ネットワーク

FHRPと冗長化プロトコル

FHRP(First Hop Redundancy Protocol)とは?

FHRP(First Hop Redundancy Protocol)は、ネットワークにおけるデフォルトゲートウェイの冗長性を提供するためのプロトコル群です。これにより、ネットワーク機器が障害を起こした場合でも、ユーザーはネットワークへの接続を失うことなく通信を継続できます。主に、デフォルトゲートウェイが冗長化されている場合に、複数のルーターが1つの仮想的なデフォルトゲートウェイを提供し、ネットワークの可用性を高める役割を果たします。

FHRPは、ルータ間でゲートウェイの役割を共有し、1台のルータがダウンした場合でも、残りのルータがゲートウェイとして機能できるようにします。これにより、障害発生時でもネットワークの中断を最小限に抑えることができます。FHRPには主に、HSRP、VRRP、GLBPという3つの異なるプロトコルが存在します。

1. HSRP(Hot Standby Router Protocol)

HSRP(Hot Standby Router Protocol)は、Cisco社によって開発されたFHRPの一つで、ネットワークにおける冗長性を提供します。HSRPは、複数のルータを使って仮想的なデフォルトゲートウェイを作成します。これにより、もしプライマリルータが故障した場合、待機しているバックアップルータが自動的にその役割を引き継ぐため、ネットワークの継続的な接続が保証されます。

HSRPは、以下の特徴を持っています:

  • 仮想IPアドレスと仮想MACアドレス: ルータ群が共有する仮想IPと仮想MACアドレスを設定し、ネットワークのゲートウェイとして機能します。
  • アクティブルータとスタンバイルータ: HSRPでは、アクティブルータ(実際にトラフィックを処理するルータ)とスタンバイルータ(待機中のバックアップルータ)を設定します。
  • 優先順位による選出: どのルータがアクティブルータとして機能するかは、各ルータに設定された優先順位に基づいて決定されます。

HSRPには、デフォルトで1つのルータがアクティブになり、他のルータはバックアップとして待機しています。故障時には、バックアップルータが自動的にアクティブに切り替わります。これにより、サービスの中断を最小限に抑え、ネットワークの可用性を向上させます。

2. VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)

VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、IETF(Internet Engineering Task Force)によって標準化されたFHRPの一つで、HSRPと同様にネットワークの冗長性を提供します。VRRPは、複数のルータが仮想ルータとして機能し、いずれかのルータが故障した場合でも他のルータがその機能を引き継ぐ仕組みです。

VRRPの特徴:

  • 仮想ルータの作成: VRRPは、仮想ルータを作成し、その仮想IPアドレスをネットワークのデフォルトゲートウェイとして設定します。
  • Master/Backupルータ: VRRPでは、1台のルータが「Master」として動作し、他のルータは「Backup」として待機します。Masterルータがダウンすると、Backupルータが新しいMasterとして選出され、サービスの中断を防ぎます。
  • 優先順位とタイマー: VRRPでは、各ルータに優先順位が設定され、その値が高いルータがMasterに選ばれます。タイマーを使用して、障害検出とフェイルオーバーの時間を設定できます。

HSRPと異なる点は、VRRPが標準化されており、異なるベンダーの機器間でも互換性がある点です。これにより、Cisco以外の機器を使っている環境でも利用可能となります。

3. GLBP(Gateway Load Balancing Protocol)

GLBP(Gateway Load Balancing Protocol)は、Ciscoによって開発された、FHRPの中で唯一、負荷分散機能を提供するプロトコルです。HSRPやVRRPは冗長性を提供しますが、どちらも1台のアクティブルータのみがトラフィックを処理します。対照的に、GLBPは複数のルータが仮想ゲートウェイとして機能し、トラフィックを負荷分散することで、ネットワーク全体の効率を向上させます。

GLBPの特徴:

  • 負荷分散: GLBPは、複数のルータが仮想ゲートウェイを共有し、トラフィックを負荷分散します。これにより、各ルータのトラフィック負担が均等になり、全体のネットワークパフォーマンスが向上します。
  • 仮想IPと仮想MACアドレス: GLBPも仮想IPアドレスを使用しますが、各ルータには異なる仮想MACアドレスが割り当てられ、負荷分散が実現されます。
  • 優先順位とアクティブルータ: GLBPでは、1台のルータが「Active Virtual Gateway(AVG)」として機能し、他のルータが「Active Virtual Forwarder(AVF)」としてトラフィックを分担します。

GLBPは、冗長性だけでなく、ネットワーク負荷の分散にも寄与するため、大規模なネットワークやトラフィックが多い環境において非常に効果的です。

FHRPの選択基準

  • HSRP: 主にCisco機器に特化した環境で使用されます。シンプルな冗長性の提供が求められる場合に適しています。
  • VRRP: 異なるベンダーの機器を使用している場合、または標準化されたプロトコルが必要な場合に選ばれます。HSRPと同様の機能を提供しますが、マルチベンダー環境に適しています。
  • GLBP: ネットワークの負荷分散が必要な場合に使用されます。複数のルータを効率的に活用できるため、トラフィック負荷が高いネットワークに最適です。

結論

FHRP(First Hop Redundancy Protocol)は、ネットワークの冗長性を確保し、ルータ障害によるサービス中断を防ぐための重要なプロトコルです。HSRP、VRRP、GLBPの各プロトコルは、それぞれ異なる特性と機能を持ち、使用する環境や要求されるネットワーク性能によって選択されます。冗長性だけでなく、負荷分散機能を提供するGLBPは、大規模なネットワークにおいて非常に有効な選択肢となります。

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