ネットワーク

HSRP、VRRP、GLBPの違い

Redundancy(冗長性)とHSRP、VRRP、GLBPの違いについて

ネットワーク設計における冗長性(Redundancy)は、システムの可用性を高めるために重要な概念です。冗長性とは、ネットワークやシステムが故障した場合でもサービスが途切れないようにするために、バックアップの経路や装置を用意することです。特に、ルーティングやゲートウェイ設定においては、冗長性を確保するために複数の方法が存在します。代表的なものとして、HSRP(Hot Standby Router Protocol)VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)、**GLBP(Gateway Load Balancing Protocol)**があります。これらのプロトコルは、複数のルーターを冗長化し、ネットワークの信頼性を向上させるために使用されますが、それぞれ異なる動作特性や用途があります。

1. Redundancy(冗長性)の重要性

冗長性は、ネットワークインフラの信頼性を高め、ネットワークのダウンタイムを最小限に抑えるために欠かせません。特に、インターネット接続や重要なアプリケーションが依存するルーターやゲートウェイが故障した場合、システム全体の可用性に大きな影響を及ぼします。このような状況に対応するために、冗長な経路や機器を設定しておくことが求められます。

一般的に冗長性を確保する方法として、スタンバイ機器の設置複数の経路の設定が挙げられます。これらの方法を使用することで、主設備が故障しても、迅速にバックアップ機器や経路に切り替わり、サービスの継続が可能になります。

2. HSRP(Hot Standby Router Protocol)

HSRPは、Cisco独自のプロトコルで、複数のルーターを冗長化するために使用されます。HSRPを使用することで、ネットワークに一つの仮想的なゲートウェイIPアドレスを設定することができ、実際のルーターが故障しても、ネットワークの接続が維持されます。

HSRPの動作:

  • 複数のルーターが「スタンバイ」状態で待機し、一台のルーターがアクティブとして動作します。

  • クライアントは仮想IPアドレスを使用してアクセスしますが、実際に応答するのはアクティブルーターです。

  • アクティブルーターがダウンすると、スタンバイルーターがアクティブに切り替わります。

HSRPの特徴として、以下の点が挙げられます:

  • アクティブ/スタンバイ方式:一度に一台のルーターしかアクティブになりません。

  • 冗長化:ルーターが複数台存在することによって、可用性が向上します。

  • 仮想IPアドレス:ユーザー側は仮想IPアドレスを使用し、物理的なルーターのIPアドレスは意識しません。

3. VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)

VRRPは、IETF(Internet Engineering Task Force)によって標準化されたプロトコルで、HSRPと同じ目的で使用されますが、Ciscoに依存しないため、他のベンダーでも使用可能です。HSRPと非常に似た機能を提供しますが、若干の動作の違いがあります。

VRRPの動作:

  • VRRPも、複数のルーターを冗長化し、仮想IPアドレスを使用して、ネットワーク接続を維持します。

  • アクティブルーターがダウンした場合、次の優先度が高いルーターがアクティブになります。

VRRPの特徴:

  • マスター/バックアップ方式:VRRPでは「マスター」ルーターがアクティブで、他のルーターはバックアップとして待機します。

  • マスタールーターの選定:最も優先度が高いルーターがマスターになります。

  • マルチベンダー対応:VRRPはベンダーに依存せず、複数の機器間で互換性があります。

4. GLBP(Gateway Load Balancing Protocol)

GLBPは、HSRPやVRRPと同じくルーター冗長化のためのプロトコルですが、最も大きな特徴はロードバランシング機能を備えている点です。GLBPは、単に冗長化するだけでなく、複数のルーターを使用してトラフィックの負荷を分散することができます。

GLBPの動作:

  • GLBPでは、複数のルーターが「アクティブ」な状態で動作し、トラフィックを分散します。

  • 各ルーターは異なる仮想MACアドレスを持ち、それぞれが異なる負荷を担当します。

GLBPの特徴:

  • ロードバランシング:一度に複数のルーターがアクティブとして動作し、トラフィックの負荷を分散します。

  • 複数のゲートウェイ:複数のルーターが仮想ゲートウェイの役割を果たし、可用性とパフォーマンスが向上します。

  • 冗長性と負荷分散:冗長化だけでなく、ネットワーク全体の負荷分散も可能です。

5. HSRP、VRRP、GLBPの違い

特徴 HSRP VRRP GLBP
目的 冗長性確保 冗長性確保 冗長性確保、ロードバランシング
アクティブ/スタンバイ方式 あり あり あり(ただし、複数のアクティブルーター)
ロードバランシング なし なし あり
対応機器 Cisco専用 複数ベンダー対応 Cisco専用
冗長化の構造 1台のアクティブルーター、複数のスタンバイルーター 1台のマスタールーター、複数のバックアップルーター 複数のアクティブルーター
仮想IPアドレス あり あり あり

6. まとめ

冗長性は、ネットワークの信頼性と可用性を高めるために非常に重要な役割を果たします。HSRP、VRRP、GLBPはすべてルーター冗長化のためのプロトコルですが、それぞれに異なる特徴があります。HSRPとVRRPは冗長化の基本的な機能を提供し、GLBPはさらに進んでトラフィックの負荷分散を実現します。どのプロトコルを選択するかは、ネットワークの規模や要求に応じて決定する必要があります。

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