RIP(Routing Information Protocol)は、内部ゲートウェイプロトコル(IGP)の一つで、ネットワーク内でルータ間の経路情報を交換するために使用されます。Ciscoデバイス上でRIPを設定する方法について、完全かつ包括的なガイドを提供します。
RIPの基本概念
RIPは距離ベクトル型のルーティングプロトコルです。ルータは、各ネットワークの到達距離(ホップ数)を記録し、その情報を他のルータと定期的に交換します。RIPは最大15ホップまでサポートしており、これを超える場合は到達不可能(無効)として扱います。
RIPにはいくつかのバージョンがありますが、主に使用されるのはRIP v1とRIP v2です。RIP v2はRIP v1の拡張版であり、ネットワークアドレスをCIDR形式で指定できるほか、マルチキャストアドレスを使用してルーティングアップデートを送信する点が異なります。
RIPの設定手順
1. RIPの有効化
最初にRIPを有効にする必要があります。CiscoルータでRIPを設定するには、グローバルコンフィギュレーションモードで「router rip」コマンドを入力します。
bashRouter> enable
Router# configure terminal
Router(config)# router rip
2. 使用するRIPバージョンの指定
RIPにはv1とv2があります。通常、RIP v2を使用することが推奨されます。以下のコマンドでRIP v2を指定できます。
bashRouter(config-router)# version 2
3. ネットワークアドレスの追加
次に、RIPに参加する各ネットワークアドレスを追加します。これにより、RIPプロトコルがどのネットワークでルート情報を交換するかを指定します。
bashRouter(config-router)# network 192.168.1.0
Router(config-router)# network 10.0.0.0
上記のコマンドでは、192.168.1.0
と10.0.0.0
のネットワークをRIPに参加させています。ネットワークアドレスは、ルータのインターフェースのIPアドレスと一致している必要があります。
4. RIPアップデートの送信インターフェースの設定
RIPは、指定されたネットワークに属するインターフェースからルーティングアップデートを送信します。RIPの設定後、特定のインターフェースに対してルーティングアップデートを送信するように設定できます。
例えば、インターフェースGigabitEthernet0/1
に対してRIPアップデートを送信するには、以下のように設定します。
bashRouter(config-router)# passive-interface GigabitEthernet0/1
この設定により、指定したインターフェースではRIPの送信は行わず、受信のみ行います。
5. 分割ホライズンの設定
RIPにおける分割ホライズン(split horizon)は、ルーティングループを防ぐために、ルータが自身から学習したルート情報を再度そのインターフェースに送信しないようにする機能です。この設定を有効にすることで、ルーティングループを防ぎます。
デフォルトでは、分割ホライズンは有効になっていますが、必要に応じて設定を変更できます。
bashRouter(config-router)# no split-horizon
6. RIPのタイマー設定
RIPには、ルーティング情報の更新頻度やタイムアウトに関連するいくつかのタイマーがあります。これらのタイマーを調整することで、RIPの動作を最適化できます。
例えば、RIPの更新間隔は通常30秒ですが、以下のコマンドで変更できます。
bashRouter(config-router)# timers basic 10 30 90 180
上記のコマンドは、RIPの更新間隔を10秒、更新間隔タイマーを30秒、タイムアウトを90秒、削除タイマーを180秒に設定します。
7. ルーティングテーブルの確認
RIPが正常に動作しているかどうかを確認するためには、show ip route
コマンドを使用して、ルーティングテーブルを確認します。RIPによって学習されたルートは、R
という文字で示されます。
bashRouter# show ip route
RIPのルートが正しく学習されていることを確認できれば、設定は成功です。
RIPのトラブルシューティング
RIPに関する問題が発生した場合、以下のコマンドを使用してトラブルシューティングを行います。
show ip protocols
:RIPの設定状態を確認します。show ip rip database
:RIPのルーティングデータベースを表示します。debug ip rip
:RIPの動作をリアルタイムでデバッグします。
RIPのセキュリティ
RIPは古いプロトコルであり、セキュリティ上の弱点を持っています。これを補うために、RIPの更新メッセージに認証を設定することができます。RIP v2では、MD5認証を使用して、RIPメッセージの信頼性を確保できます。
bashRouter(config)# interface GigabitEthernet0/1
Router(config-if)# ip rip authentication mode md5
Router(config-if)# ip rip authentication key-chain RIP-KEY
この設定により、指定したインターフェースでMD5認証が使用され、RIPのメッセージが適切に認証されます。
結論
RIPは比較的簡単に設定できるルーティングプロトコルですが、性能やスケーラビリティの面では他のプロトコル(例えばOSPFやEIGRP)に劣ります。しかし、小規模なネットワークでは非常に有用であり、Ciscoルータでの設定も容易です。上記の手順を踏むことで、RIPを適切に設定し、ネットワーク間で効率的なルーティングを実現できます。