵素が高い場合の健康リスク

肝臓の酵素が高い状態が続くと、肝臓に対する損傷が進行し、以下のような深刻な健康リスクが高まります。

3.1 肝硬変

長期間にわたる肝臓の炎症や損傷により、肝臓が硬くなり、正常な機能を失う肝硬変が進行することがあります。肝硬変は、最終的には肝不全を引き起こし、移植が必要になることもあります。

3.2 肝臓がん

肝臓の慢性的な損傷は、肝臓がん(肝細胞癌)のリスクを高めます。特に、肝炎ウイルスやアルコール性肝疾患が長期間続くと、肝臓がんの発症リスクが増加します。

3.3 脳機能障害(肝性脳症)

肝臓が十分に働かない場合、血液中のアンモニアなどの有害物質を処理できなくなり、それらが脳に影響を及ぼすことがあります。これにより、意識障害や精神的な混乱を引き起こす肝性脳症が発生することがあります。

4. 肝臓酵素の上昇を予防・改善する方法

肝臓の酵素が高い状態を予防・改善するためには、以下のような生活習慣が大切です。

4.1 健康的な食生活

バランスの取れた食事を摂取することが肝臓の健康を守るために重要です。特に、脂肪分の多い食事を避け、野菜や果物、魚、全粒穀物を中心に摂るよう心掛けましょう。

4.2 適度な運動

定期的な運動は脂肪肝の予防に効果的です。ウォーキングやジョギング、ストレッチなどを取り入れることをおすすめします。

4.3 禁酒

アルコールは肝臓に強い負担をかけるため、過度な飲酒は肝臓の酵素を上昇させる原因になります。適度な量に抑えることが肝臓の健康を保つために重要です。

4.4 定期的な健康チェック

肝臓の酵素値を定期的に測定し、異常があれば早期に対応することが重要です。血液検査による肝機能検査を受け、異常を発見した場合は速やかに医師の指導を受けることをおすすめします。

まとめ

肝臓酵素が高くなることは、肝臓に異常が発生している兆候であり、その原因や症状を早期に発見することが重要です。健康的な生活習慣を心掛け、肝臓の健康を守ることが、長期的な健康維持に繋がります。

Back to top button