Active Directory(AD)は、企業や組織においてユーザー、コンピューター、プリンター、アプリケーションなどのリソースを管理するためのディレクトリサービスです。ADは、MicrosoftのWindows Serverオペレーティングシステムに組み込まれており、ネットワーク上でリソースへのアクセスを制御し、セキュリティを維持する重要な役割を果たします。
本記事では、Hyper-Vを使用してActive Directoryをセットアップする方法について、詳細かつ包括的に解説します。これにより、仮想化環境でADを効果的に管理し、テスト環境や本番環境での利用に備えることができます。

1. Active Directoryとは
Active Directoryは、ネットワーク上のリソースを一元的に管理し、ユーザー認証やアクセス権限の管理を行うためのサービスです。Windows Serverに含まれるADは、ドメイン、組織単位(OU)、グループ、ユーザーなどのリソースを管理します。ADは、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)というプロトコルを使用して、リソース間でデータをやり取りします。
2. Hyper-V環境の準備
Hyper-Vは、Microsoftの仮想化プラットフォームで、物理サーバー上で複数の仮想マシン(VM)を作成し、実行することができます。これを使用すると、実際の物理サーバーを使用せずに、仮想環境でADをテストしたり、開発したりすることが可能です。
まず、Hyper-Vがインストールされていることを確認します。Windows Server 2016以降では、Hyper-Vの役割を簡単に追加することができます。
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Hyper-Vのインストール手順:
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サーバーマネージャーを開き、[役割と機能の追加]を選択します。
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[役割]タブで「Hyper-V」を選択し、インストールを進めます。
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インストールが完了したら、サーバーを再起動します。
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3. 仮想マシンの作成
Active Directoryをインストールするために仮想マシンを作成します。以下の手順で仮想マシンを作成します。
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仮想マシンの作成手順:
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Hyper-Vマネージャーを開き、[新規] > [仮想マシン]を選択します。
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仮想マシンに名前を付け、適切な設定(メモリ、CPU、ハードディスク容量など)を選びます。
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インストールするオペレーティングシステム(Windows Server 2019またはそれ以降)を選択し、インストールメディアを指定します。
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仮想マシンの起動:
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仮想マシンが作成されたら、[起動]をクリックして仮想マシンを起動します。
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Windows Serverが起動したら、インストールを進めてサーバーの設定を行います。
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4. Active Directoryのインストール
次に、仮想マシン内でActive Directoryをインストールします。以下の手順でインストールを行います。
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Active Directoryのインストール手順:
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サーバーマネージャーを開き、[役割と機能の追加]を選択します。
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[Active Directoryドメインサービス(AD DS)]を選択し、インストールを進めます。
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インストールが完了したら、[Active Directoryの構成]を選択して、ドメインコントローラーの設定を行います。
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ドメインの作成:
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新しいドメインを作成する場合は、[新しいフォレストを作成]を選択し、ドメイン名を入力します。
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ドメインコントローラーの設定を進め、設定内容を確認後、インストールを完了します。
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インストールが終了したら、サーバーを再起動します。
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5. ドメインコントローラーの確認
再起動後、仮想マシン内でドメインコントローラーとして正常に機能しているかを確認します。
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ドメインコントローラーの確認手順:
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サーバーマネージャーを開き、[AD DS]を選択して、ドメインコントローラーの状態を確認します。
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コマンドプロンプトで「
dcdiag
」コマンドを実行し、ドメインコントローラーの診断を行います。
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6. ユーザーアカウントの作成
Active Directoryが正常にセットアップされたら、ユーザーアカウントを作成してみましょう。ユーザーアカウントの作成は、ADの管理ツールを使用して行います。
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ユーザーアカウントの作成手順:
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[Active Directoryユーザーとコンピューター]を開き、右クリックで[新規作成] > [ユーザー]を選択します。
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必要な情報(ユーザー名、パスワードなど)を入力し、[完了]をクリックします。
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7. クライアントマシンの参加
最後に、クライアントマシンをドメインに参加させます。これにより、クライアントマシンもADの管理下に入ります。
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クライアントマシンのドメイン参加手順:
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クライアントマシンの[システムのプロパティ]を開き、[コンピュータ名]タブから[変更]を選択します。
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ドメイン名を入力し、ドメインに参加します。
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必要に応じて、ドメイン管理者の資格情報を入力します。
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8. 結論
Hyper-V環境を使用してActive Directoryをセットアップすることで、仮想化環境でADの動作をテストしたり、構成を変更したりすることが容易になります。これにより、実際の本番環境に影響を与えることなく、ADの設定や管理に慣れることができます。また、仮想環境でADを学ぶことで、ネットワーク管理のスキルを高めることができます。
この手順を踏むことで、Active Directoryの基本的なセットアップと運用が理解でき、効果的に管理するための基盤を作ることができます。