Ember.jsは、モダンなウェブアプリケーションの開発をサポートするJavaScriptフレームワークです。その特長の一つは、「イベント」「クラス」「状態(ステート)」の管理が非常に効率的である点です。本記事では、Emberにおけるこれらの概念を完全かつ包括的に解説します。
1. イベント(Events)
Ember.jsでは、ユーザーのアクションやシステムによるアクションに基づいて発生する「イベント」を処理する仕組みが提供されています。イベントは、ユーザーインターフェースの対話型操作をトリガーするために重要な役割を果たします。

イベントのハンドリング
Emberにおけるイベントのハンドリングは、{{action}}
ヘルパーを使用して行います。このヘルパーを用いることで、テンプレート内でのユーザーインタラクションに対応するアクションを定義できます。
handlebars
このコードでは、ボタンがクリックされると、submitForm
というアクションがトリガーされます。submitForm
アクションは、コンポーネントやコントローラー内で定義されたメソッドと関連付けられます。
アクションの定義
アクションは、通常、コンポーネント、コントローラー、またはルーターで定義されます。アクションの定義方法は以下の通りです。
javascriptimport Controller from '@ember/controller';
export default Controller.extend({
actions: {
submitForm() {
alert("フォームが送信されました!");
}
}
});
上記のコードでは、submitForm
アクションが定義され、ボタンがクリックされた際にアラートが表示されます。
イベントのキャンセル
Emberでは、イベントの伝播(バブリング)を停止するために、イベントをキャンセルすることも可能です。これを行うには、{{action}}
ヘルパーのオプションとしてpreventDefault
やstopPropagation
を使用します。
handlebars
この場合、ボタンのクリック時にフォームの送信をキャンセルすることができます。
2. クラス(Classes)
Ember.jsでは、オブジェクト指向プログラミング(OOP)の原則に従い、クラスを使用してアプリケーションの構成要素を作成します。クラスは、特定の動作やプロパティを持つオブジェクトを作成するために使います。
クラスの定義
Emberのクラスは、通常、Component
、Controller
、Route
など、特定の用途に応じたものとして定義されます。クラスの定義は、@ember/object
モジュールを使用して行います。
javascriptimport Component from '@glimmer/component';
export default class MyComponent extends Component {
message = "Hello, Ember!";
}
上記のコードでは、MyComponent
というコンポーネントクラスが定義され、message
プロパティが初期化されています。
クラスのライフサイクル
Emberでは、コンポーネントやコントローラーなど、さまざまなクラスにライフサイクルフックが提供されています。例えば、コンポーネントではdidInsertElement
やwillDestroyElement
といったフックを使用して、要素がDOMに挿入されたタイミングや削除されるタイミングで処理を実行できます。
javascriptimport Component from '@glimmer/component';
export default class MyComponent extends Component {
didInsertElement() {
console.log("要素がDOMに挿入されました!");
}
}
3. 状態(State)
状態(ステート)は、アプリケーションの動作やインターフェースの表示内容に大きな影響を与える重要な要素です。Emberでは、状態管理を簡単に行うために、コンポーネントやコントローラーでのプロパティを活用します。
状態の管理
コンポーネントやコントローラーでは、@tracked
デコレーターを使ってプロパティの状態を管理できます。このデコレーターを使うことで、プロパティの値が変更された際に自動的にビューが再レンダリングされるようになります。
javascriptimport Component from '@glimmer/component';
import { tracked } from '@glimmer/tracking';
export default class MyComponent extends Component {
@tracked message = "初期メッセージ";
changeMessage() {
this.message = "メッセージが変更されました!";
}
}
この例では、message
というプロパティがトラッキングされており、その値が変更されると自動的にビューが更新されます。
状態遷移
Emberアプリケーションでは、状態遷移をコントロールするために、ルーターやモデルが使われます。特定の状態に基づいて遷移するには、transitionTo
メソッドを使用します。
javascriptthis.transitionTo('someRoute');
このコードでは、現在のルートからsomeRoute
という別のルートに遷移します。
まとめ
Ember.jsにおける「イベント」「クラス」「状態」の管理は、アプリケーションの効率的な開発に欠かせない重要な要素です。イベントはユーザーインタラクションを処理するために、クラスはアプリケーションの構成要素を定義するために、状態はアプリケーションの動作を制御するために使われます。これらの概念を理解し、適切に活用することで、より効果的なウェブアプリケーションの開発が可能となります。