LH（黄体形成ホルモン）は、体内で重要な役割を果たすホルモンの一つで、主に女性の生理周期において重要な影響を与えますが、男性にも関与しています。このホルモンの測定は、女性の排卵周期の理解や不妊治療において非常に重要です。以下に、LHの詳細な説明とその測定方法、臨床的な意義について述べます。
1. LHの役割
LHは、脳の下垂体前葉から分泌されるホルモンで、女性では月経周期の中で排卵を誘発する重要な役割を担っています。具体的には、LHは卵巣に働きかけ、卵胞の成熟を助け、最終的に卵胞が破裂して卵子が排出される排卵を引き起こします。男性では、LHは精巣に働きかけ、テストステロンの分泌を促進する役割を果たします。
女性におけるLHの役割
月経周期は、通常28日間程度ですが、個々の女性によって異なります。LHの分泌パターンはこの周期に密接に関連しており、特に排卵前に急激に増加することで知られています。この現象は「LHサージ」と呼ばれ、排卵を引き起こす重要な信号となります。LHの濃度が高まることによって、成熟した卵胞が破れて卵子が卵管に放出され、妊娠の可能性が生まれます。
男性におけるLHの役割
男性では、LHは精巣に存在するライディッヒ細胞に作用し、テストステロンの産生を促進します。テストステロンは、精子の生成に必要不可欠なホルモンであり、性機能にも深く関与しています。したがって、男性のLH値が正常であることは、正常なテストステロン分泌と生殖機能において重要です。
2. LHの測定方法
LHは血液検査を通じて測定されます。この検査は、特に排卵時期やホルモンバランスに問題がある場合、または不妊治療を行っている場合に行われます。女性の月経周期の特定の時期（例えば、排卵前）にLHの値を測定することが一般的です。血液中のLHレベルが急激に上昇する「LHサージ」を確認することは、排卵のタイミングを知るための有効な方法です。
LHサージの検出
排卵を予測するために、LHサージのピークを検出することが重要です。このサージは、通常月経周期の14日目前後に発生し、これを追跡することで排卵日を予測できます。LHサージが発生した時点で、精子と卵子が出会う可能性が最も高いとされ、妊娠を希望する女性にとっては、タイミングが重要となります。
男性のLH測定
男性の場合、LHの測定は主に不妊症やホルモン不均衡を調べるために行われます。精巣の機能不全やテストステロンの低下が疑われる場合、LH測定によって診断が下されることがあります。
3. LH値の異常とその原因
LHの異常値は、さまざまな疾患やホルモンの不均衡を示唆する可能性があります。以下は、LH値が異常な場合に考えられる原因です。
高いLH値
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多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）: PCOSは、女性の生殖ホルモンのバランスが乱れ、LH値が通常より高くなることがあります。この疾患では、卵巣内に多数の未成熟な卵胞が蓄積し、排卵が起こりにくくなります。
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早期閉経: 女性が40歳未満で閉経を迎える場合、卵巣機能が低下し、LH値が上昇することがあります。
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下垂体腺腫: 下垂体の異常（腺腫など）がLH分泌に影響を与えることがあります。
低いLH値
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視床下部・下垂体疾患: LHは視床下部や下垂体によって分泌されるため、これらの臓器に異常があるとLHの分泌が低下することがあります。
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ストレスや過度な運動: 過度のストレスや体重減少などが原因で、視床下部からのホルモンの分泌が低下し、LH値が低くなることがあります。
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高プロラクチン血症: 高いプロラクチンレベルがLHの分泌を抑制し、卵巣や精巣の機能に影響を与えることがあります。
4. LHの治療的利用
LHの測定は、不妊治療においても重要な役割を果たします。排卵誘発剤として、LHまたはその類似物質を用いることがあります。特に、排卵がない女性（無排卵症）や、卵巣が正常に反応しない場合に、LHやFSH（卵胞刺激ホルモン）を補充することで排卵を促すことができます。
排卵誘発治療
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クロミフェン: クロミフェンは、LHとFSHの分泌を促すことで排卵を誘発する薬剤です。これにより、卵巣が成熟し、卵胞が排卵することが可能になります。
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hCG（ヒト絨毛性ゴナドトロピン）: hCGはLHと非常に似た作用を持ち、排卵直前に投与することで、卵胞の破裂を促します。
5. まとめ
LH（黄体形成ホルモン）は、女性における排卵と男性におけるテストステロン分泌の調整において重要な役割を果たします。その測定は、生理周期の管理や不妊治療において非常に有用です。また、LHの異常値は、さまざまな内分泌疾患や生殖機能の問題を示唆することがあり、早期の診断と適切な治療が求められます。