デジタル庁は2026年10月21日、Excelなどの表が機械に読みやすい形になっているかを点検するツール「Harunobu」を公式ブログで紹介しました。印刷すると整って見える表でも、集計やAIでの利用に向くとは限りません。セル結合や複雑な見出しを、データとしてどう扱うかが今回の話題の中心です。
この記事ではHarunobuの役割と限界を整理し、職場でExcelを見直す際の具体例を紹介します。ツールの説明は公式資料に基づき、売上表の整理方法や確認チェックリストは編集部の提案です。本記事で実際の業務ファイルを採点したわけではなく、点数や処理時間の実測結果は掲載していません。

Harunobuとは何をするツールか
Harunobuは、行政データの機械可読性に関するルールを基に、Excel、CSV、TSVの状態を点検するツールです。デジタル庁の案内では、100点満点の採点とともに、問題のある箇所や理由を確認できます。読み取りやすさの改善に向けて、どこから調べるかを把握する用途が中心です。
重要なのは、表の内容が正しいかを全面的に保証するツールではないという点です。例えば、売上額を一桁間違えて入力しても、表の形としては問題が見つからない場合があります。構造の点検と、数字や意味の検証は、別の作業として残ります。
機械可読性を身近な例で考える
人は、色、余白、枠線、見出しの位置から表の意味を推測できます。しかし、プログラムへ「この赤い行は合計で、右側の小さな表は注釈」と当然に伝わるとは限りません。データの意味を、見た目だけに依存しない形で持たせることが必要になります。
例えば「4月」「売上」「東京」という情報が複数の結合セルに分かれていると、人には読めても、一行ずつ取り込む処理には追加の判断が必要です。行と列の意味を一定にすれば、集計や別システムへの受け渡しを説明しやすくなります。
印刷用の帳票とデータ用の表を分ける
申請書や報告書には、印刷して読みやすい配置が求められることがあります。それ自体をすべて捨てる必要はありません。元になるデータを整理し、そこから帳票を作る形にすると、人が読む目的と集計する目的を両立しやすくなります。
現場でまず考えたいのは、入力、保存、印刷が一枚のシートへ集中していないかです。見た目を整えるための空白行が、集計時にはデータの区切りと誤認されることがあります。どのシートが正式な保存先かを決めるだけでも、担当者間の行き違いを減らせます。
売上表を整理する前後の具体例
ここでは架空の小さな売上管理を考えます。元の表は、月ごとに大きな見出しがあり、その下に東京店と大阪店の数字が並び、最後に合計行が付いているとします。このまま一年分を横へ増やすと、月が変わるたびに列の位置を意識した処理が必要です。
整理後は、日付、店舗、商品区分、金額という列を置き、一行に一つの記録を入れる形を候補にできます。月や店舗を列の位置で表すのではなく、値として持つ考え方です。合計や月別の見せ方は、集計する側で作ります。
| 確認する項目 | 扱いにくい例 | 整理の候補 |
|---|---|---|
| 店舗名 | 上の結合セルに一度だけ書く | 必要な各行に店舗を明示する |
| 金額の単位 | 表の外に「千円」とだけ書く | 列名や定義書で単位を固定する |
| 合計 | 明細と同じ列に混在する | 明細と集計結果を分ける |
| 欠けた値 | 空欄、横棒、ゼロを混ぜる | それぞれの意味を定義して使う |
これは、すべての表に同じ形式を強制する例ではありません。業務上の意味や記録の単位に合わせて設計します。一行を一商品にするか、一取引にするかが曖昧なまま形だけ変えると、後から合計が合わなくなる原因になります。
セル結合を外す前に意味を確認する
結合セルを解除すると、値が左上のセルだけに残り、ほかが空欄になる場合があります。その空欄を機械的に下へ埋めれば正しいとは限りません。途中に小計や別の見出しがあると、異なるグループへ同じ値を入れてしまうおそれがあります。
まず、結合が何を示すかを確認します。店舗、地域、年月などの分類なのか、印刷上の飾りなのかで扱いが違います。少数の行で変換前後を比較し、元の表を知る担当者に意味が一致するか確認してから、範囲を広げます。
日付、コード、単位は見た目以上に重要
日付には、年月日、年月だけ、会計年度など、異なる情報があります。元の値が「2026年度」なのに、変換後に特定の日付へ置き換えると、持っていなかった精度を作ってしまいます。変換する前に、何を表しているかを定義しましょう。
店舗番号や郵便番号のようなコードは、数字に見えても計算する量ではありません。先頭のゼロを落とすと別の値になる場合があります。金額の単位も、円と千円、税込と税抜を混ぜないよう、列名だけでなく説明書に残すと受け渡しがしやすくなります。
空欄とゼロを同じにしない
空欄には、未入力、不明、対象外、未集計など、複数の意味があり得ます。一律にゼロへ変えると、「売上がない」と「まだ集計していない」を区別できなくなります。修正の前に、元の担当者へ確認する項目として扱います。
分からない値をAIに推測で補わせることも避けます。表の形を整える作業と、欠けた事実を新しく決める作業は違います。確認できないものは、その状態を分かる形で残し、後から追跡できるようにします。
Harunobuの導入時に知っておきたいこと
公式リポジトリには、ブラウザ画面、コマンドライン、Pythonからの利用方法が案内されています。ブラウザで操作する方法にも実行環境の準備が必要であり、公式サイトへ誰でも業務ファイルを送ればよい、というサービスだと受け取らないようにします。
