MCHC(平均血液色素濃度)とは、赤血球内のヘモグロビン濃度を測定する指標であり、血液検査の結果でよく目にする項目です。この指標は、ヘモグロビンの量を赤血球の容積で割ったもので、血液の酸素運搬能力を評価するための重要な情報を提供します。本記事では、MCHCの概念、正常値、異常値が示す病態、測定方法、そしてMCHCがどのように診断や治療に役立つかについて詳しく説明します。
1. MCHCとは?
MCHC(Mean Corpuscular Hemoglobin Concentration)は、1つの赤血球内に含まれるヘモグロビンの濃度を示す指標です。血液中のヘモグロビンは酸素と結びつき、体の各部分に酸素を供給する役割を果たします。MCHCは、血液中のヘモグロビンの量が赤血球の容積に対してどれだけ濃縮されているかを示すもので、この値が低いと貧血の兆候がある可能性があり、逆に高い場合はヘモグロビンが過剰に濃縮されていることを示唆します。

2. MCHCの正常値
MCHCの正常範囲は一般的に32~36 g/dL(グラム/デシリットル)です。しかし、検査を行う施設や使用する機器により、正常値は多少異なる場合があります。血液検査を受ける際には、検査機関が提供する正常値の範囲を基準にすることが重要です。
正常値を超えるMCHCや低い値は、以下のような病態を示唆します。
3. MCHCが高い場合
MCHCが異常に高い場合、一般的には次のような原因が考えられます。
(1) 高色素性貧血(Hyperchromic Anemia)
高色素性貧血は、血液中のヘモグロビン濃度が異常に高くなる疾患です。これは主に赤血球の中でヘモグロビンが過剰に蓄積している状態を意味します。高MCHCは、赤血球の形態が異常である場合や、異常なヘモグロビン構造が存在する場合に見られることがあります。
(2) 脱水
脱水症状が進行すると、血液の容量が減少し、相対的に血液中の成分が濃縮されます。この場合、MCHCが高くなることがあります。これは血液の水分が減少することによって、血液中の赤血球の濃度が相対的に高くなるためです。
(3) 多血症
多血症(Polycythemia)は、赤血球が過剰に生成される状態です。この場合、赤血球の数が増加し、MCHCが高くなることがあります。
高MCHCの検出は、これらの疾患の兆候である可能性があり、追加の検査を通じて確認することが重要です。
4. MCHCが低い場合
一方、MCHCが異常に低い場合は、以下のような原因が考えられます。
(1) 貧血
貧血は、赤血球のヘモグロビン濃度が低下する病態です。MCHCが低い場合、赤血球内のヘモグロビン量が少ないことを示しており、鉄欠乏性貧血や慢性疾患による貧血の可能性があります。
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鉄欠乏性貧血:鉄が不足することでヘモグロビンの合成が阻害され、MCHCが低下することがあります。
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慢性病に伴う貧血:慢性的な病気(例えば、慢性腎疾患や慢性感染症)が原因で、赤血球の生成が低下することがあります。
(2) 球状赤血球症(Hereditary Spherocytosis)
球状赤血球症は、赤血球の形が正常な円盤状ではなく球状である遺伝性疾患です。この疾患では、赤血球内のヘモグロビン濃度が低下し、MCHCが低くなることがあります。
(3) 潜在的な血液の障害
MCHCが低い場合、何らかの血液障害が関与している可能性があり、貧血や他の血液疾患の兆候を示唆します。これには骨髄での赤血球の生成不良や、血液中の異常物質の存在が関与していることがあります。
5. MCHCの測定方法
MCHCは、通常の血液検査の一環として、自動化された血液分析機器を使用して測定されます。検査の結果、MCHCの値は、血液サンプル内のヘモグロビン量を赤血球容積で割った値として算出されます。これにより、赤血球内のヘモグロビンの濃度を定量的に把握することができます。
6. MCHCの診断への影響
MCHCは、貧血や脱水、多血症など、様々な血液の異常を示唆する有用な指標です。MCHCが高い場合や低い場合は、単独で診断を下すことはできませんが、他の血液検査の結果と併せて、医師は疾患の方向性を特定するためにMCHCを考慮します。
特に貧血が疑われる場合、MCHCは診断において重要な役割を果たします。貧血が発見された場合、そのタイプや原因を特定するために、鉄分の測定やビタミンB12、葉酸の測定、赤血球の形態観察が行われることがあります。
7. 結論
MCHCは、赤血球内のヘモグロビンの濃度を示す重要な血液検査の一つです。正常範囲内であれば特に問題はないものの、異常値が示された場合は、貧血や脱水、多血症など、さまざまな健康状態を示唆する可能性があります。MCHCの値を適切に評価することで、早期に病気の兆候を発見し、適切な治療へと導くことができます。血液検査の結果について不安な点がある場合は、医師に相談し、さらに詳細な検査を受けることが推奨されます。