PPP(Point-to-Point Protocol)は、コンピュータネットワークにおける通信プロトコルであり、特にインターネット接続を確立する際に使用されます。このプロトコルは、インターネットサービスプロバイダー(ISP)とユーザーのコンピュータ間の通信を管理し、データ転送、認証、暗号化、圧縮などの機能を提供します。PPPは、電話回線、ISDN、シリアルケーブル、さらにはVPNなど、さまざまな物理的な接続媒体で利用されます。
1. PPPの基本構造
PPPは、OSI参照モデルのデータリンク層(Layer 2)で動作し、点対点(Point-to-Point)接続におけるデータのフレーム化を行います。PPPは、主に3つの基本的なコンポーネントで構成されています:

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データフレーム
PPPは、データをフレームという単位で送受信します。これらのフレームは、送信元と宛先のアドレス、データ自体、エラーチェックのためのCRC(循環冗長検査)などを含みます。 -
リンク管理
PPPは、リンクの確立、維持、終了の過程を管理します。リンクの確立に関しては、リンク品質のチェックや認証を行い、接続が確立された後もリンクの安定性を監視します。 -
プロトコル制御
PPPは、データの圧縮や暗号化、IPアドレスの割り当てなど、データ転送の品質やセキュリティを向上させるために複数のオプションを提供します。
2. PPPの主要な機能
PPPの主な機能には、以下のようなものがあります。
2.1. リンク確立と認証
PPPは、リンクを確立する際に、認証を行うことができます。これにより、接続する相手が正当なものであるかどうかを確認できます。一般的に使用される認証方法には、PAP(Password Authentication Protocol)とCHAP(Challenge Handshake Authentication Protocol)があります。
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PAP:ユーザー名とパスワードを平文で送信する方法です。セキュリティは低いですが、設定が簡単です。
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CHAP:チャレンジ・レスポンス方式で認証を行います。認証情報が暗号化されるため、PAPよりもセキュアです。
2.2. データ圧縮
PPPは、データの転送効率を高めるために、データ圧縮をサポートしています。これにより、帯域幅の利用を最適化し、通信速度を向上させることができます。データ圧縮には、例えばV.42bis圧縮アルゴリズムがよく使用されます。
2.3. エラーチェックと修正
PPPフレームにはエラーチェックのためにCRC(循環冗長検査)が含まれています。データが正しく受信されたかどうかを確認し、エラーがあった場合には再送信を要求することができます。これにより、通信の信頼性が向上します。
2.4. 多様なプロトコルのサポート
PPPは、複数のネットワーク層プロトコル(例えば、IP、IPX、AppleTalkなど)をサポートしています。これにより、異なるネットワーク間での通信が可能となり、柔軟性が増します。PPPは、特定のプロトコルに依存せず、複数のプロトコルを同時に運用できます。
2.5. セッション管理
PPPは、リンクの確立から切断に至るまでの間、セッションを管理します。セッション中に問題が発生した場合、PPPは自動的に再接続を試みる機能を提供することもあります。
3. PPPの運用
PPPは、通常、インターネット接続などのユーザーとISP間の通信で使用されます。以下に、PPPがどのように運用されるかを簡単に説明します。
3.1. PPPセッションの開始
PPPセッションは、リンク確立のためのLCP(Link Control Protocol)によって開始されます。LCPは、リンクの設定を交渉し、認証プロセスを開始します。この段階で、接続が安定しているか、認証が正しく行われたかを確認します。
3.2. データ転送
リンクが確立されると、PPPはデータ転送を開始します。このとき、各ネットワーク層プロトコル(IPなど)は、PPPによってカプセル化されて送信されます。データは、PPPフレームにパッケージ化され、送信されます。
3.3. セッションの終了
セッション終了時、PPPはLCPを使用してリンクを終了します。これにより、接続が正しく閉じられ、リソースが解放されます。
4. PPPの利点と欠点
4.1. 利点
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柔軟性:PPPは多くの異なるプロトコルをサポートしており、異なるネットワークの接続に利用できます。
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セキュリティ:CHAP認証を使用することで、セキュアな接続を確保できます。
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エラー検出と修正:データ転送中にエラーが発生した場合、PPPはエラーチェックを行い、再送信を要求できます。
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データ圧縮:データ圧縮を行うことで、転送速度を向上させることができます。
4.2. 欠点
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複雑な設定:PPPは高度な設定が必要であり、特に認証やプロトコルの設定が複雑になることがあります。
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帯域幅の消費:データ圧縮を使用することで、帯域幅の使用効率が高まるものの、圧縮に関するオーバーヘッドが発生することもあります。
5. PPPの用途
PPPは、主にインターネット接続やVPNの接続に使用されます。また、電話回線やISDN回線、専用回線など、点対点接続が必要な場合に広く利用されています。特にダイヤルアップ接続やDSL接続など、インターネット接続の初期段階で頻繁に使用されました。
結論
PPPは、インターネット接続を確立するために広く使用されているプロトコルであり、データ転送、認証、エラーチェック、圧縮などの機能を提供します。その柔軟性と信頼性により、多くのネットワーク接続シナリオで利用されています。しかし、設定の複雑さや帯域幅の消費など、いくつかの制約もあります。