CSSにおける「特異性」「継承」「カスケーディング」は、ウェブデザインにおいてスタイルを適切に適用するために重要な概念です。これらの概念を理解することで、意図した通りにCSSを使用することができ、複雑なレイアウトやデザインでも問題なくスタイルを管理できるようになります。以下では、それぞれの概念を詳しく説明し、CSSにおける動作の仕組みを解説します。
1. カスケーディング(Cascading)
カスケーディングは、CSSがスタイルを適用する際の優先順位の順序を指します。「カスケード(cascade)」という言葉は、スタイルが順番に流れ落ちることを意味しており、スタイルシートがどのように適用されるかを理解するために重要です。
カスケードの動作
CSSでは、複数のスタイルが同じ要素に適用される場合、その適用の順番を決定するためにカスケーディングが働きます。CSSのカスケードは、次の3つの順序に従います。
-
ソースコードの順番:
- 同じセレクタに対して異なるスタイルが記述されている場合、後から記述されたスタイルが優先されます。これは、後述する特異性と関係なく、単にスタイルシートの記述順に依存します。
css/* 最初の定義 */ p { color: red; } /* 後から定義 */ p { color: blue; }上記の場合、
タグのテキストは青色になります。
-
重要度(
!important):- CSSでは、
!importantを使用することで特定のスタイルに強制的に優先順位を与えることができます。これは他のすべてのルールよりも高い優先度を持つため、慎重に使う必要があります。
cssp { color: red !important; } p { color: blue; }この場合、
color: redが適用され、テキストは赤色になります。なぜなら、!importantがついているからです。 - CSSでは、
-
スタイルシートの種類:
- 同じ要素に対して複数のスタイルシートが適用される場合、外部スタイルシート(
linkタグ)よりも、インラインスタイル(style属性)が優先されます。
html<p style="color: green;">このテキストは緑色p>この例では、インラインスタイルの
color: greenが適用され、テキストは緑色になります。 - 同じ要素に対して複数のスタイルシートが適用される場合、外部スタイルシート(
2. 特異性(Specificity)
特異性は、複数のセレクタが同じ要素に適用される場合に、どのスタイルが優先されるかを決定する方法です。特異性は、各セレクタの重み(スコア)に基づいて決まります。
特異性の計算方法
特異性は、次の4つのコンポーネントに基づいて計算されます:
-
インラインスタイル(最も強い):
- インラインスタイルは常に最も高い特異性を持ちます。例えば、HTMLの
style属性で直接スタイルを指定する場合です。
- インラインスタイルは常に最も高い特異性を持ちます。例えば、HTMLの
-
IDセレクタ:
- IDセレクタ(
#id)は、クラスやタグよりも強い特異性を持ちます。
- IDセレクタ(
-
クラス、属性セレクタ、および擬似クラス:
- クラスセレクタ(
.class)、属性セレクタ([type="text"])、擬似クラス(:hover)は次に優先されます。
- クラスセレクタ(
-
要素および擬似要素:
- 要素セレクタ(
div,pなど)や擬似要素(::before)は、最も特異性が低いです。
- 要素セレクタ(
特異性の例
css/* クラスセレクタ */
.button {
color: blue;
}
/* IDセレクタ */
#submit {
color: green;
}
/* 要素セレクタ */
p {
color: red;
}
HTMLが以下のような場合:
html<p class="button" id="submit">Submitp>
この場合、color: greenが適用されます。なぜなら、#submitのIDセレクタの特異性が最も高いためです。
3. 継承(Inheritance)
継承は、親要素が持つスタイルが子要素に引き継がれる仕組みです。CSSでは、多くのプロパティが自動的に継承されますが、すべてのプロパティがそうではありません。特に、フォント関連のプロパティ(font-family, font-sizeなど)は継承されることが多いです。
継承されるプロパティの例
font-familyfont-sizecolorline-heighttext-align
継承されないプロパティの例
marginpaddingborderbackgroundwidthheight
これらのプロパティは、子要素に継承されません。もし継承させたい場合は、inheritキーワードを使用して明示的に指定できます。
cssp {
color: inherit; /* 親要素の色を継承 */
}
まとめ
- カスケーディング:CSSのスタイルは、記述順や
!importantの使用などに基づいて適用される。 - 特異性:異なるセレクタが同じ要素に対してスタイルを適用する場合、IDセレクタ、クラスセレクタ、要素セレクタなどの特異性に従って優先順位が決まる。
- 継承:親要素から子要素へスタイルが引き継がれる仕組み。フォントや色などは自動的に継承されるが、他の多くのプロパティは継承されない。
これらの概念を理解し、適切に活用することで、効率的にCSSを管理し、予期しないスタイルの衝突を避けることができます。

