GNS3(Graphical Network Simulator-3)は、ネットワークのシミュレーションとトラブルシューティングを行うための強力なツールであり、Ciscoデバイス(ルーター、スイッチ、ファイアウォールなど)の仮想化をサポートしています。CiscoのIOSv(Internetwork Operating System Virtual)を使用することで、実際のデバイスを使用せずにネットワークの設計やテストが可能となります。この記事では、GNS3 VMにCiscoのIOSvルーターやスイッチを追加する方法について詳しく説明します。
1. GNS3 VMの準備
最初に、GNS3 VMをインストールしてセットアップする必要があります。これにより、GNS3のパフォーマンスを向上させ、仮想デバイスを効率的に動作させることができます。
GNS3 VMのインストール
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GNS3公式サイトからGNS3 VMをダウンロード
GNS3の公式ウェブサイトから、使用しているOSに対応したGNS3 VMをダウンロードします。GNS3はWindows、MacOS、Linuxに対応しています。 -
仮想化ソフトウェアのインストール
GNS3 VMは仮想マシンとして動作するため、VMware WorkstationまたはOracle VirtualBoxなどの仮想化ソフトウェアが必要です。これらのソフトウェアも公式サイトからダウンロードしてインストールします。 -
GNS3 VMのインポート
ダウンロードしたGNS3 VMの仮想マシンイメージを仮想化ソフトウェアにインポートします。インポート後、仮想マシンを起動して、ネットワーク設定を確認します。 -
GNS3とGNS3 VMの接続
GNS3アプリケーションを起動し、「Preferences」(設定)メニューからGNS3 VMを有効にします。これにより、GNS3とGNS3 VMが連携し、仮想デバイスを管理できるようになります。
2. Cisco IOSvのダウンロードとインストール
Cisco IOSvは、Ciscoデバイスのエミュレーションを提供する仮想化されたIOSイメージです。これを使用することで、実際のCiscoルーターやスイッチの動作を模擬することができます。
IOSvの入手方法
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Ciscoの公式サイトからIOSvをダウンロード
Ciscoの公式サポートサイト(Cisco Software Download)からIOSvをダウンロードする必要があります。IOSvのダウンロードにはCiscoのアカウントと、サポート契約が必要です。 -
適切なバージョンの選択
IOSvのバージョンにはいくつかのオプションがありますが、一般的には「iosv-15.6」などの安定したバージョンを選択します。
IOSvイメージの準備
ダウンロードしたIOSvイメージ(.binファイル)は、GNS3 VM上で使用するために適切に配置する必要があります。通常、GNS3の「projects」フォルダー内に「iosv」などの名前で専用フォルダーを作成し、そこに配置します。
3. IOSvの設定とGNS3への追加
GNS3にIOSvを追加する
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GNS3を開く
GNS3アプリケーションを起動します。 -
デバイスの追加
GNS3の「Devices」パネルを開き、「New」ボタンをクリックして新しいデバイスを作成します。「Router」オプションを選択し、「IOSv」を選びます。 -
IOSvイメージの指定
新しいデバイスの作成画面で、先ほどダウンロードしたIOSvのイメージファイル(.bin)を指定します。この際、イメージファイルの場所を正確に指定する必要があります。 -
IOSv設定のカスタマイズ
必要に応じて、メモリサイズやCPUの設定を変更することができます。GNS3では通常、IOSvルーターには最低でも1GBのメモリを割り当てることをお勧めします。 -
GNS3 VMでの起動確認
設定が完了したら、作成したIOSvルーターをGNS3のキャンバスにドラッグ&ドロップします。仮想マシンがGNS3 VM上で正常に起動することを確認してください。
IOSvの起動と基本設定
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IOSvルーターを起動
作成したIOSvルーターをGNS3キャンバス上で右クリックし、「Start」を選択して起動します。 -
コンソール接続
起動したルーターにコンソール接続を行います。GNS3内で「Console」ボタンをクリックすると、IOSvのCLI(コマンドラインインターフェース)にアクセスできます。 -
初期設定の実行
初めてIOSvを起動すると、初期設定が求められます。基本的なネットワーク設定を行い、ルーターのインターフェースを設定します。
4. Cisco IOSvスイッチの設定
IOSvスイッチも同様の手順でGNS3に追加できます。ただし、スイッチングの機能を提供するために、少し異なる設定が必要です。IOSvスイッチは、VLANやSTP(Spanning Tree Protocol)、スイッチポートの設定などをサポートしています。
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スイッチの作成
GNS3で新しいデバイスを追加する際、ルーターと同じ方法で「Switch」を選択し、IOSvイメージを指定します。 -
スイッチ設定
スイッチが起動したら、スイッチポートの設定やVLANの作成を行います。例えば、VLANを設定する場合、以下のコマンドを入力します。bashSwitch1# configure terminal Switch1(config)# vlan 10 Switch1(config-vlan)# name "Sales" -
インターフェースの設定
スイッチの各ポートに対して設定を行います。例えば、以下のようにポートにVLANを割り当てることができます。bashSwitch1(config)# interface FastEthernet0/1 Switch1(config-if)# switchport mode access Switch1(config-if)# switchport access vlan 10
5. ネットワークのテストと検証
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pingテスト
各デバイスの接続が正しく行われているかを確認するため、pingコマンドを使用して接続テストを行います。 -
トラフィックのシミュレーション
他の仮想デバイスと通信し、ネットワークの動作を確認します。例えば、ルーター間での静的ルーティングやダイナミックルーティング(RIP、OSPF、EIGRPなど)の設定を行い、ルーティングが正しく機能するかを確認します。
結論
GNS3でCisco IOSvを利用することで、実際のCiscoルーターやスイッチの動作を仮想環境で再現でき、学習やテストが効率的に行えます。GNS3 VMを使用することでパフォーマンスが向上し、複雑なネットワーク設計や構成のシミュレーションが可能となります。この記事で紹介した手順に従って、GNS3にIOSvルーターやスイッチを追加し、ネットワークの設計やトラブルシューティングを行ってください。
