APAスタイル(アメリカ心理学会スタイル)は、学術論文や研究成果を整理し、引用を標準化するために広く使用されている引用スタイルの一つです。このスタイルは特に社会科学や人文科学分野で広く採用されており、その明確で体系的な方法論により、研究者が情報源を正確に示すことを可能にします。この記事では、APAスタイルの基本的な構造、引用方法、参考文献の書き方について詳細に説明します。
1. APAスタイルの基本構造
APAスタイルの文書は、一般的に次のような構造になります。
1.1 表紙
APAスタイルでは、表紙ページ(タイトルページ)が必要です。表紙には、以下の要素が含まれます。
- 論文のタイトル
- 著者の名前
- 所属機関(大学や研究機関など)
- ページ番号(右上に配置)
1.2 抄録
論文の概要を簡潔に述べる「抄録」もAPAスタイルにおいては重要です。抄録は通常150~250語程度で、研究の目的、方法、主要な結果、結論を簡潔に要約します。
1.3 本文
本文は、導入、方法、結果、考察などのセクションに分かれて構成されます。それぞれのセクションは明確にタイトルがつけられ、論文の論理的な流れを確立します。
2. 引用方法
APAスタイルでは、他の研究者の著作を引用する際に明確なルールがあります。引用には主に二種類あります:直接引用と間接引用(パラフレーズ)です。
2.1 直接引用
他の著者の言葉をそのまま引用する場合、その言葉は「引用符(” “)」で囲みます。引用には、著者名、出版年、ページ番号を明記する必要があります。例えば、以下のように記載します。
例:
「心理学の進歩は非常に重要な成果を生んでいる」(山田, 2020, p. 45)。
2.2 間接引用(パラフレーズ)
著者の意見や考えを自分の言葉でまとめる場合、ページ番号は必要ありませんが、著者名と出版年は明記します。
例:
山田(2020)は、心理学の発展が重要な成果をもたらしたと述べている。
2.3 複数の著者の引用
複数の著者がいる場合、最初の引用で全ての著者名を記載し、その後は「et al.」を使用します。例えば、次のようになります。
例:
田中、佐藤、鈴木(2018)は、心理学の新しいアプローチについて議論している。
その後の引用では、次のように記載します。
田中 et al.(2018)は…
2.4 二次引用
他の著者が引用した別の研究を引用する場合、二次引用として記載します。
例:
山田(2020)によると、心理学的な効果は非常に有意であったとされている(佐藤, 2018)。
3. 参考文献リスト
参考文献リストは、文末にまとめて記載します。APAスタイルでは、参考文献の書き方に関しても厳密なルールがあります。参考文献は、以下のように著者名、出版年、書名、発行元を順番に記載します。
3.1 書籍
書籍の場合、次の形式に従います。
例:
- 著者名(発行年)。『書名』(版番号)。出版者。
例:
山田太郎(2020)。『現代心理学のアプローチ』(第2版)。心理学出版社。
3.2 論文
学術雑誌に掲載された論文の場合、次のように記載します。
例:
- 著者名(発行年)。「論文のタイトル」。雑誌名、巻数(号数)、ページ番号。
例:
田中一郎(2019)。「心理学の新しい視点」。心理学研究、34(2)、123-135。
3.3 オンライン資料
オンライン資料の場合、URLやDOI(デジタルオブジェクト識別子)を明記します。
例:
- 著者名(発行年)。『記事タイトル』。サイト名。URL
例:
鈴木花子(2021)。「心理学における最近の発展」。心理学ウェブサイト。https://www.psychologyweb.com
4. APAスタイルのその他の注意点
4.1 数字の表記
APAスタイルでは、数字を使用する際にいくつかの規則があります。例えば、10以上の数字は数字として表記し、それ未満は基本的に漢字で表記します。ただし、統計データや測定値などは数字で記載します。
4.2 見出しの使い方
APAスタイルでは、見出しを適切に使うことが重要です。見出しは、1段階目から5段階目まであり、内容に応じて段階を使い分けます。
4.3 引用の一貫性
引用方法や参考文献の記載については、文中と参考文献リストでの一貫性が求められます。同じ情報源を使う際には、同じ形式で引用し、参考文献リストにも正確に記載する必要があります。
5. 結論
APAスタイルは、学術論文や研究報告を執筆する上で非常に重要なツールです。正確な引用と参考文献の管理は、研究の信頼性と透明性を高め、他の研究者との知識の共有を促進します。APAスタイルのルールを守ることは、学術界での良好な習慣を維持し、研究者間の公平で明確なコミュニケーションを支える基盤となります。
