CRP(C反応性タンパク質)とは、体内で炎症が起こると肝臓から分泌されるタンパク質の一種です。炎症反応に関わる重要な役割を果たし、特に細菌やウイルスによる感染、慢性疾患、自己免疫疾患などの症状に関連しています。CRPの測定は、体内での炎症の程度を確認するための重要な指標となります。以下では、CRPの測定方法、基準値、異常値が示す意味、臨床での活用方法について詳述します。
CRPの役割と機能
C反応性タンパク質は、免疫系の一部として、炎症反応において重要な役割を果たします。通常、CRPは健康な状態では血中に非常に低い濃度で存在していますが、体内に炎症が生じるとその濃度が急激に上昇します。この現象は「急性相反応」と呼ばれ、感染症や外傷、手術後などに見られる特徴です。CRPは、炎症を引き起こす因子や病原体に対する免疫系の反応をサポートするため、血液中で量が増加するのです。

CRP測定の方法
CRPの測定は、血液検査を通じて行われます。通常、血清中のCRP濃度を測定することで、炎症の有無や程度を評価します。具体的には、免疫反応を利用した方法や化学反応を用いた検査法によって、血液中のCRP濃度を定量的に測定します。
最も一般的な方法は、「高感度CRP(hs-CRP)」という検査法で、これは通常のCRP測定よりも微細な変動を感知できるため、慢性的な炎症や心血管疾患のリスク評価にも利用されます。hs-CRPは、冠動脈疾患の予測や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスク評価にも役立つことがあります。
CRPの基準値と異常値
CRPの基準値は通常、0.3 mg/dL 以下とされています。この値を超えると、何らかの炎症が体内で発生している可能性が高いと考えられます。ただし、CRPが上昇する原因は多岐にわたるため、数値だけでは具体的な病気を特定することはできません。以下に、CRP濃度が示す異常値の一例を挙げます。
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軽度の上昇(1.0 ~ 3.0 mg/dL):
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軽度の感染症や風邪、軽度の外傷や手術後などで見られます。
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慢性の軽度な炎症が原因となることもあります(例:軽度の関節炎、過敏性腸症候群など)。
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中等度の上昇(3.0 ~ 10.0 mg/dL):
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細菌感染症や急性の疾患(例:肺炎、尿路感染症など)が原因である可能性が高いです。
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慢性疾患や自己免疫疾患(例:慢性関節リウマチ、クローン病)などでも見られることがあります。
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高度な上昇(10.0 mg/dL 以上):
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重度の感染症や急性の炎症、組織損傷(例:心筋梗塞、手術後など)で見られます。
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炎症性疾患や自己免疫疾患が進行している場合にもこのような数値が出ることがあります。
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CRPと疾患の関連性
CRPの測定は、さまざまな疾患の診断や経過観察に役立ちます。主な例として、以下のような疾患でCRPが関与しています。
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感染症:
CRPは細菌感染に特異的に反応し、細菌による感染が疑われる場合にその診断をサポートします。例えば、肺炎や尿路感染症、腹膜炎などでは、CRPの急激な上昇が見られます。 -
自己免疫疾患:
関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患でもCRPが上昇します。これらの疾患は慢性的な炎症を引き起こし、CRPの濃度が持続的に高い状態が続くことがあります。 -
心血管疾患:
高感度CRP(hs-CRP)は、心血管疾患のリスク評価に使用されることが増えています。特に、冠動脈疾患や心筋梗塞の予測因子として利用されることが多いです。CRPの高値は動脈硬化の進行や心筋梗塞のリスクが高いことを示唆します。 -
癌:
一部の癌、特に炎症性が関与しているものではCRPが高値を示すことがあります。がんの進行や治療効果のモニタリングにもCRPが使われることがあります。
CRPと生活習慣の関係
CRPは、生活習慣にも影響を受けることがあります。例えば、喫煙や肥満、高脂肪食などは慢性的な低度の炎症を引き起こし、その結果CRP値が上昇することがあります。また、ストレスや運動不足もCRP値に影響を与える可能性があり、これらの要因が心血管疾患や糖尿病などのリスクを高めることが知られています。
CRPの測定の限界
CRPは炎症の指標として非常に有用ですが、その単独での測定だけでは病気の診断において完全ではありません。例えば、CRPが上昇している場合でも、その原因は多岐にわたるため、他の検査と組み合わせて診断を行う必要があります。また、CRPが正常範囲内であっても、炎症や疾患が全く存在しないとは限りません。従って、CRPはあくまで補助的な指標として、他の臨床情報とともに評価されるべきです。
結論
CRPは炎症のマーカーとして、さまざまな疾患の診断や経過観察に有用な検査です。感染症や自己免疫疾患、心血管疾患、がんなどの診断において重要な指標となり、特に高感度CRPは予防医療にも役立っています。ただし、CRPは単独で病気を診断するものではなく、他の検査結果や臨床症状と併せて総合的に判断することが求められます。生活習慣の改善や定期的な検診を通じて、CRPを含む健康指標を管理することが、より健康的な生活を維持するために重要です。