抗核抗体(ANA)は、自己免疫疾患の診断において重要な役割を果たす血液検査の一つです。ANA検査は、自己免疫疾患、特に全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチなどの疾患に関連する抗体の存在を検出するために使用されます。本記事では、ANA検査の概要、目的、結果の解釈、検査方法、および関連する疾患について詳述します。
ANA検査の概要
ANAとは、「抗核抗体」の略で、自己の細胞核を標的にする抗体を指します。これらの抗体は、正常な免疫系では生成されませんが、自己免疫疾患が存在する場合に体内で生成されます。ANA検査は、これらの抗体が血液中に存在するかどうかを調べる血液検査であり、特に自己免疫疾患の診断に有用です。

ANA検査の目的
ANA検査の主な目的は、自己免疫疾患を疑う患者において、その診断を支援することです。ANAが陽性であることは、以下のような疾患を示唆することがあります。
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全身性エリテマトーデス(SLE):ANA陽性が最も高頻度で見られる疾患で、SLEの診断には不可欠です。
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関節リウマチ:関節に炎症を引き起こす疾患で、ANA検査が補助的に使用されることがあります。
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皮膚筋炎や多発性筋炎:これらの疾患でもANA陽性が見られることがあります。
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強皮症:皮膚が硬化する疾患で、ANAの陽性結果が関連します。
さらに、ANA検査は、診断の確定を助けるだけでなく、疾患の活動性を監視するためにも利用されることがあります。
ANA検査の方法
ANA検査は、血液検査として行われます。一般的に、以下の手順で実施されます。
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血液サンプルの採取:患者の腕から血液を採取します。
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検査の実施:血液サンプルに対して抗体が存在するかどうかを調べます。最も一般的な方法は、免疫フルオレセンス法(IFA)です。この方法では、患者の血清を標準的な細胞に加え、その反応を観察します。
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結果の確認:ANA陽性の場合、その強さやパターンを調べ、どの疾患が関与しているかを判断します。
ANA検査結果の解釈
ANA検査の結果は「陽性」または「陰性」に分かれますが、陽性の結果が必ずしも自己免疫疾患を意味するわけではありません。ANA陽性の結果を示すことができるさまざまなパターンと、その解釈には注意が必要です。
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陽性反応:ANAが陽性の場合、自己免疫疾患の可能性があります。ただし、必ずしも疾患が確定するわけではなく、他の検査や症状と併せて判断する必要があります。
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高 titre(高濃度):高い titreのANA反応は、特にSLEや強皮症などの疾患が進行している可能性を示唆します。
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低 titre(低濃度):低い titreのANA反応は、健康な人にも見られる場合があり、必ずしも病気を示すものではありません。
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パターン:ANAの陽性反応には、さまざまなパターンがあります。これには、点状(dots)、網目状(mesh)、周辺状(peripheral)などがあり、各パターンが示唆する疾患は異なります。
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周辺状パターン:SLEに典型的なパターンです。
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核小体状パターン:主に皮膚筋炎や強皮症で見られるパターンです。
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陰性反応:ANAが陰性であれば、自己免疫疾患の可能性は低いと考えられますが、症状が続く場合は他の検査を行う必要があります。
ANA検査と関連疾患
ANA検査が陽性である場合、その後の診断を確定するためには他の検査が必要です。主に以下の疾患に関連します。
1. 全身性エリテマトーデス(SLE)
SLEは、最もANA陽性が高頻度で見られる自己免疫疾患です。SLEは、多くの臓器に影響を与える慢性的な疾患で、皮膚、腎臓、関節、心臓などに症状が現れます。ANA検査は、SLEの診断において最も重要な検査の一つです。
2. 関節リウマチ
関節リウマチもANA陽性となることがある疾患ですが、診断には他の血液検査(例えば、リウマトイド因子や抗CCP抗体)が必要です。
3. 強皮症
強皮症は皮膚や臓器が硬化する疾患で、ANA検査が陽性となることが多いです。
4. 皮膚筋炎・多発性筋炎
これらの疾患でもANA検査が陽性となることがあり、筋肉や皮膚に炎症が現れます。
結論
ANA検査は、自己免疫疾患を診断するための有用なツールです。しかし、ANAが陽性であるからといって、必ずしも疾患があるわけではなく、他の検査や臨床症状を総合的に考慮して診断を行うことが重要です。患者自身の症状や疾患の進行具合に応じて、適切な治療を行うために、ANA検査はその一部として役立つことになります。