利用する場合は、現在のREADMEと既知の制限事項を確認し、社内の担当者と環境を準備します。記事の画面や過去の手順だけで判断せず、使う版、設定、入力ファイルの形式をそろえます。再現性を確かめる際には、同じ条件で比較することが大切です。
最初は公開可能なサンプルで試す
初回の試行には、実際の顧客名や個人情報を含まないダミーの表を使うと、結果の読み方に集中できます。わざと空白行や結合セルを入れた小さな例を作り、どこが指摘されるかを確かめます。いきなり大量の本番ファイルへ処理を広げないようにします。
サンプルが扱えたら、元データを複製し、保存場所と変更履歴を決めてから実際のファイルへ進みます。元ファイルを上書きせず、変換前、変換用プログラム、変換後、確認結果を一組で残すと、後から見直しやすくなります。
AIと組み合わせるなら修正の条件を先に決める
デジタル庁の公式ブログは、採点結果を基にAIへ整形プログラムを作らせ、実行後に再点検する例を紹介しています。採点と修正は同じ機能ではなく、Harunobuだけで元の業務データが自動的に正しく完成するわけではありません。
職場で試すなら、AIへ渡す前に「数値を変更しない」「不明な値を補わない」「元行との対応を残す」など、変換の条件を決めます。見た目が整ったかだけではなく、どの情報を保ち、どの情報を別の場所へ移したかを説明できることを目標にします。
変換指示の組み立て方
指示は、目的、入力の意味、変更してよいこと、変更してはいけないこと、確認方法の順に整理できます。例えば「店舗ごとの月次集計に使うため、見出しを列へ移す。ただし明細金額は変更せず、合計行を明細に含めない。変換前後の店舗別合計を比較する」という形です。
この例は、そのまま実データに適用する万能の指示ではありません。表ごとに行と列の意味が違うので、曖昧な箇所は人が確認します。AIの出力へもっともらしい説明が付いていても、元データとの比較を省く理由にはなりません。
修正後に行う検証チェックリスト
採点の改善は一つの結果ですが、業務として正しく使えるかは別に確認します。変換前後で行数が変わる場合には、その理由を説明できる必要があります。見出しや小計を除いたから減ったのか、明細を落としてしまったのかを区別しましょう。
- 対象期間と店舗、部署などの範囲が変わっていないか。
- 元の明細と、変換後の行の対応を追えるか。
- 金額や件数の合計が、意図した単位で一致するか。
- 日付、先頭ゼロ、空欄、負の値が保たれているか。
- 注釈やコード表が、別の場所でも参照できるか。
- 同じ手順を再実行したときに、重複が増えないか。
合計が一致しても、店舗間で値が入れ替わっている可能性は残ります。全体の合計だけでなく、月別、店舗別、商品区分別など、業務上重要な切り口でも比べます。少数の行を目視で追う確認と、全件をまとめる確認を組み合わせます。
点数を人や部署の評価へ直結させない
表が複雑になった背景には、過去の提出様式、印刷要件、別部署からの依頼などがあるかもしれません。低い点数だけを示して担当者を責めると、改善に必要な知識が共有されにくくなります。まず何に使う表なのかを聞き、変えられる部分を一緒に探します。
改善の優先順位は、利用回数、作業時間、間違いが起きたときの影響を考えて決めます。ほとんど使わない古い帳票より、毎月何度も転記する表を先に整える方が役立つ場合があります。点数は判断材料の一つとして使います。
機密情報と外部AIの扱い
採点する環境が手元にある場合と、外部のAIへファイルを送る場合では、データの扱いが変わります。個人情報、契約情報、未公開の売上などを含む表は、組織の利用ルールと契約条件を確認します。列を一つ消すだけでは、個人や取引先を推測できる情報が残る場合もあります。
社内で承認された環境がない場合は、公開データやダミーデータで手順だけを検討する方法があります。実ファイルへ進める条件を先に決めておくと、便利さだけで送信先を選ばずに済みます。検証結果や変換履歴にも元の情報が含まれ得るため、保存場所をそろえましょう。
よくある質問
HarunobuはAIが直接点数を決めるのですか?
基本はルールに基づく判定で、公式資料にはAI補完の選択肢も案内されています。使う設定を確認し、すべてが同じ方式だと考えないようにします。
100点なら数字も正しいと考えてよいですか?
いいえ。機械可読性の点検と、業務上の内容の正しさは別です。元資料との照合や、合計、定義、単位の確認が必要です。
ExcelをすべてCSVへ変えれば解決しますか?
形式だけ変えても、列の意味や欠損値が曖昧なら問題は残ります。文字コード、日付、コードの先頭ゼロなど、受け渡し先での解釈も確認します。
何から着手すればよいですか?
転記や集計を繰り返している表を一つ選び、用途、記録の単位、列の意味を整理します。公開可能なサンプルで点検を試し、元データを残したまま小さく改善しましょう。
公式資料と関連記事
- デジタル庁公式ブログ:Excelの機械可読性を判定するHarunobu
- デジタル庁:Harunobuの概要と利用方法
- 公式GitHub:README、実装、既知の制限事項
- AIによる学習支援を使う際の確認ポイント:SIRUSの例
確認日:2026年10月21日。仕様や導入方法は更新される場合があります。本文の売上表、変換指示、導入手順は編集部による説明用の例であり、実ファイルでの動作を保証するものではありません。
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