BGP(Border Gateway Protocol)は、インターネットや大規模なネットワークのルーティングに使用される主要なプロトコルであり、特に異なる自律システム(AS)間での経路情報の交換を管理します。BGPは、インターネット全体のルーティングの最適化や安定性に重要な役割を果たしています。本記事では、BGPプロトコルにおける「通信の種類」について詳述し、その各種の接続方法や通信方式を包括的に解説します。
1. BGPの基本的な動作と通信の目的
BGPは、IPネットワークがどのようにデータを送受信するかを決定するために使用されるインターネットの経路選択プロトコルです。BGPは経路情報を交換することによって、ルータがどの経路を選択するかを決定します。このプロトコルは、主にAS(Autonomous System)間で経路情報を交換するため、インターネットサービスプロバイダー(ISP)や大規模ネットワークにおいて、異なるAS間の通信を調整します。
BGPは、従来のRIP(Routing Information Protocol)やOSPF(Open Shortest Path First)とは異なり、距離ベースのメトリックではなく、パス属性やポリシーに基づいて経路を選択します。BGPの運用は、主にBGPピア(相手との接続)を通じて行われます。
2. BGP通信の種類
BGPにおける通信は、主に以下のような種類に分類されます。
2.1. BGPセッション(Peer-to-Peer通信)
BGPセッションは、BGPピアと呼ばれる2つのルータ間で確立される通信路です。BGPセッションは、直接接続されているAS間や、同じAS内の異なるルータ間で設定されることがあります。セッションはTCP(Transmission Control Protocol)のポート179を使用して確立され、セッションを通じて経路情報が交換されます。
– 外部BGP(eBGP)
外部BGP(External BGP、eBGP)は、異なる自律システム(AS)間でBGPセッションを確立する場合に使用されます。これにより、インターネットサービスプロバイダー(ISP)間や企業のネットワーク間で経路情報が交換されます。eBGPセッションは、通常、インターネットのバックボーンを形成するための主要な手段となります。
– 内部BGP(iBGP)
内部BGP(Internal BGP、iBGP)は、同一の自律システム(AS)内でBGPセッションを確立するために使用されます。iBGPセッションは、AS内の異なるルータ間で経路情報を交換するために利用され、AS内のルータが他のルータとの最適な経路選択を行うことを可能にします。
eBGPとiBGPは、それぞれ異なる条件やルールを基に通信を行います。例えば、eBGPでは、AS番号が異なるルータ同士が直接通信しますが、iBGPでは、AS内で経路情報が交換され、AS内のルータがネットワーク全体の経路情報を保持します。
2.2. BGPの状態遷移
BGPのセッションは、一定の状態遷移を経て確立されます。以下の状態がBGPピア間の通信の流れを示しています。
- Idle(アイドル)状態: BGPセッションは初期化されており、ピアとの通信がまだ開始されていません。
- Connect(接続待機)状態: 相手ピアに接続を試みます。
- Active(アクティブ)状態: 接続を試み、通信を開始します。
- OpenSent(オープン送信)状態: ピアからのオープンメッセージを待機します。
- OpenConfirm(オープン確認)状態: ピアからの確認応答を待機します。
- Established(確立)状態: セッションが確立され、経路情報の交換が可能となります。
BGPセッションは、これらの状態を経て最終的に「確立」状態に至り、経路情報の交換が開始されます。このプロセスは、BGPピア間の通信が適切に行われることを保証します。
2.3. BGPメッセージの種類
BGP通信では、複数の種類のメッセージが交換されます。これらのメッセージは、経路情報の交換やピア間の接続状態の変更に使用されます。
- Openメッセージ: ピア間でセッションを確立する際に使用されます。通信の開始を通知し、BGPバージョンやAS番号などの基本的な情報が含まれます。
- Updateメッセージ: 経路情報の交換を行うメッセージです。新しい経路の追加や、既存経路の削除が行われます。
- Notificationメッセージ: エラーが発生した際に送信されるメッセージです。BGPセッションの終了やエラーメッセージが通知されます。
- Keepaliveメッセージ: セッションが生きていることを確認するために定期的に送信されます。通信の維持を目的としています。
2.4. BGPの通信ポリシー
BGPでは、経路情報の交換においてポリシーを適用することができます。これにより、管理者はどの経路を選択すべきかを細かく制御できるため、ネットワークの効率を高めたり、トラフィックの流れを最適化したりすることが可能です。BGPのポリシーには以下のようなものがあります。
- AS Pathフィルタリング: 受信した経路に対して、特定のAS番号を含まない経路のみを受け入れるようにする設定です。
- プレフィックスリスト: 特定のプレフィックス(IPアドレス帯域)に基づいて、受け入れる経路を制御します。
- コミュニティ: 経路にタグを付け、そのタグを基に経路選択を制御する方法です。
これらのポリシーを駆使することで、BGPはネットワークの管理者に柔軟な経路制御を提供します。
3. BGPの通信方式の応用
BGPは、インターネット全体の通信を支える基盤として非常に重要ですが、その運用には高度な知識と注意が必要です。BGPの通信方式には、以下のような応用があります。
- インターネットバックボーンの最適化: 大規模なISP間での経路選択の最適化に利用され、インターネット全体のトラフィックの流れを管理します。
- 負荷分散と冗長性の確保: BGPを利用して、複数の経路を持つことで、障害時に冗長性を確保したり、トラフィックの負荷分散を行ったりします。
- セキュリティ強化: BGPのセッションにおける認証や、経路情報の偽装防止のために、BGP-MD5認証やRPKI(Resource Public Key Infrastructure)などのセキュリティ技術が活用されています。
結論
BGPは、インターネットの経路選択とトラフィックの管理において中心的な役割を担っている重要なプロトコルです。異なるAS間での経路情報交換のために、複数の通信方式が存在し、それぞれが異なる状況に応じて活用されています。BGPの通信の種類を理解し、適切な運用を行うことは、ネットワークの安定性と効率を高めるために不可欠です。

