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HDLCプロトコルの完全ガイド

HDLC(High-Level Data Link Control)は、データリンク層で使用される通信プロトコルで、データ通信の信頼性を高めるために設計されました。このプロトコルは、ISO(国際標準化機構)によって標準化されており、特にシリアル通信で広く使用されています。HDLCは、点対点の接続や多地点接続において効率的なデータ転送を提供し、エラー検出および訂正、フロー制御、データリンクの管理などの機能を備えています。

HDLCの基本概念

HDLCは、データリンク層で機能するプロトコルとして、データの送受信を安定化させ、エラーのない通信を実現するために設計されました。以下は、HDLCの基本的な構成要素です:

  1. フレーム構造
    HDLCはデータを「フレーム」と呼ばれる単位で送信します。フレームは、データの開始から終了までを表す一定の構造を持っています。HDLCのフレームには次の要素が含まれます:

    • 開始ビットと終了ビット:HDLCフレームの開始と終了を示す特定のビットパターン(通常は「01111110」)があります。
    • アドレスフィールド:データを送信する相手先のアドレスを示します。
    • 制御フィールド:通信の種類(例えば、データ送信、制御、確認応答など)を示します。
    • データフィールド:実際のデータが含まれています。
    • CRCフィールド(誤り検出):エラーを検出するために使用される循環冗長検査(CRC)によって生成されたチェックサムです。
  2. フレームのタイプ
    HDLCには、主に以下の3つのフレームタイプがあります:

    • 情報フレーム(Iフレーム):データの転送に使用されます。
    • 確認応答フレーム(Sフレーム):制御のために使用され、エラー検出やフロー制御に関する情報を提供します。
    • 無効化フレーム(Uフレーム):制御目的で使用され、接続の管理やエラーハンドリングに関連する情報を含みます。

HDLCの動作

HDLCは、次のような動作を通じてデータの送受信を行います:

  1. ビットストリームの同期化
    HDLCは、データのフレームを識別するために、特定のビットパターンを使用して送信するデータを同期します。これにより、受信側はデータの開始と終了を認識できます。

  2. フロー制御
    データの転送速度が適切であることを保証するために、HDLCはフロー制御のメカニズムを提供します。これにより、送信者と受信者の間でデータが効率的に転送されます。

  3. エラー検出と訂正
    HDLCは、エラーが発生した場合にそれを検出するための仕組みを提供します。CRCを使用してデータの整合性をチェックし、エラーが見つかった場合には再送信を要求します。

  4. リンク管理
    HDLCは、通信リンクの管理を行います。リンクがアクティブであることを確認し、必要に応じてリンクの設定を変更します。

HDLCのバリエーション

HDLCには、標準バージョンの他にいくつかの派生プロトコルがあります。主なバリエーションとして以下が挙げられます:

  1. SDLC(Synchronous Data Link Control)
    SDLCは、IBMによって開発されたHDLCの前身で、主にIBMの通信システムで使用されていました。HDLCと非常に似ていますが、いくつかの制限があり、主にIBMのネットワーク環境に特化していました。

  2. PPP(Point-to-Point Protocol)
    PPPは、HDLCに基づいていますが、インターネット接続やVPN(仮想プライベートネットワーク)などの広域ネットワーク環境で使用されるように拡張されています。PPPは、HDLCのフレーム構造を利用しつつ、IPアドレスなどの高層プロトコルのための拡張を提供します。

  3. LAPB(Link Access Procedure, Balanced)
    LAPBは、HDLCのバランス型バージョンで、特にX.25ネットワークで使用されます。LAPBは、バランス型の通信をサポートしており、SDLCやHDLCの機能に加えて、トラフィック制御のための追加機能を提供します。

  4. HDLC-like Protocols(HLAP)
    HDLCに似たプロトコルも多く存在します。これらは、HDLCの基本的な構造を維持しつつ、特定のニーズに合わせて変更を加えたものです。例えば、異なる通信メディアに対応するために調整されたプロトコルが考えられます。

HDLCの利点とデメリット

HDLCは、信頼性と効率性を提供するプロトコルですが、いくつかの利点とデメリットも存在します。

利点

  • 高い信頼性:エラー検出機能(CRC)や再送信要求を使用することにより、データ転送の信頼性を確保します。
  • フロー制御:送信速度を調整する機能により、受信側が過負荷にならないようにします。
  • 多用途:さまざまな通信環境やプロトコルで利用可能であり、ネットワーク構成の柔軟性があります。

デメリット

  • オーバーヘッド:HDLCのフレーム構造には多くの管理情報が含まれるため、通信のオーバーヘッドが大きくなる場合があります。
  • リアルタイム性の欠如:リアルタイムでのデータ転送が必要なアプリケーションには、遅延が問題となることがあります。

結論

HDLCは、信頼性の高いデータリンク制御を提供する通信プロトコルで、特にシリアル通信において重要な役割を果たします。データの転送、エラー検出、フロー制御、リンク管理といった基本的な機能を提供し、さまざまな通信環境に適用可能です。また、HDLCに基づいた派生プロトコルも多く存在し、それぞれのニーズに応じて最適な通信方式を選ぶことができます。

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