TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)は、インターネット上でデータを送受信するための主要な通信プロトコルです。どちらも、ネットワークの異なるレイヤーで動作し、異なる用途に最適化されていますが、それぞれの特徴と使用場面において大きな違いがあります。本記事では、TCPとUDPの基本的な動作原理から、それぞれの利点や欠点までを包括的に解説します。
1. TCP(Transmission Control Protocol)の概要
TCPは、通信の信頼性を重視したプロトコルです。このプロトコルは、データが正しく、順番通りに相手側に届くことを保証するための機能を備えています。TCPは、インターネット上の多くのアプリケーションで使用されており、例えばウェブブラウジング(HTTP/HTTPS)、電子メール(SMTP)、ファイル転送(FTP)などで広く利用されています。

1.1 TCPの特徴
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コネクション指向: TCPはコネクション指向のプロトコルであり、データの送受信を開始する前に、送信元と受信先の間で接続(ハンドシェイク)を確立する必要があります。このハンドシェイクにより、双方が通信の準備ができていることを確認します。
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データの信頼性: TCPは、データが途中で失われたり、順番が入れ替わったりしないようにするため、確認応答(ACK)を使用します。データが正しく受信されると、受信側は送信側に対して確認応答を返します。万が一データが失われた場合、送信側は再送信を行います。
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順序制御: TCPはデータが送信順に正確に受け取られることを保証します。もし途中でデータが順番通りに届かなかった場合、TCPは自動的に順番を調整して再送信を行います。
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フロー制御と輻輳制御: ネットワークの混雑を避けるため、TCPはフロー制御と輻輳制御を行います。フロー制御により、受信側が処理できる速度に合わせてデータの送信速度を調整します。輻輳制御は、ネットワークが過負荷状態になるのを防ぐために、送信側のデータ送信量を制限します。
1.2 TCPの動作手順
TCPの通信は以下のような手順で行われます:
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コネクションの確立(3ウェイハンドシェイク):
- クライアントがサーバに接続要求を送信(SYN)。
- サーバが接続要求を受け入れ、クライアントに応答(SYN-ACK)。
- クライアントがサーバの応答を確認し、接続が確立。
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データの送受信:
- データは順番通りに送信され、受信確認(ACK)が行われます。
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コネクションの終了:
- 通信が終了した後、クライアントとサーバはコネクションを終了(FIN)します。
1.3 TCPの利点と欠点
- 利点:
- 信頼性が高い:データの損失がなく、正確な順番で届く。
- データの完全性が保証される:途中でデータが失われた場合、再送信が行われる。
- 欠点:
- オーバーヘッドが大きい:コネクションの確立や確認応答、再送信などが必要なため、処理に時間がかかる。
- リアルタイム性が要求されるアプリケーションには不向き(例えば、オンラインゲームやストリーミング)。
2. UDP(User Datagram Protocol)の概要
UDPは、TCPとは異なり、信頼性よりも速度を重視したプロトコルです。UDPは、データを送信する際にコネクションの確立や確認応答を行わず、データが到達したかどうかを確認する手段もありません。このため、UDPは軽量で高速な通信が可能ですが、データの損失や順序の入れ替わりが起こる可能性があります。
2.1 UDPの特徴
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コネクションレス: UDPはコネクションを確立することなくデータを送信します。送信者と受信者は接続を確立せず、データをそのまま送信します。
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低オーバーヘッド: UDPには確認応答(ACK)や再送信、順序制御などの機能がないため、通信のオーバーヘッドが非常に低く、データ転送が高速です。
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信頼性なし: UDPはデータが途中で失われたり、順番が入れ替わったりしても、それに対して何の処理もしません。そのため、アプリケーション側で補完する必要があります。
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フロー制御なし: TCPのようなフロー制御は存在せず、データが送信されると即座に送られるため、ネットワークが過負荷になる可能性があります。
2.2 UDPの動作手順
UDP通信は非常にシンプルで、以下のような手順で行われます:
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データの送信:
- クライアントはサーバにデータを直接送信します。この際、接続の確立は行われません。
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データの受信:
- サーバは受け取ったデータを処理しますが、受信確認やエラーチェックは行いません。
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終了:
- 通信の終了は特にありません。送信者がデータを送信し続ける限り、通信は続きます。
2.3 UDPの利点と欠点
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利点:
- 高速:確認応答がなく、オーバーヘッドが少ないため、高速な通信が可能です。
- シンプル:実装が簡単で、リソース消費が少ない。
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欠点:
- 信頼性が低い:データが失われても再送信されず、順番が崩れることもあります。
- フロー制御やエラーチェックがないため、アプリケーション側でこれらを実装する必要があります。
3. TCPとUDPの比較
特徴 | TCP | UDP |
---|---|---|
接続方式 | コネクション指向(接続確立が必要) | コネクションレス(接続確立不要) |
信頼性 | 高い(データの損失なし、再送信あり) | 低い(データの損失や順序の入れ替わり) |
速度 | 遅い(確認応答や再送信が必要) | 高速(オーバーヘッドが少ない) |
用途 | ファイル転送、ウェブブラウジング、メール | 音声通話、動画ストリーミング、オンラインゲーム |
エラーチェック | あり(確認応答、再送信、順序制御) | なし(エラーチェックなし) |
4. 使用シーン別の選択基準
- TCPが適しているシーン:
- データの正確性が重要な場合(例:ファイル転送、ウェブアクセス)。
- 接続の確立と管理が可能な