プログラミング

IndexedDB完全ガイド

IndexedDBとは何か?完全解説

IndexedDBは、ウェブブラウザ内に構造化データを保存できる、クライアントサイドのデータベースである。大規模なデータをローカルに保存し、オフラインでの利用を可能にするために設計されている。これはリレーショナルデータベースとは異なり、オブジェクトストアにデータを格納し、キーとバリューのペアで管理する点が特徴だ。この記事では、IndexedDBの基礎から応用、メリット・デメリット、使用方法、注意点に至るまで、徹底的に解説していく。

IndexedDBの誕生と背景

従来、ウェブアプリケーションがデータをクライアント側に保存するためには、localStoragesessionStorageが使用されてきた。しかし、これらは保存できるデータ量が数メガバイト程度に制限され、また単純な文字列データしか扱えないという制約があった。そのため、より大規模かつ複雑なデータ構造を効率よく保存・検索できる仕組みが求められ、IndexedDBが開発された。最初の仕様は2010年に策定され、現在ではGoogle Chrome、Mozilla Firefox、Safari、Microsoft Edgeなど、主要なブラウザでサポートされている。

IndexedDBの特徴

  1. 非同期処理

    IndexedDBは、データベース操作を非同期で行う。これにより、大量のデータを読み書きしてもブラウザのメインスレッドをブロックせず、アプリケーションの応答性を維持できる。

  2. オブジェクトストア

    リレーショナルデータベースにおけるテーブルに相当するのがオブジェクトストアである。オブジェクトストアは、キーとオブジェクトのペアを保存し、それぞれにインデックスを作成することも可能だ。

  3. トランザクション

    データベース操作はすべてトランザクションの中で行われる。これにより、一連の操作をアトミック(不可分)に実行し、整合性を保つことができる。

  4. インデックス機能

    任意のプロパティにインデックスを付けることができ、検索性能を向上させる。これにより、巨大なデータセットからの検索も高速に行える。

IndexedDBの構成要素

構成要素 説明
データベース 複数のオブジェクトストアを持つ単位
オブジェクトストア キーとオブジェクトのペアを格納するコレクション
トランザクション 一連のデータ操作をまとめる単位
レコード オブジェクトストア内に保存される個々のデータ
キー レコードを一意に識別する値
インデックス データ検索を効率化するための、オブジェクトのプロパティに基づく索引

IndexedDBの使用例

実際のコード例を見ながら、IndexedDBの基本的な使い方を学ぼう。

データベースの作成

javascript
let request = indexedDB.open("MyDatabase", 1); request.onupgradeneeded = function(event) { let db = event.target.result; let store = db.createObjectStore("users", { keyPath: "id" }); store.createIndex("name", "name", { unique: false }); };

この例では、バージョン1のMyDatabaseを作成し、その中にusersというオブジェクトストアを作成している。各ユーザーは一意なidによって識別され、さらにnameプロパティに基づくインデックスが作成される。

データの追加

javascript
request.onsuccess = function(event) { let db = event.target.result; let transaction = db.transaction("users", "readwrite"); let store = transaction.objectStore("users"); store.add({ id: 1, name: "佐藤太郎" }); store.add({ id: 2, name: "鈴木花子" }); };

トランザクションを開始し、usersストアに新しいレコードを追加する例だ。

データの取得

javascript
let getRequest = store.get(1); getRequest.onsuccess = function(event) { console.log(getRequest.result); };

このコードでは、IDが1のユーザー情報を取得している。

IndexedDBのメリット

  • 大容量データの保存が可能

    ギガバイト単位のデータを保存できるため、大規模なアプリケーションでも問題なく運用できる。

  • 構造化データの管理

    オブジェクトベースでデータを保存でき、柔軟なデータ構造を持つことが可能。

  • オフライン対応

    インターネット接続がなくてもデータベースにアクセスできるため、PWA(プログレッシブ・ウェブ・アプリケーション)との親和性が高い。

IndexedDBのデメリットと課題

  • 学習コストの高さ

    APIが複雑で、特に非同期処理を適切に管理するためにはPromiseやasync/awaitの理解が求められる。

  • ブラウザ依存性

    ブラウザ間で実装に微妙な違いがあり、互換性問題に注意が必要である。

  • セキュリティリスク

    クライアントサイドにデータを保存する以上、XSS(クロスサイトスクリプティング)などの攻撃からの防御が必須となる。

IndexedDBと他のストレージ技術の比較

項目 IndexedDB localStorage WebSQL(非推奨)
保存容量 数百MB~数GB 約5~10MB 数十MB
データ形式 オブジェクト 文字列 SQLベース
非同期処理 あり なし あり
複雑な検索 可能 不可能 可能
サポート状況 主要ブラウザ対応 全ブラウザ対応 廃止方向

IndexedDBを使った実践的なアプリケーション例

  1. オフライン対応メモアプリ

    テキストメモをIndexedDBに保存し、オフラインでも編集・閲覧が可能なメモアプリを作成できる。

  2. ゲームのセーブデータ保存

    ゲームの進行状況をIndexedDBに保存し、ブラウザを閉じてもセーブデータを保持する。

  3. Eコマースサイトのカート機能

    商品データやショッピングカートの内容をIndexedDBに保存することで、セッションを超えてデータを維持できる。

IndexedDBを使う際の注意点

  • バージョン管理

    データベースの構造を変更する場合、バージョン番号を上げる必要がある。バージョンアップ時にはonupgradeneededイベントを適切にハンドリングしなければならない。

  • エラーハンドリング

    通信障害やストレージ制限に起因するエラーに備えて、十分なエラーハンドリングを実装する必要がある。

  • パフォーマンス最適化

    不要なトランザクションを避け、適切なインデックス設計を行うことで、データアクセスのパフォーマンスを向上させるべきである。

まとめ

IndexedDBは、モダンなウェブアプリケーションにおいて不可欠なストレージ技術である。特に、オフラインファーストなアプリケーション、リッチなクライアントサイドアプリケーションにおいて、巨大なデータを効率よく管理できる点で圧倒的なメリットを持つ。一方で、APIの複雑さやブラウザごとの差異といった課題も存在するため、使用する際は十分な設計とテストが求められる。今後、より多くのウェブアプリケーションがIndexedDBを活用することは間違いない。

参考文献

もし希望であれば、さらに具体的なコードサンプルやアプリケーション実装例も紹介できる。

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