Microsoft Word(以下、単に「Word」と表記)は、文書作成において世界中で広く使用されているソフトウェアであり、印刷機能も非常に強力かつ柔軟です。しかし、Wordからの印刷には基本的な操作だけでなく、ページ設定や用紙サイズ、余白、解像度などの細かい設定を正しく理解し、目的に応じて調整することが不可欠です。本稿では、初心者から上級者までを対象に、「Wordからの印刷」に関するあらゆる側面を包括的に解説し、実際の使用場面に応じた実践的な知識を提供します。
Wordから印刷する基本操作
Word文書を印刷するための最も基本的な手順は、以下の通りです:

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文書を開く
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「ファイル」メニューをクリック
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「印刷」を選択
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印刷プレビューと設定を確認
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「印刷」ボタンをクリック
この手順は、Word 2010以降のバージョンに共通するものであり、インターフェースが多少異なる場合でも、基本的な考え方は同じです。
印刷前の準備:ページ設定とレイアウト
印刷結果に最も大きな影響を与えるのは、ページ設定です。これは印刷後のレイアウトに直接関係し、以下のような要素を含みます。
用紙サイズの設定
Wordでは、以下のような一般的な用紙サイズを選択できます:
用紙名 | 寸法(mm) | 用途 |
---|---|---|
A4 | 210 × 297 | 最も一般的な文書印刷 |
A3 | 297 × 420 | ポスターや見開き資料 |
B5 | 182 × 257 | 書籍やパンフレット |
レターサイズ | 216 × 279 | 主に米国で使用 |
「レイアウト」→「サイズ」から簡単に変更できます。
余白の調整
余白の設定も重要です。既定では「普通(上下左右2.54cm)」となっていますが、用途に応じて以下の設定が選べます:
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狭い:上下左右1.27cm(用紙を有効に使いたいとき)
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広い:上部3.18cm、他2.54cm(報告書や提案書)
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とじしろ付き:製本用
プリンターの選択と設定
印刷するには、プリンターが正しく接続されている必要があります。Wordの印刷画面では、上部に「プリンターの選択」が表示されます。以下の点を確認してください:
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プリンターがオンラインになっているか
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ドライバーが最新のものであるか
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プリンターに用紙がセットされているか
また、「プリンターのプロパティ」から、印刷品質(解像度)、両面印刷、カラー設定などの詳細設定が可能です。
印刷範囲の指定
文書全体ではなく、一部のみを印刷したい場合もあります。Wordでは次のような範囲指定が可能です:
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すべてのページ
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現在のページ
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ページ番号指定(例:1,3,5-7)
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選択範囲
選択範囲を印刷するには、まず該当部分をドラッグで選択し、「印刷」画面で「選択した部分のみ印刷」を選びます。
両面印刷とページの向き
両面印刷
プリンターが両面印刷に対応している場合、「両面印刷(自動)」または「手動での両面印刷」が可能です。自動ではプリンターが自動的に裏面も印刷しますが、手動の場合は以下のように進めます:
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表面を印刷
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用紙を裏返して再度セット
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裏面を印刷
ページの向き
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縦(ポートレート):一般的な文書用
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横(ランドスケープ):表やプレゼン資料など幅が広い内容
「レイアウト」→「印刷の向き」から変更できます。
セクションごとの印刷
Wordでは、文書を複数の「セクション」に分けて、それぞれに異なる設定を適用できます。特定のセクションのみを印刷するには、ページ番号ではなく「セクション番号」を使います(例:s2はセクション2)。「p3s2」と入力すれば、セクション2の3ページ目だけを印刷できます。
表と画像を含む文書の印刷調整
文書に表や画像が含まれている場合、以下の点に注意します:
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画像が切れないように余白と配置を調整
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表がページをまたがる場合は「行タイトルの繰り返し」設定
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印刷の色調整(モノクロかカラーか)
印刷プレビューで必ず確認し、必要に応じてページ区切りを挿入することも有効です。
印刷時のトラブルとその対処法
トラブル内容 | 主な原因 | 解決方法 |
---|---|---|
印刷されない | プリンターオフライン、ドライバー不良 | プリンターの再接続・再起動 |
レイアウト崩れ | フォント不足、ページ設定の不一致 | フォント埋め込み、PDF出力 |
文字化け | 言語設定、プリンター未対応フォント | PDFで印刷、互換フォント使用 |
特に外部との文書共有・印刷では、PDFとして保存してから印刷することで、多くのトラブルを回避できます。
PDFとして印刷(仮想印刷)
Wordでは、仮想プリンターとして「Microsoft Print to PDF」を使うことで、実際の印刷をせずにPDFファイルを生成できます。これは印刷用データの最終チェックとしても非常に有効です。
手順は次の通りです:
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印刷画面でプリンターを「Microsoft Print to PDF」に設定
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「印刷」をクリック
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保存先とファイル名を指定
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PDFが生成される
差し込み印刷と大量印刷への応用
差し込み印刷は、顧客リストなどのデータを基に、1枚ずつ異なる内容の文書を一括印刷する機能です。次のような用途に便利です:
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宛名ラベル
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招待状
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請求書
Wordの「差し込み文書」タブからウィザード形式で操作できます。データソース(Excelなど)との連携が前提です。
印刷オプションの比較一覧
設定項目 | 説明 | 推奨用途 |
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通常印刷 | 標準設定での印刷 | 一般文書、下書き |
高品質印刷 | 解像度を上げて印刷 | 提出用資料、写真付き文書 |
両面印刷 | 裏表に印刷 | 冊子や報告書 |
小冊子印刷 | A4用紙を二つ折り | 会報、ミニマニュアル |
ページ集約印刷 | 複数ページを1枚に印刷 | 資料の要約版、環境配慮 |
最後に
Wordからの印刷は一見シンプルに見えますが、実際には印刷設定、ページ構成、プリンターの性能などが複雑に関係しています。印刷前の準備を怠ると、紙やインクの無駄に繋がるだけでなく、レイアウト崩れなどによる品質低下にもつながります。本稿で紹介した手法を活用し、効率的で美しい印刷を実現してください。最終的には「見る人、読む人」にとって最適な文書を提供することが目的であり、そのための正確な印刷こそが、Wordユーザーにとっての技術の証明となります。
参考文献:
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Microsoft公式サポート:Word印刷機能(https://support.microsoft.com/ja-jp/)
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「Word活用テクニック大全」技術評論社
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ITパスポート教科書(印刷関連項目)