EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)は、Ciscoによって開発された高度なルーティングプロトコルで、ネットワーク内で効率的な経路選択を提供します。このプロトコルは、IP、IPX、およびAppleTalkなど、複数のネットワークプロトコルに対応しており、特に大規模な企業ネットワークにおいて非常に有用です。EIGRPは、距離ベクトルプロトコルとリンクステートプロトコルの要素を組み合わせており、そのため非常に迅速で効率的な経路計算を実現します。
EIGRPの基本概念
EIGRPは、ルータ同士がネットワーク内で経路情報を交換するためのプロトコルです。このプロトコルは、次の重要な要素を含んでいます:
- ハイエラー検出: ネットワーク内の変更をリアルタイムで検出し、すぐに適応します。
- 複数のプロトコルサポート: IP、IPX、AppleTalkなどのプロトコルをサポートしています。
- 差分アップデート: ネットワークの状態が変化した場合のみ更新を送信するため、帯域幅を効率的に使用します。
- DUAL(Diffusing Update Algorithm): 経路の選択と再計算を迅速に行うアルゴリズムです。
EIGRPの隣接関係(Neighbor Relationships)
EIGRPにおいて「隣接関係」という概念は非常に重要です。隣接関係は、EIGRPを使用するルータが相互に情報を交換し、ネットワーク内で最適な経路を選定するための信頼関係です。隣接関係は、EIGRPネットワーク内で最も効率的なルーティングを提供するための基盤です。これを理解するために、隣接関係の確立のプロセスを詳しく見ていきます。
1. 隣接関係の確立
隣接関係は、次の4つのステージを経て確立されます:
- Helloパケットの交換: EIGRPのルータは、Helloパケットを使用して隣接ルータを検出します。このパケットは、ルータがネットワーク内でどのルータと通信可能かを把握するために送信されます。
- 確認パケット: Helloパケットを受信したルータは、確認パケットを送信し、相手ルータが接続可能であることを確認します。
- 保持パケットの交換: 一度隣接ルータが確立されると、定期的に保持パケットが交換され、接続が維持されます。
- 更新パケットの交換: ネットワークの構成が変更されると、更新パケットが交換され、新しい経路情報が各ルータに伝達されます。
2. 隣接リストとEIGRPの動作
EIGRPは隣接リストを使って、隣接関係を管理します。このリストは、どのルータが隣接ルータとして認識され、どの経路が有効かを示します。隣接リストは、ルータのメモリに保存され、隣接ルータが送信する情報に基づいて更新されます。このリストの更新は、特定のトラフィックの必要性やネットワークの変化に応じて行われます。
EIGRPのロードバランシング
EIGRPは、複数の経路が同じ宛先に向かって利用可能な場合、ロードバランシングを行うことができます。これにより、トラフィックは複数の経路に均等に分散され、ネットワークのパフォーマンスが向上します。EIGRPでは、デフォルトで最大4つの経路が並列して使用されますが、設定によっては最大16経路までサポートできます。
EIGRPの最適化とパフォーマンスの向上
EIGRPは、最適化されたルーティングプロトコルとして、高速な収束時間と帯域幅の効率的な使用を提供します。収束とは、ネットワーク構成が変わった後、全てのルータが新しい最適な経路を認識するまでの時間を指します。EIGRPは、この収束時間を非常に短く保つため、ネットワークのパフォーマンスが高いと言われています。
最適化のポイント:
- リソースの効率的な使用: EIGRPは、ネットワーク帯域幅の使用を最小限に抑えるため、差分更新を行います。これにより、必要な情報のみが交換され、無駄なトラフィックを減少させます。
- コストベースの計算: EIGRPは、リンクの帯域幅、遅延、信頼性などを考慮して最適な経路を計算します。これにより、最も効率的な経路を選定します。
EIGRPのトラブルシューティング
EIGRPにおけるトラブルシューティングは、通常、隣接関係の問題や経路情報の交換に関する問題に集中します。次のツールを使用してトラブルシューティングを行うことができます:
- show ip eigrp neighbors: 隣接ルータの状態を確認するためのコマンド。
- show ip eigrp topology: 現在のEIGRPのトポロジー情報を表示するコマンド。
- debug eigrp packets: EIGRPパケットのデバッグ情報を表示し、問題の診断を支援します。
まとめ
EIGRPは、効率的で迅速な経路選択を提供する強力なルーティングプロトコルであり、特に大規模なネットワークにおいてその利点を発揮します。隣接関係の確立や更新、ロードバランシング、最適化されたパフォーマンスなど、EIGRPはネットワークの効率と信頼性を向上させる多くの機能を提供します。そのため、EIGRPは多くの企業ネットワークで採用されているルーティングプロトコルであり、今後もその重要性は増していくと予想されます。

