RIPng(Routing Information Protocol next generation)は、IPv6ネットワークにおける動的ルーティングプロトコルの一つです。RIPngは、RIP(Routing Information Protocol)のIPv6向けのバージョンであり、RIPの特長である距離ベクトル型ルーティングアルゴリズムを使用しています。RIPngは、IPv4用のRIPとは異なり、IPv6アドレス空間をサポートしているため、IPv6ネットワークにおいて重要な役割を果たします。
この記事では、RIPngの設定方法について、基本的な構成手順を詳しく説明します。
1. RIPngの概要
RIPngは、RIPバージョン2(RIP-2)の拡張として登場しました。RIPngは、IPv4ではなくIPv6アドレスを使用し、ネットワークのルータ間で経路情報を交換します。RIPngの主な特徴は以下の通りです:
- 距離ベクトルアルゴリズムを使用
- ルータが自分の持つルーティングテーブルを隣接ルータと定期的に交換する
- 最大ホップ数は15ホップまで
- メトリック(コスト)はホップ数であり、最小のホップ数が最適経路とされる
RIPngは、IPv6ネットワーク内のルーティングを簡単に設定できるため、規模が小さなネットワークや中小規模のネットワークにおいてよく使用されます。
2. RIPngの設定準備
RIPngを設定する前に、ネットワークの基本的な準備を整えなければなりません。以下は設定前に必要な準備です:
- IPv6アドレスの設定:各ルータのインターフェースにIPv6アドレスを割り当てる必要があります。
- ルータのインターフェースの有効化:RIPngは、ルータがインターフェースをアクティブにしている状態で動作します。
- RIPngの有効化:RIPngを使用するためには、特定のコマンドでプロトコルを有効化する必要があります。
3. RIPngの基本設定手順
以下に、RIPngを有効にするための基本的な手順を示します。
3.1 ルータのインターフェース設定
まず、各ルータのインターフェースにIPv6アドレスを設定します。ルータのインターフェース設定は、以下のコマンドで行います。
bashRouter(config)# interface gigabitethernet 0/0
Router(config-if)# ipv6 address 2001:db8:1::1/64
Router(config-if)# no shutdown
この設定により、gigabitethernet 0/0インターフェースにIPv6アドレス2001:db8:1::1/64が割り当てられ、インターフェースが有効化されます。
3.2 RIPngの有効化
次に、RIPngプロトコルをルータで有効化します。これを行うには、グローバル設定モードで以下のコマンドを使用します。
bashRouter(config)# ipv6 router rip RIPng
このコマンドにより、RIPngルーティングプロトコルがルータ上で有効化されます。
3.3 RIPngのインターフェースに適用
RIPngを使用するインターフェースに対して、RIPngを適用します。次に、インターフェースごとにRIPngを有効化する必要があります。
bashRouter(config)# interface gigabitethernet 0/0
Router(config-if)# ipv6 rip RIPng enable
これで、指定したインターフェースでRIPngが有効になります。
3.4 経路情報の確認
RIPngの設定が完了したら、ルーティングテーブルを確認して、ルータが経路情報を交換しているかどうかをチェックします。以下のコマンドを使用して、ルーティングテーブルを表示できます。
bashRouter# show ipv6 route rip
このコマンドは、RIPngによって学習した経路情報を表示します。
4. RIPngの詳細設定
RIPngは基本的な設定だけでなく、いくつかの詳細な設定オプションをサポートしています。例えば、RIPngの更新間隔、ホップ数制限、広告の間隔などを調整することができます。
4.1 更新間隔の設定
RIPngのデフォルトの更新間隔は30秒です。これを変更するには、以下のコマンドを使用します。
bashRouter(config)# ipv6 router rip RIPng update-timer 60
この設定により、RIPngの更新間隔が60秒に変更されます。
4.2 ホップ数制限の設定
RIPngは、ホップ数が15を超えると、その経路を使用しません。ホップ数の制限を変更するには、以下のコマンドを使用します。
bashRouter(config)# ipv6 router rip RIPng maximum-hops 10
この設定により、RIPngは10ホップまでの経路を使用します。
5. RIPngのトラブルシューティング
RIPngの設定に問題がある場合、以下のコマンドでトラブルシューティングを行います。
-
RIPngのステータス確認:
bashRouter# show ipv6 rip -
RIPngの統計情報確認:
bashRouter# show ipv6 rip statistics -
インターフェースごとのRIPng状態確認:
bashRouter# show ipv6 interface brief
これらのコマンドを使用して、RIPngの状態や問題点を把握し、適切に修正します。
6. 結論
RIPngは、IPv6ネットワークにおける動的ルーティングプロトコルとして非常に重要であり、設定も比較的簡単です。基本的な設定手順を理解し、適切に構成することで、IPv6ネットワークのルーティングが効果的に行えます。また、RIPngは小規模から中規模のネットワークに最適ですが、大規模なネットワークには別のルーティングプロトコル(例えばOSPFv3やBGP)を使用することが推奨されます。
