エイズ(HIV感染症)の進行は、免疫系がどのように影響を受けるかによって段階的に進行します。この病気の進行は、HIVウイルスが体内に入ることから始まり、最終的に免疫系を著しく弱体化させ、エイズ(後天性免疫不全症候群)に至ります。ここでは、HIV感染がどのように進行するのか、各段階について詳しく説明します。
1. 初期感染(急性HIV感染)
HIVが体内に感染すると、最初の数週間は急性HIV感染と呼ばれる段階が続きます。この段階では、ウイルスが急速に体内で増殖し、免疫系がそれに対抗するために反応します。急性HIV感染の症状は、インフルエンザのような症状に似ており、発熱、喉の痛み、筋肉痛、リンパ節の腫れ、発疹などが見られることがあります。多くの人々はこの症状を風邪やインフルエンザと誤認するため、この段階でHIV感染に気づかないことが一般的です。

この時期はウイルスが非常に高いレベルで体内に存在するため、感染力が強く、他人に感染させるリスクも高いです。
2. 無症候期(慢性HIV感染)
急性感染後、症状が落ち着くと、HIVは無症候期に移行します。この段階では、症状はほとんど現れませんが、ウイルスは体内で活動を続けており、少しずつ免疫系を弱体化させています。無症候期は通常10年程度続くことがありますが、この期間には個人差があり、薬物治療を受けていない場合、HIVがより急速に進行することもあります。
この段階では、CD4細胞(免疫系の重要な細胞)数が徐々に減少しますが、感染者は特に目立った症状を感じることなく生活することができます。しかし、治療を受けていないと、免疫系が弱まり、他の病気にかかりやすくなるため、早期に治療を開始することが重要です。
3. エイズ(後天性免疫不全症候群)
無症候期を経て、免疫系が著しく弱まると、エイズと診断される段階に至ります。エイズは、HIVが進行し、免疫系がほぼ完全に機能しなくなる段階であり、感染者は重篤な合併症に見舞われることが多くなります。
エイズの段階では、CD4細胞数が非常に低く、通常は200個/mm³未満になります。この段階では、風邪やインフルエンザのような軽度の感染症でも重篤になりやすく、特に以下のような病気や感染症が発生します:
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結核
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カンジダ症
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サイトメガロウイルス感染症
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脳炎や肺炎
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一部の癌(例:カポジ肉腫)
また、エイズの段階では、免疫力が極端に低下しているため、体のさまざまな器官に感染症が広がり、体力が著しく低下します。治療を受けていない場合、エイズに至ると、生命の危機を迎えることが多く、適切な医療が必要です。
4. 治療と予防
HIV感染は、現在のところ完全に治癒することはありませんが、抗レトロウイルス療法(ART)を受けることで、ウイルスの増殖を抑制し、免疫系の回復を促進することが可能です。この治療法は、HIVの進行を遅らせ、エイズに至ることを防ぐために非常に効果的です。
ARTを受けることによって、HIV感染者は通常の生活を送ることができ、ウイルスの伝播も大幅に減少します。さらに、HIVの感染拡大を防ぐための予防策として、プレポジション療法(PrEP)も有効です。これにより、HIVに感染するリスクを大幅に減少させることができます。
結論
HIV感染は、免疫系に深刻な影響を与え、最終的にはエイズに至る可能性がありますが、適切な治療を受けることで、感染の進行を防ぐことができます。早期にHIVに気づき、治療を開始することが、健康を守り、生活の質を向上させるために重要です。また、予防策を講じることで、HIVの拡大を防ぎ、エイズを未然に防ぐことが可能です。